映画『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』 読み手の想像に委ねられた“洋上のおぞましい出来事”をついに映像化

ブラム・ストーカーによる名作小説「吸血鬼ドラキュラ」から、最も恐ろしいと評される“第七章”を初めて映画化した『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』が9月8日より公開される。映画の公開を前に、“ドラキュラ”と第七章について少し予習をしておこう。

ドラキュラを世に生み出したブラム・ストーカーによる名作小説「吸血鬼ドラキュラ」では、ドラキュラ伯爵はルーマニアのトランシルヴァニアに棲む吸血鬼として登場する。この小説は、ドラキュラという存在を個人の日記や手紙、日誌、歴史的遺物などの断片を通してノンフィクションタッチの伝説として綴ったものだ。ドラキュラというのはあくまでその吸血鬼である人物の名前だが、ストーカーの小説とのちの映画化作品が大ヒットしたことで、ドラキュラ伯爵の特徴や能力がその後の世間の吸血鬼のイメージに大きな影響を与えていった。

ストーカー原作によるドラキュラ映画は無声映画時代から現在に至るまで数多く制作されている。ベラ・ルゴシ主演の『魔人ドラキュラ』(31)やドラキュラ初のカラー映画『吸血鬼ドラキュラ』(58)などでは、顔は白く髪はオールバック、黒いマントを身に着けたドラキュラ伯爵が登場。原作で描かれた容姿とは少し異なっているが、これらの映画のヒットによって外見的なイメージが広まっていった。現代では、『ゴッドファーザー』のフランシス・フォード・コッポラ監督による官能的で哀しいロマンスを描いた『ドラキュラ』(92)、人間の感情を持ち、英雄として戦うドラキュラを壮大なスケールで描いたVFXアクション満載の『ドラキュラ ZERO』(14)など、幅広いジャンルに変換されて描き続けられている。

最新作『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』で初めて映画化される第七章は、全二十七章のうちのわずか一章であるが“最も怖い”と評されている物語だ。ルーマニアのカルパチア地方から英国ロンドンまで、謎めいた50個の無記名の木箱を運ぶためチャーターされたデメテル号。実は、トランシルヴァニアで村人たちに恐れられ、孤立して血に飢えたドラキュラ伯爵が、活気溢れるロンドンへの移住を画策し、デメテル号に身を隠して渡航しようとしているのだった。そんなことなど知る由もないデメテル号の船員たちは、洋上で毎夜不可解な出来事に遭遇し、おぞましい結果を迎える。

第七章の冒頭である「デイリー・グラフ」紙の記事では、英国に漂着して発見されたデメテル号は、すでに船長は死亡、乗組員全員消息不明となっており、船内で起こった凄惨な出来事は、船長が書き残した簡潔な日誌で淡々と綴られている。船内で目撃された“いないはずの誰か”。様子がおかしくなっていく船員たち。行く場所などあるはずもない洋上で、ひとりひとり姿を消していく――。個人の目線で捉えた断片的な情報で、僅かなページでしか語られないことから、航海中のデメテル号で何が起きていたのかは読み手の想像に委ねられ、それによってより一層の恐ろしさを掻き立てるものとなっていた。

そんな第七章をいよいよ映画化するのだから生半可なものは作れまい。本作で登場するドラキュラの姿は、これまでの数多ある作品に登場してきた上品で魅惑的なキャラクターとは全く異なり、骨骨しい身体、青白い肌をむき出しにし、人間というよりはモンスターのような風貌で描かれる。演じるのは、『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』『REC/レック』などで数々のクリーチャーを演じてきた名優ハビエル・ボテット。監督を務めるのは『ジェーン・ドウの解剖』『スケアリーストーリーズ 怖い本』を手掛けた、ホラー映画ファンに信頼の厚いアンドレ・ウーヴレダルだ。そして、『アメリカン・スナイパー』などクリント・イーストウッド作品で数々の撮影監督を務めてきたトム・スターンが“逃げ場のない洋上の恐怖”の映像化に力を添える。精鋭たちが集結し、これまで行間を想像するしかなかった第七章のおぞましい全貌を、最新技術を使った迫力溢れる映像で描くのが『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』である。これは期待するっきゃない!

『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』
9月8日(金)全国公開

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レイナス

おもにホラー通信(horror2.jp)で洋画ホラーの記事ばかり書いています。好きな食べ物はラーメンと角煮、好きな怪人はガマボイラーです。

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