歴史と自然に癒やされる【時音の宿 湯主一條】へ。宮城・鎌先温泉
古いまちなみとホテル、建物が好きな偏愛はな子です。
慌ただしく過ぎる毎日。仕事があるから遠くへの旅行は難しいけれど、静かな場所でゆっくり温泉につかりたい……、そう思う方も多いのではないでしょうか? 今回は、そんな願いを叶えるべく、宮城県白石市にある温泉宿「時音の宿 湯主一條」へ。歴史と温泉に癒やされる列車旅に出かけてきました。
JR東京駅
東京駅から白石蔵王駅までは約2時間
せっかくの休日なので、いつもよりゆっくり起床。旅のお供にお気に入りの本を選んで、お昼頃にいざ、JR東京駅へ。東京駅から東北新幹線「やまびこ」に乗って、JR白石蔵王駅へ向かいます。車窓からの景色を眺めたり、本を読んだり、到着まではあっという間。
約2時間で白石蔵王駅に到着。駅に降り立った瞬間、深呼吸。初めて訪れる場所はいつだって新鮮で、子どものようにワクワクします。
時音の宿 湯主一條
文化財の宿で温泉と美食に癒やされる
宿へは、毎日運行している宿の無料送迎車(事前予約制)で。車内に流れる心地よいBGMに耳を傾けながら、車に揺られること約20分。
里人が鎌の先で岩の隅を打ったところ温泉が湧き出たことから、その名がついたとされる鎌先温泉。そのなかでも、600年以上の歴史をもち、20代続く老舗旅館が、本日泊まる宿「時音の宿 湯主一條」です。江戸時代には、伊達政宗や片倉小十郎も入湯したと伝えられています。
趣ある温泉街の小道を抜けると目に飛び込んでくるのは、大正時代から昭和初期にかけて建てられた宿の本館。まるで別世界に迷い込んだよう……。
チェックインは別館で。ウェルカムドリンクとスタッフの心地よいおもてなしに肩の力が抜け、すっかりリラックスモード。
館内には、四季折々の花やこだわりの調度品が随所に。
今回のお部屋は、本館を正面に望む和室のお部屋。お茶請けに用意されている、宿泊客に人気だという宿オリジナル「オーガニック一條プリン」と、南部鉄器の急須で淹れるお茶をいただきます。
国登録有形文化財指定の木造本館を眺めながらひとやすみ。普段より穏やかな時間が流れます。
少し落ち着いたら温泉へ。泉質が異なる2つの源泉のお風呂に24時間いつでも入れるので、時間を気にせず、温泉をぞんぶんに楽しめるのがうれしい。
まずは、薬のような効き目があるといわれる「薬湯」に。こぢんまりとしたタイル貼りの空間がなんとも愛らしい……。柔らかな肌触りのお湯につかり、目を閉じてしばし湯の音に耳を澄まします。存分に温泉を味わうひととき。
時音の宿 湯主一條
名建築でいただく、見た目にも美しい和食に舌鼓
温泉を楽しんだら、あっという間に夕食の時間。お食事は、別館から渡り廊下(「時の橋」という名が付いた)を歩き、木造本館の個室料亭「匠庵」でいただきます。ガラスの美しい歪みから覗く、里山の美しい景色。歴史を積み重ねた赤松の床の艶。この素敵な空間で食事をいただけることに胸が高鳴ります。
一歩足を踏み入れるとタイムスリップしたような空間にうっとり。木材はすべて一條家が所有する山から切り出した100年杉を贅沢に使用しているそう。釘を一本も使わずに建てられた宮大工の高い技術、そこかしこに光る意匠。長年湯治客を受け入れてきた歴史と当時の豊かさが、随所にしのばれます。
かつては、湯治客が使用していた客室を個室の食事処に。ひとりでも周囲を気にせずゆっくり楽しめます。
当時のまま残る建具や技工を凝らした細部の意匠、調度品が。湯治場の名残を感じる贅沢な空間で、お料理をいただきます。
文化財でもある本館でいただく夕食は、「ミシュランガイド宮城」で3つ星プラスを獲得した料理の数々。自家製の食前酒から始まり、食材の旨みやおいしさを引き出したやさしい味わいです。
訪れた4月は、初鰹やたけのこ、タラの芽など地元の春の恵みを存分に盛り込んだコースでした。メニューは月替わりなので、早くも別の季節に訪れたい願望がふつふつと湧き上がります。
焼き物や鍋物は、肉や魚など席についた時に選択できるので、その時の気分で選べるのもうれしい。口の中でとろける仙台黒毛和牛焼きは、柚子胡椒おろしとの相性もバツグン。
食後は、お部屋に戻る道すがら本館を散策。障子越しに暖かな明かりが浮かび、館内全体が幻想的な雰囲気に。お部屋に着くと、ふかふかのお布団がお出迎え。吸い込まれるように入り込みます。目を閉じると深い眠りに……。
時音の宿 湯主一條
郷土料理のあとは森の散歩道へ
翌朝は、小鳥のさえずりで自然に目を覚まし、温かいお茶を一杯。「そうそう、こういう温泉旅がしたかった!」、まさに理想の休日を実感します。
朝食前に、お目当ての露天風呂付き大浴場「洞窟の湯」へ。大浴場前にある洞窟の源泉が名前の由来だそう。長湯しても湯疲れすることなく、ゆっくりつかれる泉質のようなので、長めに楽しみます。
透き通った朝の光と自然の中、心ゆくまで温泉に浸かる至福の朝。こんな贅沢をしていいのでしょうか……。
温泉でリフレッシュしたら、お待ちかねの朝食。夕食同様、本館の個室でゆったりといただきます。前日の夕食時に、和食と洋食から選べるのもうれしいポイント。旅館の朝食といえば! ということで、和食を選択してみました。料理長手づくりのお豆腐や近所の農家さんが育てた野菜のサラダ、名物の白石温麺(しろいしうーめん)も!
白石温麺とは、約400年前に誕生したといわれる白石市の郷土食。手延べ麺は、油を一切使わず小麦粉と塩水でこねてつくるので、体にやさしい味わいが特徴です。新鮮な食材や地域の名物を堪能することができ、朝から大満足!
朝食後は、お部屋にあるコーヒーメーカーで淹れたコーヒーを一杯。大正・昭和建築当時の趣を感じる本館をぼんやり眺めて、ひとり気ままに読書をして過ごします。外側がすべて木製ガラス建具の本館は、景色に溶け込むような軽やかさも感じます。
ゆったりしてから、敷地内にある「森の散歩道」へ。思わず、深呼吸。都会では感じられない新鮮な空気を吸い込みます。昔は茶畑があったそうで、製茶をしていた名残の場所が残っていました。
歩くこと5分少々で御神木の杉の大木とご対面。まっすぐに天に伸びる御神木は圧巻の迫力です。小川のせせらぎ、野鳥の声、枝葉を揺らす木々の心地よい音……背筋が伸びるような神聖な気持ちに。
散策後は、名残惜しい気持ちを抑えてチェックアウト。すっかり宿のファンになり、次回は絶対連泊しようと心に決め、宿を後にします。
白石駅
歴史あふれる城下町を散策
宿の送迎車で白石駅まで約20分。白石駅構内の白石市観光案内所で「白石和紙のこより」を買って準備万端。使い方はまた後ほどご紹介! 駅のロッカーに荷物を預けて、散策スタートです。
神石白石(しんせきしろいし)
白石の縁結びスポット
歴史ある白石の城下町をふらり散歩しながら、目的地に向かいます。遠くに姿を見せる美しい蔵王連峰や、街の中央に位置する白石城、お堀沿いに立ち並ぶ武家屋敷など、風情あふれる景色が広がります。街並みがコンパクトなのも散策にはうれしいものです。
白石駅から徒歩約10分。最初の目的地の「神石白石」に到着。「白石」の地名の由来となった由緒正しい石で、大きな石の根は、白石市から仙台市泉区の根白石(ねのしろいし)まで続いていると言い伝えられています。良縁を祈願すれば成就するそうなので、さっそくお参りしましょう。
ここで、先程購入したこよりが登場。大切な人を思い浮かべながらこよりを結び、石の周りを2回時計回りに回って祈願します。ちょっとした儀式のようで、少しワクワク。しっかりと祈願したあとは、最後の目的地へ。
神明社
白石城のそばに佇む由緒ある神社
神石白石から歩いて10分ほどの「神明社」へ。石段を登ると境内に到着。白石城を見上げる一角に位置し、創建1200年以上の歴史ある神社。凛とした静けさに包まれた風格ある社殿を参拝をすると、心洗われ清々しい気持ちになります。
御祭神として伊達政宗公とともに合祀されている、政宗公に長年仕えた片倉小十郎景綱公をデザインしたお守りを参拝後に購入。黒色を購入し、大満足。裏表で異なるデザインがお気に入りです。
旅の思い出も買えたので、そろそろ帰路に。白石駅まで戻り、タクシーで白石蔵王駅まで。白石蔵王駅から新幹線に乗って、うたた寝をしながら東京駅へ。
今回訪れた白石・鎌先温泉。東京からあっという間なので、ふらっと行く近場旅にもぴったり。訪れてみると、人混みもなく、ゆったりとした時間を過ごせる穴場スポットでした。歴史と温泉で、日々の疲れを癒やす旅はいかがでしょうか。
東京駅
掲載情報は2023年5月30日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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