ディズニープラス『ガンニバル』原作者・二宮正明インタビュー「完成しているコミュニティに入る時の違和感だったり、異物感、しんどさを描いた」

2018年の連載開始以来、累計発行部数215万部を超える二宮正明が放つ衝撃のサスペンスコミック『ガンニバル』を実写ドラマ化。息も尽かせぬ緊迫感で放つ戦慄のヴィレッジ・サイコスリラー超大作『ガンニバル』がディズニープラス「スター」にて独占配信中です。

狂気の世界へと誘われて行く主人公の警察官・阿川大悟役を柳楽優弥が務め、供花村を支配する後藤家次期当主・後藤恵介役を笠松将、大悟の妻・阿川有希(ゆうき)を吉岡里帆が演じるなど、豪華演技派俳優陣が脇を固めます。監督は、『岬の兄妹』、『さがす』が国内外で絶賛された鬼才片山慎三、脚本を『ドライブ・マイ・カー』でアカデミー賞®︎国際長編映画賞を受賞した大江崇允が務め、プロデューサーに『闇金ウシジマくん』シリーズを手掛けた岩倉達哉、『ドライブ・マイ・カー』の山本晃久ら、世界で高い評価を得る日本のクリエイターとキャストが集結しています。

今回は、原作者の二宮正明先生にドラマ化について、物語の着想について、色々とお話を伺いました。

――素晴らしい作品をありがとうございました。改めて、ドラマ化が決定した時のお気持ちを教えてください。

いつか実写化してくれたら良いなという気持ちがありましたので、シンプルに嬉しい気持ちでした。ドラマ化の発表がある2日前ぐらいにハッキリと「決定」のお知らせを聞いたのですが、その前はまだ調整中といった感じだったので、ちょっと落ち着かない気持ちもありました。友達とか周りにはやく自慢したいな…と(笑)。

――ディズニープラスというプラットフォームを使うことで、全世界の方が観ることが出来ますしね。

本当、一番嬉しい形でのドラマ化でした。これまでのディズニープラスのオリジナル作品とは毛色が違う作品ということで、がっつりプロモーションしてもらえるかな?とかそういう妄想とかも込みで勝手に嬉しかったし。泣く子も黙るディズニーで実写化したんだぞ!と。

――実際に周りの反響はいかがでしたか?

ありがたいことに、きっちりマウントをとらせていただきました(笑)。『チェンソーマン』の広告が街中に貼られている時は舌打ちをしていたので(笑)、今度は僕のターンだぞと。

――素晴らしいです(笑)。片山慎三監督の作品はご覧になったことがありましたか?

そのタイミングで『さがす』はまだ観ていなかったのですが、『岬の兄妹』はこのお話を聞く前から観ていたので。で、『さがす』を観て、やっぱり面白いなあって。監督も、脚本などのスタッフも一番ありがたい布陣で作られるんだなと思えたので、原作者としてこれ以上望むことは無いです。

――もともと、この「ガンニバル」という作品を先生が描かれたきっかけというか、着想の元はあったのですか?

僕は大阪のベッドタウンで育ったんですけど、途中ですごく田舎のほうに引っ越すことになって。以前から引っ越しは多かったんですけど、その田舎に引っ越した時が、一番馴染めなかったんですよね。それは決して、都会・田舎の違いがあったわけじゃなくて、もうすでに完成しているコミュニティに入る時の違和感だったり、異物感というか。変だなと思っているのに相手に合わせないといけないしんどさを描こうと思いました。

――先生ご自身もしんどい思いをされたのですね。

そうですね。大人になってからもバイトを始める時に、地元の人間が友達ばっかりでやっているようなバイト先もあったので、そういうとこに入ったりすると、なかなか居心地の悪いことになったりしていたので。そういう時に感じたストレスは、描写に活きていると思います。「ガンニバル」がああいう形になったのは、そういった生きづらさにスリラー描写を足そうと思ったのか、スリラーぽいものを書くために、そういう話へ持っていったのか、少し曖昧になっているのですが、そういった経緯で誕生した作品です。

――村の描写もとてもリアルですが、本作を描かれる時は、何か取材や調査はされたのですか?

写真はすごく撮りに行きましたね。関東近郊に写真を撮りに行ったり、いろいろ事件を調べたりとかはしましたね。

――原作の漫画も読ませていただいて、本当に素人な言い方で申し訳ないんですけど、描きこみがすごいというか、本当に迫力のある絵だなと。連載中にあのクオリティを仕上げることは大変ではなかったですか?

もちろん大変です。なかなかしんどかったですね。かなり時間をかけていました。でも、あの描きこみをしないと気持ち悪いっていうか。なんか薄く見えたり、本当はそんなこと全然ないんですけど、描いている側はそれをやっちゃうんですよね。やらないと気が済まないっていうか。担当さんとかには「背景の絵などはもう少しシンプルでも良いですよ」と言われていたんですけど、途中から完全無視して、背景とかバリバリ画面を暗くしてやろうと思って(笑)。振り切ってやろうという感じで描いていました。読者の方にも、「読みにくい」っていう感想をたくさんいただきました(笑)。

――もうこの絵は先生にしか描けないですし、それがあっての「ガンニバル」だと思います。ドラマの撮影現場にも実際に行かれたそうですが、何か見て印象に残っていることはありますか?

撮影、全然進まないなって(笑)。それは思いましたね。びっくりするぐらい、進まなかったので。ワンシーン、ワンシーンにめっちゃ時間かけていました。2分も進んでいないかな、というシーンに3、4時間ぐらいかけていた感覚があって、こんなにこだわって、こだわって、すごいけれど大変だろうなと思いました。

柳楽さんと吉岡さんは、自分の中のイメージよりは若い俳優さんだったのですが、やっぱりお二人とも、すごいなっていう。見どころがあるっていうか。見どころがあるって僕が言うのはなんか偉そうやけど。柳楽さんが演じる大悟が素晴らしくて、キャストにも恵まれましたね。もちろん決まった時も「マジで?」ってテンションがあがりましたし。

――他のキャストの方で、あ、この人個人的に嬉しいとかいう人はいましたか?

倍賞美津子さんですね。以前より「実写化するなら銀は倍賞美津子さん」と言っている人もいたので、本当に出演してくださって。中村梅雀さんも嬉しかったです。ちょうど、『孤狼の血 LEVEL2』を観ていたので、良い役者さんだなと思って。クセのある役柄を演じてくれそうでワクワクしました。完成したドラマの1,2話を観て(※取材時)、画面がとても豪華なのでありがたいなと。

――こういう村を題材にしたスリラーは、小説や邦画、洋画問わずあると思うんですけれども、先生は何か好きな作品がありますか?

「ガンニバル」を描く時に少し意識したのが『わらの犬』(1971)という映画です。ダスティン・ホフマン演じる数学学者の主人公が、奥さんの実家の田舎に帰って、都会ものだと嫌がらせを受けるんです。「ガンニバル」と大筋としてはかなり似ているというか、意識した部分があります。(『わらの犬』では)もとは穏やかな人間だったけれど、村人の挑発に我慢ができなくなって、どんどんエスカレートしていって、最後は爆発していくみたいな話です。

――ぜひ『ガンニバル』にはまった方には、『わらの犬』もご覧になっていただきたいですね。他のインタビューでもお答えになっていると思うんですけど、漫画家になろうと思ったきっかけはどんなことだったんですか?

絵を描くことも好きでしたし、漫画もどきみたいなものはよく描いていました。映画も好きでしたし、ストーリーを考えることが好きなんでしょうね。自分1人でやれるし、金もかかんないしっていうことでやりやすかったのと、単純に漫画が面白くて好きで見ていたので、それに影響を受けて描き始めたっていうのが、最初です。藤田和日郎さんの漫画が特に好きで、結構影響を受けたかもしれないです。藤田先生はラフなどをあまり決めないで描いて、ホワイトで潰すという作業をしているとドキュメンタリーで見て。僕はデジタルで描いているので、藤田先生の原稿の様に表面がボコボコにはならないですけど、同じように白で消しながら線を描いたりをしています。

――先生の迫力のある絵は、アナログな部分もあるかなと思っていたので全てデジタルというのは意外でした。

デジタルネイティブ世代なので(笑)。参考になるアナログの絵を、漫画家の先輩方が作ってくれたからということですけど、そういった絵を意識しながら描いていれば、デジタルでもアナログの様な手触りの絵が描けると僕は思っています。

――今日は本当に色々と教えていただきありがとうございました。これからの配信を私も楽しみにしています。

僕もいち視聴者として、すごく楽しみにしているので、ぜひ多くの方に体験していただきたいです。

『ガンニバル』
■原作:『ガンニバル』二宮正明(日本文芸社刊)
■配信:ディズニープラス「スター」で12月28日より独占配信
■監督:片山慎三、川井隼人 ■脚本:大江崇允 ■プロデューサー:山本晃久、岩倉達哉
■出演:柳楽優弥、笠松将、吉岡里帆、高杉真宙、北香那、杉田雷麟、山下リオ、田中俊介、志水心音、吉原光夫、六角精児、酒向芳、
矢柴俊博、河井⻘葉、赤堀雅秋、二階堂智、小木茂光、利重剛、中村梅雀、倍賞美津子

(C)2022 Disney

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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