強烈ブラックコメディ『逆転のトライアングル』無人島プロジェクト・梶海斗さんに聞く「ヒエラルキーが“逆転”する無人島での時間」

昨年のカンヌ国際映画祭最高賞を獲得し、本年度のアカデミー賞でも作品賞含む主要3部門にノミネートを果たしている話題のコメディ映画『逆転のトライアングル』が現在大ヒット上映中です。

世界中のセレブを乗せた豪華客船が難破し、無人島にたどり着いた時に社会のヒエラルキーが“逆転”する本作。豪華客船というシチュエーションならずとも、アウトドアの最たるものである無人島では映画の様な出来事が日常茶飯事?! 今回は、無人島旅行企画チーム「無人島プロジェクト」の梶海斗さんに、体験・目撃したエピソードから、無人島の魅力までお話を伺いました。

――まず、無人島が舞台の一つである『逆転のトライアングル』という作品をご覧になっていかがでしたか?

無人島がなかなか出てこないなと思っていたのですが(笑)、無人島のシーンになってからは、それまでの人間関係やエピソードが良い伏線になっていて面白かったです。普段、無人島旅行を支援している身としては、しっくりくる描写が多かったです。

――どんな所が梶さん的にしっくりきましたか?

無人島では「何かが出来る人」が強いんですよね。火を起こせたり、魚を捕まえられたり、知識も大事ですが、知っているだけではダメで、行動を移せることが大事です。この映画みたいな生存競争はありませんが、体力があってサバイバル能力がある男性がモテるということは、実際の無人島旅行でも起こる“逆転”です。

――無人島との出会いを教えてください。

『十五少年漂流記』といった本に影響を受けたのが最初のきっかけだと思います。ある時、キャンプがしたくなって、「無人島に行こう」と思いつきました。京都出身なのですが、無人島のことを調べていて、瀬戸内海には島がたくさんあるということが分かりました。どこかの大学の研究室が、島の沼の水質を調べているというログも見つかりましたので、まず有人離島に渡り、漁師さんにお願いをして、無人島に行くことが叶いました。

その初めての無人島キャンプは、僕を入れた男性3人、女性2人だったのですが、全員初めての無人島だったので、食料調達から妙に緑色の魚が獲れて「食べられるのかな?」と不安になって、漁師さんに電話して聞いたり。映画『逆転のトライアングル』でいうと、アビゲイルというサバイバル能力に長けた女性がいましたが、僕たちはそういう人がいなかったので、色々と苦労はしました。

――大変だったことはたくさんあると思うのですが、それ以上に「楽しさ」が勝った体験だったのでしょうか?

その時は楽しかったり、心地良いとか、気持ち良いわけではありませんが、「苦楽を共にした方が絆になる」というか、フルマラソンを一緒に完走した仲間、という感覚でしょうか。苦労しながらも乗り越えたという成功体験が出来たということが良かったです。映画の中でも、「この人たち助かった後も仲良いだろうな」と思わせるグループが何人かいました。

――梶さんは無人島の中でしたら、どんなことが得意ですか?

人に教える前に自分がやってみるタイプなので、色々なことをやりますが、水泳部だったこともあって、泳ぎが得意で魚を獲ることが出来るので、とりあえず飢えることは無いと思います。

――“海斗”さんというお名前にピッタリな特技ですね!

そう言っていただくことが多いのですが、この名前に引き寄せられた感じですね。両親はスキーカップルだったので、どちらかというと山の方が縁があったのですが、無人島に出会ってから、すっかり海側の人間になっています。

――無人島プロジェクトという活動をはじめて、世の中の反響はいかがでしたでしょうか?参加する方はどんな方が多いですか?

こんなに無人島に行きたい人が多いということに驚きました。大学生から、20代後半くらいの独身の方が比較的多いです。自分たちの仲間たち4~5人と、無人島でプライベートキャンプをしていただけるプランと、1人から参加できるインストラクター同行の元30人ほどと一緒に無人島へ行くツアープランがあるのですが、ツアーは若い方が出会いの場所としても楽しんでいて、4,5人の少人数パターンは40,50代のおじさまだけのグループということもあります。

――すごく濃い時間でお互いのことを知れそうですよね。

「究極の吊橋効果」という感じですね。これは参加した女性が言っていたのですが、無人島生活では恋愛に対しては男性が圧倒的に有利だと。ヴィジュアルよりも火を起こしたり魚を捕まえたり出来る能力。生命力があるかどうかが大事なので、それは街中の出会いとは“逆転”している部分かもしれません。

――梶さんはこれまで無人島で危険な目にあったことはありますか?

ツアーで皆様をお連れする時は危険なことはしませんが、旅の前のリサーチをする時に危なかったなという経験はありました。夜に海を泳ぐ必要があり、しかも月明かりが見えにくい日でした。月明かりが無いので手元に防水ライトは持っているものの、陸地の戻るべき方向がわからなくなってしまったんです。危機管理上、どうしても夜の海に出る際はランタンを浜辺においておき目印にするのですが、海が遠浅な地形で、沖の方まで出てしまった結果、ランタンの場所がかなり見えにくくなったことがありました。
そのときは星の灯りを頼りに戻ることができましたが、改めて海の怖さを感じた瞬間でした。お客様をお連れするときは安全第一ですので、自分も無理しないですし、お客様にも無理をさせることはまずありません。
しかし自然環境においていかなる時も油断は禁物ですね。

――最後に、なぜ人は無人島に惹かれるのだと思いますか?

人類のDNAに刻まれている部分があるのかもしれませんね。火を見ると高揚する気持ちもあると思いますし、捕まえた魚がビクビクと動いている感じにアドレナリンが出たりだとか。現代人はずっとスマホを触ってしまう部分があると思うのですが、スマホもネットも使えない場所に行くことで、細切れされてしまった時間ではなくて、生きるために一生懸命になれる。「こんなに一生懸命に生きたことっていつぶりだろう?」と感じる方が多い様です。人間が生きるということの根底に立ち帰れるというか。

――普段の生活では、水道の蛇口をひねれば綺麗な水が出てきて、火なんてライターですぐつけることが出来ますものね。

これは実際に参加者さんにいらっしゃったのですが、「ヒントもいらないです」といって、火おこしにゼロからチャレンジした方は、8時間かかりました。

――は、8時間ですか…!

それだけで日が暮れてしまいました(笑)。ヒントがあったり正しいやり方を知っていたとしても、体力的に難しい場合もあるので、火を起こすことって本当に大変なんです。無人島旅行はハードルが高い場合は、有人離島のキャンプ場でアウトドアの体験を始めることなどもとても良いと思います。

――自然の中で、人間の基本的な生活をする。貴重であり必要な経験かもしれませんね。今日は本当に素敵なお話をありがとうございました!

<梶海斗さん>
1988年生まれ。同志社大学卒業後、(株)リクルートHRマーケティング入社(現・株式会社リクルート)入社。求人事業の企画営業を担当の後、販売代理店SVとして営業育成業務に従事する。2016年、《株式会社ジョブライブ》を設立し代表取締役に就任。無人島活用事業、採用支援事業、Web事業等、幅広く事業を展開。注力する無人島活用事業では、日本全国の無人島を活用し「生きるを学ぶ」旅行ツアーや研修プログラムを実施するほか、全国の無人島をアウトドア拠点として利活用するなどの取り組みをしている。2020年、初の著書『無人島冒険図鑑』を出版。2021年、ガイアの夜明け出演。

映画情報

『逆転のトライアングル』
モデル・人気インフルエンサーのヤヤと、男性モデルカールのカップルは、招待を受け豪華客船クルーズの旅に。リッチでクセモノだらけな乗客がバケーションを満喫し、高額チップのためならどんな望みでも叶える客室乗務員が笑顔を振りまくゴージャスな世界。しかしある夜、船が難破。そのまま海賊に襲われ、彼らは無人島に流れ着く。食べ物も水もSNSもない極限状態で、ヒエラルキーの頂点に立ったのは、サバイバル能力抜群な船のトイレの清掃婦だった――。

監督:リューベン・オストルンド(『フレンチアルプスで起きたこと』、『ザ・スクエア 思いやりの聖域』) 
出演:ハリス・ディキンソン、チャールビ・ディーン、ドリー・デ・レオン、ウディ・ハレルソン 他
全国大ヒット上映中
配給:ギャガ
Fredrik Wenzel (C)Plattform Produktion

キャンペーン情報

現在『逆転のトライアングル』感想投稿キャンペーンが開催中! 「#逆転のトライアングル見た」をつけて、Twitterで感想を投稿すると豪華賞品がもれなく当たるキャンペーンとなっているが、プレゼントの内容はちょっと変わり種。
熾烈な現代を生き抜くためのサバイバル術をGETしよう!と、「無人島旅行券」「火起こし体験付きBBQ」「ボトックス無料券」「酔い止めバンド」など、映画にちなんだ体験ができる。

【豪華賞品】
A賞:あなたは生き抜ける?!無人島旅行ペア券 1名様
B賞:現代の必須テク!火起こし体験付きBBQ参加権 1組様(3~5名推奨)
C賞:美しさで生き抜け!ボトックス無料券 5名様
D賞:映画観たら絶対欲しい!リストバンド型酔い止め「スッキリバンド」 10名様
E賞:監督の頭の中が分かる?!映画プレスシート 10名様

実施期間:2023/2/23(木)~4/10(月)23:59
応募方法などキャンペーン詳細はこちらから:https://gaga.ne.jp/triangle/news/#campaign

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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