理不尽な“野球部あるある”を愛おしく描いた名作漫画『野球部に花束を』が映画化! 里崎智也&クロマツテツロウ先生インタビュー
「ドラフトキング」「べー革」などの野球漫画で知られる漫画家・クロマツテツロウ先生による、自らの体験をベースに高校野球部の実態を描いた伝説の漫画「野球部に花束を ~Knockin ‘On YAKYUBU‘s Door~」が連載終了から5年の月日を経てついに映画化! 2022年8月11日から公開となります。
今作は“高校デビュー”を夢見た主人公・黒田鉄平(醍醐虎汰朗)が野球部の見学に参加しまったばっかりに茶髪を丸刈りにされるなど、理不尽なエピソードの数々にぶつかりながらもチームメイトたちとの高校生活を謳歌するというストーリー。
作中には映画初出演となる千葉ロッテマリーンズの元選手で現在は超人気YouTuberでもある里崎智也さんが「野球あるある解説者」として随所に登場し、野球経験者じゃなくてもクスッと笑えるように好リード。老若男女誰でも楽しめる青春エンターテイメント作品として昇華されています。
今回は里崎智也さんとクロマツテツロウ先生に、元高校球児で千葉ロッテマリーンズの大ファンでもあるノジーマ記者が直撃! ディープな野球部エピソードが飛び交い続ける爆笑インタビューとなりました!
いきなり本編に収録できないエピソードで大盛り上がり
――まずはクロマツ先生、『野球部に花束を』の映画化おめでとうございます! 2017年の原作完結から少し時間を置いての映画公開となりますが、映画化のお話を聞いたときはいかがでしたか?
クロマツテツロウ(以下、クロマツ):いやもうびっくりしました。なんせ作品の内容が時代と逆行しているじゃないですか。もちろん単純に嬉しかったですが、今この作品を掘り下げていいものなのかという気持ちもありました。
――今の時代だとパワハラとして一蹴されそうな、1990年代の野球部のリアルを詰め込んでいますからね。実は僕もクロマツ先生とほぼ同世代(1学年下)で高校野球を経験していたので、思い出というか数々のトラウマが鮮明に蘇りました(笑)。エピソードはやっぱりクロマツ先生のリアルな体験だったりするのでしょうか?
クロマツテツロウ(以下、クロマツ):さすがに漫画なので盛っているといえば盛っているところも……
里崎智也(以下、里崎):そうなんですか? 僕は漫画よりもっとリアルなエピソードがたくさんありますよ? 例えば練習中に水を飲んじゃダメとかは全国共通だったじゃないですか。殴る蹴るだって全国共通でしょ。
――いやいや、僕の高校では殴る蹴るまではいかなかったですよ! クロマツ先生の高校ではいかがでしたか?
クロマツ:普通に殴られてましたね。僕は志望校に落ちて、二次募集で志望校よりは学力が低い高校に入学したんですけど、野球部に入るなり監督に地べたに正座させられて「おまえ二次募集で入ったらしいな? みんなのことバカにしてるやろ!」といきなり殴られたりしました。それでこっちも「すいません」って謝ると言う(笑)。友達も結構できて、野球部とも仲良く楽しくやってたんですけどね(笑)。
――それ、本編冒頭のいきなり坊主にさせられるエピソードよりヤバいじゃないですか!! 今作にはそういった“野球部あるある”を紹介する解説員として里崎さんが出演されているわけですが、これは原作にはなかった役ですよね。
クロマツ:それは飯塚健監督の発案ですね。漫画では文字で“野球部あるある”を挿入していたのですが、これを“格言マン”に話してもらうという案を聞かされ、最初は「格言マンってなんや? 戦隊モノみたいな格好をしていたりすんのかな?」と少しだけ不安になりました(笑)。見た目もわからなかったですし。でも配役が里崎さんだと聞いて安心しましたね。
――ちょっと七三分けになっただけで、そのまんま里崎さんですもんね(笑)。そして里崎さんの登場の仕方で監督が遊んでいる感じも面白かったです。
里崎:こっちはグリーンバックで撮っただけなんで、完成した作品を見て「おおっ!」ってびっくりしましたもん。最初は普通なのに、途中でものすごくでっかく映ってたりとか(笑)。
クロマツ:いろんなところにワイプで出てますもんね。いやあ、素晴らしいアイデアです。
――里崎さんの登場の仕方にもぜひ注目していただきたいですね!
里崎「あるあるにはほぼ共感。ただ、実際よりゆるい(笑)」
――里崎さんは徳島県の鳴門工業高校という強豪校のご出身ですが、里崎さんの高校生活と重ね合わせても共感できる“あるある”のほうが多かったですか?
里崎:そうですね。共感できないものはほぼほぼないです。ただ、実際よりもちょっとゆるいというだけで。
――えっ、この内容でゆるいんですか!(笑) いったいどんなエピソードが!?
里崎:もはや何が“あるある”なのかわからなくなるんですよ。例えば理不尽に殴られるのだって自分たちにとって当たり前すぎて。朝「おはようございます」って挨拶するのと同じくらい当たり前に毎日殴られるわけです。挨拶のようなものだから、もはや何も不思議だと思わないし、逆に殴られない日は「今日は何もなかったね」となるんです。
――殴られない日に平和を感じるとか、完璧に洗脳されてますよ!
里崎:でもほんと普通ですからね。逆に言ったら今の高校球児のほうが異常に見えますよ。髪もチャラチャラ長えし、下手くそが練習2時間で上手くなるわけないやろ! 怪我してもいいから上手くなる可能性にかけて練習しろや!! って、僕は思います。
クロマツ:それはほんと思いますよね。
――お二人が急に先輩モードになりましたね! とにかく一生懸命練習するしかないと。
里崎:一生懸命やるだけじゃダメなんです。長時間やるしかないんです。だって、僕は家でテレビなんて見たことないですから。いつも帰るのは21時とか22時でしたからね。ご飯食べて風呂入って寝るしかないですから。
クロマツ:僕はさすがにそこまでではないですけど、やっぱりテレビとかはあまりゆっくり見た記憶はないですね。
里崎:授業が一番天国でしたからね。
――授業中は寝て休めるし、みたいな。
里崎:いや寝ないですけど。一緒にしないでくださいよ!(笑)
――ひえっ!
里崎:だって僕、高校の成績は最高2番ですからね。
クロマツ:すごい、勉強もちゃんとされていたんですね!
里崎:家で勉強したくない、というか時間的にできないから、授業中だけちゃんとやるんですよ。授業中ちゃんとしてれば点取れるじゃないですか。
――毎日それだけ練習漬けで、授業中眠くならなかったですか?
里崎:それは体力がなさすぎるんですよ(笑)。僕ら、下手したら1日20kmくらい走らされてましたからね。
――今になって20年前の高校生活を反省させられますね……。
クロマツ「もう何が起きても最悪殴られへんしなと考えられる」
――今作では野球部での厳しい生活がたくさん描かれていますが、お二人がそんな野球部に入っていて良かったと思えることってどんなことでしょうか?
クロマツ:監督に怒られるときも言い間違いで怒られることってめっちゃあるじゃないですか。相手に何を言うと地雷を踏むかとか、嗅覚が育ちますよね。
里崎:要領を覚えることですかね。手の抜き方とか。グラウンド整備をどうやって簡潔に終わらせるかとか、どうやって水を飲むかとか。そういうことをたくさん考えながら野球することで、要領の良さが身につきました。これは仕事にも繋がりますよ。
――マラソン中にここで回り道をすればこっそり水を飲めるとか、やってた気がします!
クロマツ:あと僕は漫画家アシスタントとして下積みをかなり長くやらせていただいたんですが、昔はほとんどがブラックな環境でした。でも野球部の経験があると、そういう環境に身をおいてもあまりへこたれないし、休みがなくても平気でしたし、何があっても「殴られるよりマシやな」「最悪殴られへんしな」という考えになる。
里崎:あとは痛くない殴られ方も覚えます。避けるやつが一番ダメなんですよ。殴る方も殴り慣れてるから、お互いそんなに痛くないように殴れるのに、避けると変なところに当たって余計痛くなるんです。例えば、頭を殴られるときは殴られる瞬間に自分から少し頭を出して迎えに行くと、最速点で当たらないから若干緩く当たるんです。まあ、そんな能力いらないでしょうけど(笑)。
――それ、もう違うスポーツですから!
里崎「事実に基づいたフィクションだから、大河ドラマと一緒!」
――最後に今作の見どころと、どんな方に観てほしいかを教えてください!
クロマツ:やっぱり若い子に観てほしいですね。すぐパワハラとか言われちゃう時代なんで、変な誤解を受ける可能性もあると思うので心配ですけど、昔の野球部もそんなに悪くなかったよということだけは伝えたいですね。うまく愛情を感じて、飲み込んでもらえたら嬉しいです。
――確かに、作品を通じて部員のみんなが高校生活をエンジョイしている姿はバッチリ描かれていると感じました!
里崎:これが野球部の90年代後半くらいのリアルですから、なめんなよ!
――ときどき先輩っぽく戻るの、やめてください!(笑)
里崎:要は大河ドラマと一緒ですから。事実に基づいたフィクションなんです。こういうリアルもあったんだよと感じてほしいですね。あとはクロマツ先生とも話してるんですけど、続編をやりましょうと。僕がもっとリアルなエピソードを提供してもいいし、現代の練習2時間とかでやってる野球部に髙嶋政宏さん(原田監督役)みたいなゴリゴリの人がやってきて、昭和に戻すっていう設定も面白そう。あとは現代の野球部員が一人だけ昭和にタイムリープするとか!
――野球部ネタは話題が尽きませんね! 楽しい話をありがとうございました!
『野球部に花束を』
【出演】醍醐虎汰朗、黒羽麻璃央、駒木根隆介、市川知宏、三浦健人、里崎智也(野球解説者)、小沢仁志、髙嶋政宏
【原作】クロマツテツロウ「野球部に花束を 〜Knockin’ On YAKYUBU’s Door〜」(秋田書店「少年チャンピオン・コミックス」刊)
【主題歌】電気グルーヴ「HOMEBASE」
【音楽】海田庄吾
【監督・脚本】飯塚健
◆公式HP:https://entm.auone.jp/camp/yakyubu/
◆公式Twitter: https://twitter.com/yakyubuhanataba
◆公式TikTok: https://www.tiktok.com/@yakyubuhanataba
撮影:オサダコウジ
(執筆者: ノジーマ)
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