10代で自己受容ができず苦しんだ著者が、マインドフルネスなどの実践法を若者向けに解説
「日本の若者は他の国の若者に比べて自己肯定感が低い」とよく言われますが、それがどの程度か皆さんはご存じでしょうか? 内閣府が令和元年に発行した「子ども・若者白書」には、日本を含む7か国の若者(13歳~29歳)の意識調査の結果が掲載されています。それによると、「自分自身に満足している」と答えた若者は、日本以外の6か国が70~80%台で、日本だけが45.1%という際立って低い数字となったそうです。こうして見ると、改めて日本の若者の自己肯定感の低さに驚く人もいるのではないでしょうか。
そもそも、自己肯定感とはどのような感情なのでしょうか。それは「どのような自分にも価値があるという、無条件に自分を受け入れる感覚」だと、書籍『自分を好きになれない君へ』の著者・野口嘉則さんは説明します。
たとえば、「私はいつも高い目標を掲げて努力を続けてきた」「私は数十倍の倍率を勝ち抜いて有名企業に入社した」と言う人がいます。また、子どもに「テストでまた100点をとったの。えらいわね」「おまえの音楽の才能はすばらしいよ」などと言う親がいます。これらは一見、ポジティブな考え方や声がけに思えますが、実はけっして自己肯定感を高めるものではありません。なぜならこれらは「条件付きの肯定」であり、条件を満たさない場面では受け入れられていないからです。無理に努力したり自分の良いところを見つけようとしなくても、「落ち込んでいる自分、がんばれない自分、ボロボロに傷ついている自分も価値ある存在だとあたりまえに感じることができる」(同書より)という自己受容によってこそ自己肯定感は生まれると野口さんは伝えます。
この自己受容に大切なのが、自分の心の中にある「見つめる自分(インナーペアレント)」と「見つめられる自分(インナーチャイルド)」が仲良しであることだそうです。インナーチャイルドが悲しんだり傷ついたりしたときに、インナーペアレントが「そんなことでメソメソするな」と責め立てるようであれば、あるがままの自分を許し、受け入れることはできません。
では、このインナーチャイルドを癒やしてあげるにはどうすればよいのでしょうか。同書では、心理カウンセラーである野口さんが多くの人をサポートしてきたなかで確立した3つのアプローチが紹介されています。1つ目が「マインドフルネス」、2つ目が「自分の中にある禁止令と呼ばれるものを解く作業」、3つ目が「自分の心の中に安全基地をしっかりつくること」。その方法が同書ではわかりやすく、具体的に解説されています。
学生向けに書かれた同書は、やさしく温かな目線で「自分を好きになることの大切さ」について説かれています。「自分に自信が持てない」「無理して人に合わせてしまう」など多くの悩みを抱える思春期の若者にとって、その解決の助けになってくれることでしょう。
「あなたがいまここにいること自体が大きな奇跡であり、それだけでまちがいなく誰かを幸せにしている」(同書より)
今もあるがままの自分を受け入れることができなくて生きづらさを感じている社会人、子育てをつらく感じてしまう親も多いもの。そうした大人にとっても、同書は有用な一冊です。
[文・鷺ノ宮やよい]
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