映画『マリッジカウンセラー』 前田監督インタビュー/実在する”カリスマ仲人”とは?

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理想の相手と出会うには、どうしたらいいのでしょうか? 思い悩んだ経験のある人はもちろん、現在進行形で悩んでいる人も、きっとたくさんいると思います。

愛知県で先行公開中の映画『マリッジカウンセラー』は、昔ながらの”結婚相談所の仲人”たちの奮闘を笑いと涙を交えて描くハートフル・コメディ。2023年1月13日(金)からは【東京】池袋シネマ・ロサ、【神奈川】kino cinéma横浜みなとみらいでの公開、そして全国での順次公開も決定しています。

・2023年1月13日(金)より
【東京】池袋シネマ・ロサ
【神奈川】kino cinéma横浜みなとみらい
・2023年2月3日(金)より
【京都】京都みなみ会館
【兵庫】kino cinéma神戸国際
・2023年2月4日(土)より
【大阪】第七藝術劇場
・2023年2月17日(金)より
【東京】kino cinéma立川髙島屋S.C.館
・2023年2月24日(金)より
【福岡】kino cinéma天神
【鹿児島】天文館シネマパラダイス
・公開日未定
【熊本】Denkikan

「え? 結婚相談所って!? ちょっと古くない?」そう思う人も少なくないかもしれません。しかし、マッチングアプリ全盛の今だからこそ、”仲人”と”会員”たちが織りなす「衝突」が、是非観てほしいと感じる内容として仕上げられています。

本作で個性的なキャラクターを演じるのは、渡辺いっけいさん、松本若菜さん、宮崎美子さんら。各々ベテランだからこそ、印象的な演技をスクリーンで披露してくれます。

『マリッジカウンセラー』<STORY>

大手不動産会社に勤める赤羽昭雄はトップ営業だった過去の栄光を自慢し、パワハラ・セクハラ当たり前の鬱陶しいオヤジ。ある日のこと、赤羽は会社からの辞令で、結婚相談所「とわえもわ」に出向することに。そこは、カリスマ仲人である母の後を継いだ時田結衣が切り盛りしている結婚相談所だった。
最初は「物件紹介も結婚相手の紹介も大差ない」と高をくくっていた赤羽だが、“3回目のデートから先に進んだことがない”会社員、30代のうちに結婚したかった女性など、それぞれに事情を抱えた個性的な会員を前に、予想外の苦労の連続。一方の結衣も、真摯に会員と向き合いながらも、自分の手腕に自信を持てずにいた。最初こそ価値観の違いから衝突する2人だが、互いに足りないものを補い合い、小さな奇跡を起こしていく―。

今回の前田直樹監督へのインタビューでは、映画『マリッジカウンセラー』の題材でもある「なぜ今、結婚相談所なのか」を中心に、いろいろ聞いてみたいと思います。

「結婚したいけど、誰に相談したらいいかわからない」友人

──前田監督はどういうきっかけでこの『マリッジカウンセラー』を手掛けることになったのですか

前田監督(以下 前田)僕自身が監督としてこのプロジェクトに入ったのは2018年の4月なんですけれど、きっかけはそれよりももっと前までさかのぼります。
僕の高校の時の友達で「結婚したいんだけど、結婚できない」という友人がいまして。彼から「家族に相談しづらいし、そういう相談ができる友達が身近に居ない」「誰に紹介してもらったらいいのか、わからない」なんていう話を聞いたんですね。その時にはじめて「ああ、結婚したいけどできない人は実際にいるんだな」っていう実感ができまして。
ちょうどそんな時に、別企画で話をしていた山﨑プロデューサーから、『マリッジカウンセラー』の企画を聞いたんです。友人の一件もあって、結婚したい人のために働く「仲人っていう仕事」に興味を寄せるようになりました。そこがきっかけでしたね。

──今の世の中的には、人間関係の摩擦の少ないマッチングアプリが主流だと思うんですが、結婚相談所はむしろ、アプリなんかとは真逆の、人間と人間の摩擦があるという印象なのかな、と感じます。監督は、そういう人間関係の部分を一番強く描きたかったという思いがありましたか?

前田:うーん、そうですね。あまり摩擦っていう印象自体は強くなかったんです。どちらかというと、人のご縁っていうものに興味を抱きました。(映画のための)取材を始めてからなんですけど、結婚婚活に限らず、あらゆることに関してなんかご縁っていうのがあるなあ、って思うようになりました。ご縁っていうのは本当に降って湧いてくるものではなくって、誰かの力というか努力がある中で生まれてくるものだなあと。

結婚相談所の仲人さんって、ただ機械的に条件に合う人を探しているわけではなく、結婚に適したお相手を見つけるのに本当に一生懸命、苦労しているお仕事なんです。「縁の下の力持ち」じゃないけれども、そこの部分は伝わるように描きたいと思っていました。

とにかく取材した”リアル”

──かなり時間をかけて準備されたんでしょうか

前田:2018年に入ってから丸1年は相当な取材を重ねました。台本も8稿くらい改訂しているので、かなりかかりましたね。最初は仲人さん数人の座談会から取材スタートしたんですが、結局、個別に仲人さんをご紹介いただいて取材させていただいたり、結婚相談所から成婚退会された元会員さんたちにも取材させていただきました。
その後、コロナを挟んで、オンラインのお見合いというのも出てきましたので、その辺も再度取材し直していますね。
あと作中に登場する「プロフィール交換会」は都内で、キャンプ場でのイベントシーンも実際に長野で取材させていただきました。


──あのイベントの描写は印象的でした。こんな世界があるんだ、って。監督自身もやっぱり実際にご覧になられて驚きや発見が多かったですか?

前田:はい。作中のバーベキューシーンでは、野菜を切ったり調理をそれぞれが共同作業でやっているんですけど、実際のイベントでもやっぱり(それぞれの会員さんが)共同作業とかして、そこでコミュニケーションが生まれるんですね。そこで「なんかこの人、気になるわ」みたいなことも実際起こっているようで、「なるほどなあ」と感じました。
僕が驚いたのは、やっぱりその中でも仲人さんが「この人たち、気になってるのかしら?」ってのを、邪魔にならないように入っていってお手伝いしているんです。本当にこういうことがお仕事としてあるんだな、っていうところでは、おぉ、っと思いましたね。

実際に会った”カリスマ仲人”

──みんなを立てながら、仲人さんが影となってつないでいく場面、日常生活ではなかなか見られませんね。監督が見ている中で、やっぱり上手だなとかすごいなっていう仲人さんはいらっしゃいましたか?

前田:本当にいろんなタイプの方がいらっしゃるんです。グイグイグイグイと、ちょっと腰が引けてる会員さんの背中を押してあげる人も居れば、会員さんのお話を本当にじっくりと聞いてあげ、寄り添う人もいたりして。その中でなんかやっぱり印象的だったなと思うのは、すごい洞察力のある方で、今回、宮崎美子さん演じるカリスマ仲人、十和子さんのモデルとなった方です。
もともと「条件が合わない」はずの人でも、互いを見極めて「どう?」ってプレゼンして絶妙にマッチングさせてしまう。本人がお見合いを重ねるにしたがって見えてくる本人さえ気づいていない本来の条件みたいなものを仲人さんが見極める。その話を聞いたときは、「すごい、まるでマジックみたいだ」と思って。何でしょうね、センスとも経験とも言えるっていう。そのモデルの方はいわゆる心理学的なこととか看護師もやられてる方だったので、そういうバックグラウンドがあるからこそなのかもしれないですけど。すごく印象的で、びっくりさせられましたね。

強烈なキャラ”赤羽”

──十和子さんのモデルが実際にいらっしゃったんですね。一方、渡辺いっけいさん演じる赤羽っていうキャラはとにかくアクが強くて強烈でした

前田:色々と取材をしている中で、仲人さんにもセカンドキャリアの人が結構いらっしゃって。早期退職した男性の方とか、人材派遣の仕事をしてた人とかいらっしゃったんですね。脚本家の松井さんのアイデアも多分にあるんですが、いわゆる「なりそうに無い人」がなると面白いんじゃない? っていうのはありましたね。

──もう、意外性が固まりのようになったキャラクターだなと思って見てました。「え、最後までこのままこの人をずっと見続けるの……?」っていう不安があるくらい(笑)

前田:もう本当に、脚本読まれたいっけいさんも最初に心配されるぐらいでした。このヘイトを集めるようなおじさんが最後まで嫌われ続けてしまうのでは、というぐらいのスタートなので。難しいというか、ある意味チャレンジな役だなと思いますよね。

──松本若菜さんが演じた結衣は対照的でした

前田:結衣は本当に寄り添い型の仲人さんです。自分の失敗経験のせいで強く出られない。でも戸惑いながらもみんなの幸せのために頑張りたいっていう、本当、人間味のある人として描きたかったキャラクターです。

恋愛と結婚相談所は一緒?!

──最初は赤羽のキャラが強すぎてちょっと気が付きづらいんですけど、そうした結衣の描かれ方も仲人さんのバリエーションを深めてますね。お話が少し戻るのですが、先ほど、お見合いを重ねるにしたがって自分の欲しいものが見えてくる、というお話がありました。最初は自分でもどういう出会いを求めているのがわからないけど、結婚相談所を通してだんだんと育てられていく過程があるんでしょうか

前田:そういう部分は多分にあるのかなと思っていまして。例えば高学歴の部分にプライドを持っている女性は、それに見合った自分よりも学歴の高い方や収入の多い方がいいっていう、本当、数字とか表面的な条件を見てしまってたりするケースがあるらしいんですけど、まぁ、実際に結婚されて一緒に暮らしていくときに必要なものって、そういうことではなかったりすると思うんですよね。
“自分が結婚で本当に必要なもの”みたいなものは、いろんな出会いをしていく中で、うまくいかなかったり、あるいは良かった時、仲人さんとの”復習”で気づいたりすることが多いようです。別のケースでは、複数のお相手とお見合いやデートしている会員さんが仲人さんとの面談の時に「なんかあなた、今日ずっと〇〇さんのお話しされてるわよね」「あなたは〇〇さんのこと気になってるんじゃないの?」と指摘されてそこではじめて気づいたり。本人はもうそんな気はなかったと思っていたのに。

──なんか、例えば恋愛相談でも失恋したとかでも、友達に話したときに「お前、実はこうじゃないの?」みたいなのはありますよね。結婚相談所のことは知りませんでしたが、まるで恋愛で色々経験していく過程が凝縮されているようです

前田:そうですね(笑)。「お見合い結婚」と「恋愛結婚」っていう言葉がありますけど、この映画を作る過程で「あれ? お見合いしてる人たちも出会いがお見合いなだけで、恋愛しながら本当にゴールに向かってる」って。「恋愛結婚」と何が違うのってなりましたね。
結婚相談所の場合、出会う方達も条件を出したうえで結婚したい人同士が出会ってるので、普通の恋愛よりは、結婚相手を見つけるっていうとこでは早いのかなと。でも、その中で恋愛もやっぱされてるんだなぁ、とも思いましたね。

結婚相談所の価値観を変えるきっかけになる作品でありたい

──お見合いや結婚相談所に対するイメージが、この映画で少し変わりました

前田:それはありがたいというか嬉しいです。我々の狙ってるところでもあるかなと思いますね。
僕ら世代、45歳とかより上の人達って「結婚相談所に行くのは最後の砦」みたいなイメージがあったんです。

──ああ、わかります

前田:実際、僕も一時期はそう思っていたのですが、その価値観をちょっと壊せたらいいなと。今は婚活の 1 つの選択肢として結婚相談所に行くっていうのがあっていいのではないかと思ってます。
今って、マッチングアプリやいろんなサービスがあるんですけど、うまく使える人たちはそういうサービスで良いと思います。
ただ、それでうまくいかない方も、いっぱいいらっしゃるんだろうなと思っていて。そういう人が、もしかしたら結婚相談所で背中を押してもらったり、お話を聞いてもらったりすることで、いい人を見つけるっていうこともあるとも思います。本当、選択肢の1つになればいいなと。
ですので、婚活をしている人にもその周りの方にも観に来ていただいて、結婚相談所を婚活の新たな価値観として捉えていただけるといいなあ、と思いますね、はい。

──愛知での先行上映の手ごたえはいかがでしたか?

前田:この作品は愛知県6市で撮った映画ということもあり、まず9月3日にお披露目上映を愛知で行ったんですけど、上映後、僕に直接、話しかけてくれて、感想をいただけたりしたのは非常に嬉しかったですね。それがまた、年齢層がすごく年上の方もいれば若い方もいらっしゃったので、なかなかの手ごたえを感じました。劇場出てからも、─まあ、お知り合いだとは思うんですけど、観客同士でニコニコ笑いながら映画の話をしているっていう状況もすごく心地よい雰囲気だったなぁと思っています。

──確かに、なんだか幸せな気分になれる作品だなと思いました。今後の上映も楽しみです

前田:関わった皆さんと、本当に”全員野球”で作った映画だと思っています。みんなの映画として、この生まれたばっかりの『マリッジカウンセラー』を育ててもらえると嬉しいです。ありがとうございました。

映画『マリッジカウンセラー』公式サイト
https://marriagecounselor.jp/

「マリッジカウンセラー」公開劇場&初日情報
・先行公開中
【愛知】刈谷日劇
・2023年1月13日(金)より
【東京】池袋シネマ・ロサ
【神奈川】kino cinéma横浜みなとみらい
・2023年2月3日(金)より
【京都】京都みなみ会館
【兵庫】kino cinéma神戸国際
・2023年2月4日(土)より
【大阪】第七藝術劇場
・2023年2月17日(金)より
【東京】kino cinéma立川髙島屋S.C.館
・2023年2月24日(金)より
【福岡】kino cinéma天神
【鹿児島】天文館シネマパラダイス
・公開日未定
【熊本】Denkikan
※各地での舞台挨拶予定や追加の公開館に関する最新情報は、映画公式SNSや公式HPにて随時告知予定。

出演:
渡辺いっけい 松本若菜 宮崎美子
青山倫子 永山たかし 坂口涼太郎 呉城久美 久田莉子
宇乃うめの 今藤洋子 岸田タツヤ 鈴木亮介 岡安泰樹 細井学 歌川椎子 上地春奈
樋渡真司 大和田悠太 藤井太一 大塚ヒロタ / 三波豊和 / 円城寺あや

監督:前田直樹 脚本:松井香奈
撮影:今井哲郎 録音:sorto & nodo 美術:竹内悦子 竹内公一 音楽:阿尾茂毅 編集:細野優理子
スタイリスト:森内陽子 ヘアメイク:戸澤奈月 キャスティング:北田希利子 制作担当:伊勢隼一 グレーディング:古屋幸一 VFXスーパーバイザー:渡辺輝重
宣伝美術:佐々島健 プロデューサー:山﨑歩 企画・配給:スタジオレヴォ
製作:「マリッジカウンセラー」フィルムパートナーズ

©2022「マリッジカウンセラー」フィルムパートナーズ

https://youtu.be/dOgC6npG_yg

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オサダコウジ

慢性的に予備校生の出で立ち。 写真撮影、被写体(スチル・動画)、取材などできる限りなんでも体張る系。 アビリティ「防水グッズを持って水をかけられるのが好き」 「寒い場所で耐える」「怖い場所で驚かされる」 好きなもの: 料理、昔ゲームの音、手作りアニメ、昭和、木の実、卵

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