映画『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』酒井麻衣監督インタビュー「キャラクターの感情に“潜る”という感覚を大切にしている」

映画『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』が、9月1日より絶賛公開中です。原作は、汐見夏衛による同名小説。丁寧に描かれた登場人物の心情と、表現豊かな風景描写で圧倒的共感と感動を呼び、「10 代女子が選ぶ文芸小説 No1」にも選ばれた、シリーズ累計発行部数55万部を記録する珠玉のラブストーリーです。

W主演に、グローバルボーイズグループ・JO1 メンバーの白岩瑠姫さんと、女優やモデルとして華々しく活動する久間田琳加さん。 監督を務めるのは「明日、私は誰かのカノジョ」(22/MBS)や、2年連続ギャラクシー賞 マイベスト TV 賞グランプリ受賞作「美しい彼」(21・23/MBS)や、大ヒットを記録した『劇場版 美しい彼~eternal~』(23)など、話題作を続々と手がける酒井麻衣さん。

次世代の日本映画界を担う若き才能と、今をときめく最旬のキャストが贈る、純度100%のエモーショナルで色鮮やかなラブストーリー。酒井麻衣監督にお話を伺いました!

――本作楽しく拝見させていただきました。素敵な作品をありがとうございます。原作は小説ですが、どの様に映像化しようと思いましたか?

学校ではマスクを手放せない女の子と、画家を目指している男の子が主人公ということで、2人ともすごく素敵だなと思いました。夢に向かって頑張っている姿と、空気を読んで周りに合わせてしまう姿が、すごく共感出来ると感じましたし、今の社会にすごく合っているストーリーだなと思ったので、そこを真摯に向き合って描きたいと思いました。

――おっしゃるとおり周囲の空気を読みすぎてしまう茜さんの様な方って、今の時代たくさんいらっしゃると思います。

私も含めてなのですが、多いだろうなと思います。私はまだ自分の意見を言える方なのですが、後から「あんなこと言って大丈夫だったかな?」とか考えたり…。“気にしい”なので。自分も感じている事なので、他の方も感じていることだろうなと。

――色々な感情に寄り添う、優しい作品になっていますよね。

ありがとうございます。寄り添った作品にしたいと思ったので、それぞれのキャラクターの感情に“潜る”という感覚は大切にしています。

――脚本を、「明日、私は誰かのカノジョ」でもご一緒しているイ・ナウォンさんと一緒に手がけられていますが、どの様に進めていきましたか?

まず、ナウォンさんに構成・プロット・脚本をまず書いていただいて、その後、打ち合わせなどをしながら一緒に作っていきました。交換日記の様な形で、次は私が書いて、またナウォンさんに戻して、と。これが出来るのは、ナウォンさんと相性が良いというか、ゴールが同じ場所にあるからだなと思います。お互いの脚本に加点していく、そんなイメージで進めていきました。

――その様な作業をしていう中で、「ナウォンさんの書く、ここ素敵だな」と感じた部分などはありますか?

遊園地のシーンは、原作に無い部分ですが本当に素敵だなと思いました。構成の段階からナウォンさんのアイデアとしていただいていたのですが、ワクワクするシーンですよね。2人の距離が一気に近づくというか、秘密の共有が出来ていく様子が、廃墟の遊園地で「時が止まった様に見える」というのはすごく良いアイデアだなと感動しました。

――映像が本当に美しくて、ストーリーはもちろんヴィジュアル面でも見どころがたくさんありますが、監督が意識したこと、工夫したことを教えてください。

制服にこだわりました。学園モノだと大半のシーンが制服を着ている状態になるので、本当に大切です。いつもお願いしているスタイリストの小泉さんと、どういう制服にしようという所から考えていきました。私個人的な願いとして、もっと多様化した制服にしたいという想いがありました。学校指定だと分かるグレーのワイシャツと、ネクタイにしてもリボンにしても良いという黒いタイの2つが身につけられていれば、あとはスカートでもスラックスでも、セーターは何を着ていてもOKという形にしました。(冬はブレザーあり)統一感もありつつ、クラスメイトたちの個性も出るかなと思って考えています。

――キャラクターの好きなことや好きなものが制服の着こなしに滲み出てくるというか。

クラスメイト全員分のキャラクターシートというか、設定を作ってあるので、それを俳優さんにお渡しして役作りをしていただきますし、衣裳合わせの時に「この子はスカートこれくらいの長さかな」とか「靴下は短いんじゃないか」と話し合っていました。クラスのシーンだと、「◯◯と◆◆が仲が良い」「ここは同じ部活」ということも全部決めているので、俳優のみんなが考えて動いてくれるんですね。例えば、軽音部でベースをやっているキャラクターを演じてくれた俳優さん(桃乃さん)は、「練習しすぎで手を痛めている」という背景を持って自分で手にテーピングをしてきてくれたり。脚本には書かれていないし、茜と青磁とは演技としては直接的に関わりは無いのですが、2人が生きている世界には当たり前にある光景なので、クラスメイトの子たちもしっかりとやってくれています。

――そういった設定を考えることは楽しかったですか?

楽しかったです! お菓子類もいくつか用意しておいて。机に置いておくお菓子も「この子はこのお菓子」とかご自身が考えながらチョイスしていきました。「間食をしないだろう」なども。


――細やかな設定が素晴らしいですね…!今お話を伺って、はやくもう一度見直したいなと思いました。教室内の光景をじっくり見たいです。白岩さんはアーティストとしても、久間田さんはモデルさんとしても活動していますが、俳優以外の活動をしている方だからこその雰囲気といったものは感じましたか?

作品でご一緒する方とは、普段どの様な活動をしているかということはあまり気にせずに、青磁役の白岩さん、茜役の久間田さんとして接する様にしているので、私はあまり意識はしていません。監督してのアプローチとして、この現場では「俳優としてのあなたと向き合っています」というスタンスをとっています。

――茜と青磁は学生時代に大切な出会いがあったわけですが、監督の学生時代の大切な出会いや、きっかけについてお聞きしたいです。

文化祭はすごく大きかったです。生徒会副会長として文化祭にすごく一生懸命に取り組んでいました。文化祭での仕事をきっかけに監督という職業に興味を持ち始めたというのもあるので。みんなで何かをやった時に、自分1人では出来ないこと、1人では想像出来なかった完成形を見られた経験が大きいです。友達というよりも仕事の仲間として一つの物語や作品を作りたいという気持ちが、その時に生まれました。

あと、子供の頃から絵を描くことが好きで、藝大を目指すために画塾に通っていたので、茜ちゃんの文化祭を頑張る気持ちと、青磁くんの進路について考えている部分がすごくよく分かって。絵を描いている工程のロマンというか、完成形が美しいことはもちろん、絵の具を混ぜ合わせている時のロマン、筆使いに魅力を感じているので、そういった部分も匂い立つ様な映像を撮りたいと思っていました。

――なるほど、絵を描くシーンが本当に素敵ですけれど、監督ご自身の経験も活きていらっしゃるのですね。

画塾に通っていた頃からは時間が経ってしまって、私は今絵を描いていませんが、絵画監修の朝霧レオさんに相談しながら、「今はどの様な画材が使われているのか」とか、手法にこだわらなくて良いので、「青磁が何を描きたいのか」ということを大事にしていました。

――文化祭がきっかけで監督というお仕事への興味が芽生えて、今こうして活躍されているのは、当時からのお友達もすごく誇りですね。

作品を「観たよ」って言ってもらえることはすごく嬉しいですね。達成感があるというよりは、どんどん欲していきますね。もっとやりたい、という渇望というか。出来上がった作品はどれも最高に愛しているのですが、もっと作品を作りたい、またこの人とご一緒したいとか、満足すること、潤うことは無いですね。この仕事をやっていないといられないという感じだなと。

――私もこの仕事は昔からやりたかったことなのですが、もっとやりたいと思うこと、すごく共感出来ます。ちなみに、監督は長野県千曲市ご出身ですが、私は長野県上田市出身なので、今日お話が聞けてすごく光栄でした。

そうなんですね!私は上田の病院で生まれたので、好きな街です。今も夕ご飯を食べるだけの時間であっても、ちょくちょく長野には帰省していて、パワーをもらっています。

――この取材を地元のみんなに自慢します(笑)。そしてたくさんの長野の方にも映画を観ていただきたいです。今日は本当に素敵なお話をありがとうございました!

映画『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』
絶賛公開中

出演:白岩瑠姫(JO1) 久間田琳加
   箭内夢菜 吉田ウーロン太 今井隆文 / 上杉柊平 鶴田真由
監督:酒井麻衣 
原作:汐見夏衛「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」(スターツ出版 刊)
脚本:イ・ナウォン 酒井麻衣
音楽:横山克 濱田菜月 主題歌:JO1「Gradation」(LAPONE Entertainment)
製作:『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』製作委員会 制作プロダクション:C&Iエンタテインメント、アスミック・エース
配給:アスミック・エース
(C)2023『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』製作委員会

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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