映画『世界は僕らに気づかない』飯塚花笑監督が語る「人種問題、セクシュアリティなどの社会課題に興味を持ち、周りの人と話すきっかけになってくれれば」

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本年度の大阪アジアン映画祭にて「来るべき才能賞」を受賞した話題作『世界は僕らに気づかない』が2023年1月13日(金)より新宿シネマカリテ、Bunkamura ル・シネマほかにて公開。世界各国の映画祭を渡り歩きようやく日本に凱旋上映となります!本日先行上映会が実施され、主演の堀家一希さん、ガウさん、飯塚花笑監督が登壇し、海外の映画祭での様子や、撮影時の貴重なエピソードを話しました。

本作は、トランスジェンダーである自らの経験を元に制作した『僕らの未来』が国内外で注目を集め、今年1月公開の『フタリノセカイ』で商業デビューを果たした飯塚花笑監督が、レプロエンタテインメント主催の映画製作プロジェクト「感動シネマアワード」にて製作したオリジナル長編第五作。群馬県太田市で、フィリピンパブに勤めるフィリピン人の母親レイナ(ガウ)とフィリピンダブルの高校生・純悟(堀家一希)のアイデンティティや愛をめぐる問題を描いています。

今回、脚本・監督・プロデューサーを務めた飯塚監督は、本作を製作した理由を問われ、「主題となるフィリピンダブルという主人公の設定が後に加わるなど、実は脚本を書き始めたときの決定稿が途中でガラッと変わったりはしたのですが…」と前置きしつつ、「これを描こうと思ったのは、幼少期にフィリピンダブルの友人がいて、彼に無理解だったなという想いがあったからなんです」と回答。

「子どもの頃、彼の家に遊びに行って、夕方になって家に帰ろうとするとすごく彼が寂しがるんです。そろそろ、家で母が夕飯を作っているから、と言って帰るんですけど、なぜ彼が寂しがるかというと、お母さまがシングルマザーで、夜はフィリピンパブへ働きに出かけちゃうからなんですね。彼はひと晩、一人で過ごさなきゃいけないという…。自分は幼少期、彼のバックグラウンドに関心がなかったりして、それが心の引っ掛かりになっていた。意外と、人種の問題を考える機会が少なかったと思います。そういう意味で、今回この問題を取り上げることで、何かお客さまのなかで、価値観がアップデートされればうれしいなと考えています」と、飯塚監督は真摯に語りました。

ちなみに本作は、2022 年の大阪アジアン映画祭でワールドプレミアを迎え“来るべき才能賞”を受賞。その後ドイツ、韓国、ニューヨーク、香港、オランダ、シカゴ、フィリピンなど世界各地で高評価を得ています。飯塚監督は「国外ではたくさん上映してきていますが、大事なのは、日本のことを題材にしているので、日本の方々に観ていただいて、問題意識を持っていただくこと」とコメント。「そのために描いている部分がたくさんあ
るので、映画を観て、あのシーンはどうだったとか、お友だちとたくさんお話してもらえれば。たくさん考えていただけたらうれしいです」とアピールし、韓国で上映した際の様子を問われると、「セクシュアルマイノリティや人種間の問題などについて関心が高くて、すごく熱心だと思いました。『ここはどうなっているんだ』など、熱心に質問をいただきました」と振り返ります。

また、レイナ役のガウさんが、フィリピンでの上映会の様子を聞くと、「『この俳優さんはどういう方なの?』とか『フィリピンでももっと活躍してほしい』と言われました」と、飯塚監督。これにガウは「うれしい~!」とニッコリ。本作に出演したことで「“愛情の深さ”について考えることができました。母国にいる家族を想う愛や、息子に対する愛情が作品には描かれています」と話します。

さらに、『東京リベンジャーズ』(21 年/英勉監督)でのパーちん役など、その存在感ある演技が輝く堀家さんは、本作の主人公・純悟を演じ、「飯塚監督と信頼関係を築くことができた」と満足げ。「撮影現場で印象に残ったこと」について聞かれると、「監督とは、演技に対する共通言語がすごく多くて、前段階での話し合いで、すごく話しやすかったことが1番印象に残っています。ここまで自分のことをさらけ出せて、ちゃんと相談できたというのは、僕的には思い出深いこと。すごくやりやすいと思いながら日々を過ごしていました」とコメント。

舞台挨拶では終始和気あいあいとしていた三人だが、現場での様子を聞かれると「本当にこの場を借りてごめんなさい」と堀家さん。「撮影中はある種ゾーンに入っていて、自ずと純悟の気持ちが出てくる状態になっていた。ここでガウさんと仲良くなってしまうとこの集中が途切れてしまう気がしていた」と撮影中母親役のガウさんに対して冷たい態度を取っていたことを謝罪。対してガウさんは「本当にスンとされていたので監督と話してた。すごく仲良くなりたかったけど、(堀家さんが)そういう空気だったので。でも、そのおかげで本当にむかつく!って息子に対して思えました(笑)」。さらに監督が重ねて「親子がずっと仲が悪いので、僕はずっとハラハラしてました(笑)」と、緊張感がありつつもとてもいい現場だったことが伺えるエピソードを披露。

最後に堀家は、「大阪アジアン映画祭で初めて上映されたとき、泣きながら抱き着くような勢いでお客さんが感動してくれていて届く作品が作れたと感じた。多くの方に見ていただくことがとても幸せ」と手応えを話します。

映画『世界は僕らに気づかない』は2023年1月13日(金)より新宿シネマカリテ、Bunkamura ル・シネマほか全国ロードショー。

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藤本エリ

映画・アニメ・美容に興味津々な女ライター。猫と男性声優が好きです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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