山梨・三ツ峠山で低山ハイキング。眺望&観光を楽しむ登山ルート
こんにちは。山岳ライター&登山ガイドの西野淑子です。仕事が登山で趣味も登山、関東周辺を中心に、1年を通じて山を楽しんでいます。
鮮やかな木々の緑を花木が彩り、低山ハイキングが楽しい季節です。関東近郊で低山ハイキングの案内をしている私も、この時期はどこに行こうか、毎年ワクワクしながら過ごしています。(2023年4月取材)
今回お勧めする山は山梨県、河口湖の北東側にそびえる三ツ峠山。山頂からは富士山の素晴らしい展望を楽しめます。河口湖の湖畔に泊まり、富士山と河口湖の景観を満喫する、列車で行く1泊2日の山旅をご案内いたします。
新宿駅
特急「あずさ」+富士急行線で河口湖へ
楽しい山旅の始まりはJR新宿駅から。特急「あずさ」に乗り、JR大月駅へ向かいます。
E353系の車両は白と紫のスタイリッシュな外観。JR八王子駅を過ぎると、低い山々が連なっているのが車窓から眺められ、旅気分が高まります。新宿駅から1時間弱で大月駅へ。
ちなみに、旅行のスタイルに合わせて「列車と宿」が組み合わせられる「JR東日本びゅうダイナミックレールパック」であれば、あずさと宿のセットがお得で便利に予約できます。
大月駅で、「富士山に一番近い鉄道」富士急行線に乗り換えます。特急もありますが、今回は各駅停車で、ゆっくり約1時間かけて河口湖駅に向かいます。
禾生(かせい)駅を過ぎたあたりで、山の間から富士山の頭がちらちら見え始め、徐々に富士山の姿が眺められるようになります。
河口湖駅から三ツ峠登山口へ
富士五湖周辺観光の起点・河口湖駅
富士急行線の終点・河口湖駅は、河口湖をはじめとする富士五湖の観光の起点となる駅です。
駅前の広場には、富士急行の前身である富士山麓電気鉄道が開業時に新造した車両「モ1号」が展示されていました。
河口湖駅から三ツ峠登山口へは1日1便、天下茶屋行きのハイキングバスが運行しています。5番乗り場から乗車し、約25分で「三ツ峠登山口」バス停に到着。
三ツ峠山で低山ハイキング
富士山の絶景が自慢、開運の山・三ツ峠山
「三ツ峠山」は開運山、御巣鷹(おすたか)山、木無(けなし)山の3つのピーク(山頂)の総称で、最高峰が標高1,785mの開運山。古くから修験の山として知られ、富士急行線三ツ峠駅から登る表登山道には、修験の歴史を物語る史跡が点在します。
今回は、登山口から最短で山頂に立てる北側からの登山道を登り、南に伸びる府戸尾根を下って天上山に向かいます。歩行時間は5時間程度。
本格的な山道を歩く登山ルートになるので、履き慣れたトレッキングシューズ、リュックサック、汗をかいても乾きやすいウエアなど、登山に適した服装・装備が必要です。天気の急変に備えて雨具も必ずお持ちください。
三ツ峠登山口バス停から15分ほど舗装道路を登り、登山口に到着。ここから本格的な山道が始まります。
登山口から三ツ峠山の山頂へは歩行時間2時間ほどの道のりです。広くて歩きやすい道ですが、傾斜はかなり急。周りの景色を眺めながら、おしゃべりをしても息が切れないくらいのゆっくりペースで登っていきます。50分ほど歩いたところでベンチがあったので休憩し、おやつや水分を補給。とくに初夏は汗をかきやすいので水分補給が肝心です。
登山口をスタートして1時間20分ほどで、山小屋「四季楽園」に到着。だいぶ頑張って登ってきましたよ……。
四季楽園を過ぎ、富士見荘跡の建物の前まで来たところで、富士山の姿が! 思った以上に大きな山姿に元気づけられます! 取材の日は高曇りで、青空には出合えませんでしたが、富士山も、遠くの山々も見渡すことができました。
ここから山頂まではひたすら階段の登り。一歩ずつ、ゆっくり、足を運び続けます。頑張れ、もう一息!
三ツ峠山の最高峰、開運山の山頂に到着!!!
目の前に美しい富士山が大きく眺められ、その場にいるだけでご利益がありそう。開運の山と名付けられている理由もよく分かります。西側に目をやれば、南アルプスの山々が連なっているのが眺められ、その右手に島のようにそびえている山の塊は八ケ岳。いやあ、頑張って登ってきて本当によかった……。
三ツ峠山(開運山)山頂から天上山へ
緑の麗しい樹林、ときどき眺望の尾根歩き
三ツ峠山(開運山)の山頂で心行くまで絶景を堪能したら、いったん来た道を戻って四季楽園まで下り、「三ツ峠山荘」の前を通って木無山へ向かいます。
この区間もところどころで富士山がきれいに眺められていい気分。……が、徐々に富士山が雲に覆われてきてしまいました。ああ、ちょっと待って〜!
木無山からは天上山方面に下っていきます。全体的になだらかで歩きやすい尾根道、心地よい広葉樹の森が続きます。ところどころで木々の間から河口湖が眺められるのもうれしい限り。取材時は芽吹きの時期で、フジザクラやミツバツツジがあちこちで咲いていました。
送電線のあるところでひと休み。少し樹林が切れ、登山道の右側に河口湖、左側に富士山がきれいに眺められました。さらに進んで新倉山との分岐も、富士山のビューポイント。小さな広場で外国人ハイカーも休憩をしていてほっこり。
樹林の尾根道もいよいよラストスパート。最後の丸太の階段の登りに心が折れそうになりますが、頑張って登り切ると天上山の山頂、小御嶽神社の小さな祠に迎えられました。
天上山から河口湖へ
天上山で富士山と河口湖の眺めを満喫
天上山の山頂から「〜河口湖〜富士山パノラマロープウェイ」の富士見台駅へは10分ほどの道のり。富士見台駅周辺は観光客がたくさんいて、山の中の静けさからのギャップに驚きます。展望台や絶景ブランコ(有料)、富士山と向かい合うように設置された天上の鐘などもあり、ちょっとしたテーマパークのようです。
富士山と河口湖の展望を満喫し、下山はさくっとロープウェイに乗って、車窓からの景色を楽しみながら河口湖の湖畔に向かいました。
湖畔駅に到着して、今日の登山は終了。おつかれさまでした。今宵は河口湖湖畔の宿で、山歩きの疲れをゆっくり癒やします。
河口湖湖畔
湖面に映る富士山が美しい朝の湖畔散策
朝、天気がよかったので、チェックアウト前に河口湖の湖畔を散策。遊歩道が整備されているところが多く、湖と周りの山々を眺めながらのんびりと歩くことができます。
空の色を映したような青色の湖面に、富士山や湖岸の建物や周りの山が映り込んでいるのが見えました。
旅の駅 kawaguchiko base
山梨のいいものが豊富に揃う旅の駅へ
宿をチェックアウト後、気になっていた施設に立ち寄ってみることにしました。2022年6月にオープンした「旅の駅 kawaguchiko base」は、地産・特産の商品を扱うマルシェと、地元食材が味わえるレストランなどからなる、富士五湖周辺や山梨の魅力を存分に味わえる商業施設です。
河口湖駅から河口湖周遊バス(レッドライン)で約20分、「音楽と森美術館/ほとりのホテルBan」バス停から徒歩10分ほど。
まずは「あさま市場」へ。入口に旬の果物や野菜が並び、奥には河口湖や富士五湖周辺、山梨県の特産品がずらりと勢揃い。地元産の食材や山梨県の人々が愛用する調味料、お菓子、地酒やワイン。商品のラインナップにも地元愛を感じます。
あさま市場で扱うこだわりの商品は約2,000種類。逸品揃いで、何をお土産に買おうか悩んでしまいますが、そんなときはお店の方に聞くに限ります。
「どの商品もおすすめですが……、ここでしか買うことができない『MEGU』シリーズはいかがでしょう」
「めぐり、めぶく、しあわせ」をコンセプトに、素材や製法にこだわった地元のよいものを世に送り出す、旅の駅のオリジナル商品です。
お土産に人気なのは、とうもろこしの風味とやさしい甘みの「もろこしきんつば」、山梨県の卵を長崎のお店に送ってつくってもらっているオリジナルの「カステラ」とのこと。旅の駅オリジナルブレンドの「旅するコーヒー」も、豆の風味が豊かな逸品だそうです。
店内を歩き回り、お土産選びに集中していたらお腹がすきました。地元食材推しのレストラン「テラスキッチン」でランチをいただきます。広々とした店内はテーブル席と外の見えるカウンター席があり、屋外にはテラス席もあります。
甲州牛のローストビーフがたっぷりのったラーメンやローストビーフ丼、信玄鶏のドリア、甲州富士桜ポークのソースカツ丼など、地元産の肉を使った料理の人気が高いそうですが、今回は2023年4月からの新メニュー「富士の介サーモンのひつまぶし風」をオーダーしました。
鮮やかなオレンジ色のサーモンは、風味とうまみが強く、ほどよくのった脂が上品な味わい。半分ほど食べたところで、出汁をかけてお茶漬け風にしていただきます。出汁のまろやかな味わいとサーモンの相性がよく、1食で2度おいしい……という感じでしょうか。おいしくいただきました。
河口湖駅
乗るだけでもワクワク、富士急行の車両
旅の駅kawaguchiko baseでショッピングとグルメを満喫したあとは、10分ほど歩き、「河口湖美術館」バス停から再び河口湖周遊バスに乗って約20分で河口湖駅へ。富士急行と特急「かいじ」を乗り継いで新宿駅を目指します。
富士急行線には、さまざまなラッピング車両があり、車内のしつらえもそれぞれに楽しめます。今回はどの車両に乗れるのかな? と考えながら列車を待つのも、富士急行線の魅力。旅の楽しみのひとつです。
自然を満喫するハイキングは楽しいですが、山麓を観光したり、地元食材の料理を味わったり、その土地のよいものに触れることで、山の楽しさはさらに膨らみ、思い出深いものになります。列車で気軽に行ける距離だからこそ、ゆったりと山のすべてが楽しめる「1泊2日の山旅」、おすすめです。
新宿駅
掲載情報は2023年6月20日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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