独自の着眼点で構成されたパラレルワールドを提示。磯村暖個展「カ」
EUKARYOTEでは2023年7月14日(金)から8月6日(日)までの会期にて、磯村暖による個展「カ」を開催。
磯村暖は、2019年ACCフェローシップでのNYにおける滞在制作、2021年にアジアアートビエンナーレ(台北)への出展をはじめ、2023年はTEDxUTokyo 2023のイベントに登壇するなど、今やその活躍の場は美術のみならず、社会的なアクションの領域へと広げている。
国内外の各地域へ赴き、生きる時代や社会によって変わってしまう人々の境遇、その文化のあり方に関する比較やリサーチを通し、絵画や彫刻、映像インスタレーション、時にパフォーマンスといった様々な表現活動を行ってきた。
クィアカルチャーや宗教表現、人間だけでなく地球上の生物多様性の変遷など、様々な参照を感じさせる磯村の作品は、あらゆる社会に潜みうる画一性に問いを投げかけている。
磯村暖個展「カ」出展予定作品
アーティストによるステイトメントは以下。
この世の理だと思われているものの隣に少し異なる事実を添えて、支えあったり崩し合うような制作プロセスを経て、この展覧会を作りました。
この展覧会のタイトルは「カ」です。
漢字の「力」ではなくカタカナの「カ」です。
読み間違えられる想定で名付けました。
「力」という漢字はforce, power, strengthなどを意味します。
社会的/自然的世界の中では、絶えず万物が相互に力をかけあっています。
地球上に線対象で左右のある生き物が多いのは、この星の重力に適した形だからだそうです。
人、物などの間に張力や、弾性力のようなものが働いていると考えることは、個人的な思考や欲求から一旦離れて、この社会を捉える助けをしてくれます。
「カ」というカタカナは、[kä]という発音の音節の一つです。
舌の奥と喉の奥をくっつけて出すこの破裂音からは、個人的にその他の発音と比べて鋭い印象を受けます。
軽くて固い物同士をぶつけた時のオノマトペを、日本語で「カ」と表すことがあります。
漢字の「力」とカタカナの「カ」は、形も由来も同一ですが、上記の通り、別の使い方をします。
漢字の「力」の持つ意味を考えつつ、「力」と読み間違え可能なカタカナの「カ」の、その軽やかでかつ、鋭利な印象の音にのせて展示を作っていけたらと思っています。
磯村暖
本展に向けた制作は、磯村がこれまで社会の共同体に働きかける活動をしてきた中で感じたこと、人間がいなくても成り立つ自然界の法則・現象がある一方で、私たちの周りでは今、社会的言語で考え、語られた言説で溢れていることに対する違和感からスタートしている。
今回はペインティングや彫刻といった形式を超えた作品群、人型の装置と人とは異なる生物適応の形態を持つウニに似た五放射相称形の立体のほか、生物において原始的な感覚とされる嗅覚に着目した作品、可愛らしいミトンに至るまで、様々なオブジェクトが組み合わされ、互いにインターテクスト性を帯びた、3フロア全体によるインスタレーションが生み出された。
そこでは、磯村の言葉を借りるならば、「重力によって物が落ちる、摩擦が起きてそこに神経があると痛いー」などといった、社会学的視点ではない普遍的な事実を通して私たちが見たり感じたりする試みがなされており、社会の営みにおける人間の視点から逆算すると想像しえない世界のあり方、磯村独自の着眼点で構成された、ある種のパラレルワールドが提示されている。
私たち人間社会の側面にある世界、長い時間軸の中で変化や進化が継続しながら、広大な秩序とバランスを持つその厳かさとともに、オルタナティブの受容が多様性や持続可能性への契機になること、そのオルタナティブとは当たり前のものに対して余地を作ることである磯村の意思表示を感じ取れる。
磯村暖個展「カ」出展予定作品
磯村暖個展「カ」出展予定作品
磯村暖個展「カ」出展予定作品
磯村暖個展「カ」
会期 : 2023年7月14日 (金) – 8月6日 (日)
参加作家:磯村 暖(Dan Isomura)
会場 : EUKARYOTE 1 – 3F (東京都渋谷区神宮前3-41-3) [東京メトロ銀座線 外苑前駅 出口徒歩10分]
時間 : 12:00 – 19:00
休廊 : 月曜日
展覧会情報ページ
https://eukaryote.jp/exhibition/dan_isomura_solo_ex_2023/
アーティストプロフィール
磯村 暖|Dan Isomura
1992 東京都生まれ
2016 東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業
2017 ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校第2期卒業
近年の主な個展
2020「OFF THE SIDELINE」EUKARYOTE, 東京
「んがんたんぱ」銀座 蔦屋書店GINZA ATRIUM, 東京
2019「わたしたちの防犯グッズ」銀座 蔦屋書店GINZAアートウォール, 東京
近年の主なグループ展
2022「A5」Anfang Anfang Süd bis Ende Mai, ライプツィヒ
「Ai mi Tagai London/Tokyo」White Conduit Projects, ロンドン
2021「Phantasmapolis – 2021 Asian Art Biennial」国立台湾美術館, 台湾
「紀南アートウィーク」川久ミュージアム, 和歌山
2020「都市は自然」セゾン現代美術館, 長野
2019「The Middleman, the Backpacker, the Alien Species, and the Time Traveler」耿畫廊, 台北
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