フェミニズムやクィア理論を手がかりに、自身の身体を用いた映像やパフォーマンスを制作する。乾真裕子個展「玉繭」


乾真裕子《葛の葉の歌》2023年


EUKARYOTEでは2023年9月1日(金)から24日(日)までの会期にて、乾真裕子による個展「玉繭」を開催。乾にとって初個展となる本展は、映像、写真、オブジェの展示とともに、会期中でのトークイベント、パフォーマンスによって、変わり続ける身体が描き出す自己変様の可能性を探り、世界の再構築を試みるものに。

乾はこれまで自分の身体を通したパフォーマンスによって、日常に潜んだジェンダー規範への違和感や、セクシュアルアイデンティティに関する問いを提示してきた。民話や昔話をモチーフとした作品では、歌や演技、ジェンダーに関する対話、インタビューを交差させることで過去の物語に変奏をもたらし、現代の状況を捉え直すきっかけを生み出す。「竹取物語」のかぐや姫や「葛の葉伝説」の葛の葉に扮して自作の歌を歌いながら、自らが保有するアイデンティティに向き合いつつ、他者との新たな関わり方を切り拓く。他にもコスチュームやクィア的存在の創造を伴う儀式的なパフォーマンスによって、規範が押し付けてくるカテゴリー化の瓦解を試みている。

本展のタイトルである「玉繭」は、2匹以上のカイコが共同して1個の繭を作ったものを意味する。哲学者のエマヌエーレ・コッチャは、繭は自己を変様させる空間であると同時に世界をも変様(メタモルフォーゼ)させる空間であると言う。乾の芸術実践は、常に自らの姿を変えたり属性を撹乱したりしながら自己と世界の再構築を試みる点で、繭の運動にとても似ている。本展の各作品は、異なる内容を映しながらも、「玉繭」のように乾の変様する身体が表す多彩な生き様の共在を仄めかす。鑑賞者はその柔らかくて繊細な運動から聞こえてくる色んな声を通し、過去と現在、自己と他者が相互浸透する瞬間に出会うだろう。

会期中には9月9日(土)19:30-21:00に映像人類学研究者の川瀬慈、9月22日(金)19:30-21:00に作家の姜信子と説経祭文語りの渡部八太夫を招いたトークイベント、乾が展示会場内で行うパフォーマンス(日時未定)を実施。



乾真裕子《Queertures in Menet》2023年



乾真裕子《月へは帰らない》2020年



乾真裕子《自問自答》2020年


乾 真裕子|Mayuko Inui
1997年大阪府生まれ。東京藝術大学大学院美術学部先端芸術表現専攻修了。
フェミニズムやクィア理論を手がかりに、自身の身体を用いた映像およびパフォーマンスを制作。
近年は、民話や昔話におけるジェンダー表象と、語り継がれながら変化していく歌や語りに関心を持っている。
主な展覧会に「Stilllive Village:生のアリーナ」(豊岡演劇祭2022)、「YOUNG ARTIST EXHIBITION 2021」(EUKARYOTE) 、「Stilllive 2020」(ゲーテ・インスティトゥート東京) 、「第6回平成藝術賞受賞者展」(平成記念美術館ギャラリー) 、「彼女たちは歌う」(東京藝術大学美術館陳列館) 、「Stilllive 2019」(ゲーテ・インスティトゥート東京) など。CAF2021金澤韻審査員賞、平成藝術賞ほか受賞。


乾 真裕子(Mayuko Inui)「玉繭」

会期 : 2023年9月1日 (金) – 9月24日 (日)
https://eukaryote.jp/en/exhibition/mayuko_inui_solo_exhibition/
キュレーション:権祥海
会場 : EUKARYOTE 1 – 3F (東京都渋谷区神宮前3-41-3) [東京メトロ銀座線 外苑前駅 出口徒歩10分]
時間 : 12:00 – 19:00
休廊 : 月曜日
デザイン:六月
助成:クマ財団

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