「ボスとウードの関係と実際の僕らの関係は似ている。僕がモデルを始めたばかりで、まだ何もできなかった頃、アイスさんは先輩としていろんなことを教えてくれたんです」 『プアン/友だちと呼ばせて』 トー・タナポップ インタビュー




アジア各国で大ヒットを記録したタイ映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』のバズ・プーンピリヤ監督による新作『プアン/友だちと呼ばせて』が8月5日に日本上陸する。製作総指揮を務めるのは、『恋する惑星』や『花様年華』など数々の名作を手がけたアジアの巨匠ウォン・カーウァイ。プーンピリヤ監督の才能に惚れ込み、「一緒に映画を作ろう」と自らオファーしたのだとか。カーウァイの助言を受け、監督が自身の経験を投影したという本作は、余命宣告を受けた青年ウードと元親友のボスを主軸に描くロードムービー。人生の終わりを前にしたウードが疎遠だったボスに運転手を依頼し、元恋人たちを訪れる旅に出るところから物語がスタートする。オーディションを勝ち抜いて主演に抜擢されたのは、タイのアカデミー賞でノミネートされた経験のあるトー・タナポップと、テレビシリーズで人気のアイス・ナッタラット。ここでは、元親友のために旅の運転手を引き受ける、ボス役のトー・タナポップにリモート取材を行った。

――『プアン/友だちと呼ばせて』の日本公開おめでとうございます。ボスは裕福な家庭に生まれながら、心に傷を負った複雑な役ですが、この作品のどのような部分に魅力を感じましたか?


トー・タナポップ(ボス役)「絶対に逃せない仕事だと思いました。それにはいくつか理由があるのですが、まずはプロデューサーがウォン・カーウァイさんだということ。長年にわたる映画界のレジェンドですし、とても良い機会だと思いました。また、バズ・プーンピリヤ監督は、タイの俳優にかなりリスペクトされている、才能豊かな監督です。脚本を初めて読んだとき、これを受けない理由はないと思い、絶対に受かりたいと思ってオーディションに挑みました」


――お二人からは、ボス役を演じる上でどのようなお話がありましたか? 


トー「特にリクエストはありませんでした。でも、本作のオーディションには、タイの芸能界のすべての俳優が受けたのではないかというくらい、たくさんの人が参加していたんです。僕は偶然、ウォン・カーウァイさんに選んでいただいた、ラッキーな人間の一人だと思っています」





――ボスは心に傷を抱えた難しい役で、ウードとも“元親友”という複雑な設定です。この役を演じるにあたって、最もチャレンジングだったことは何ですか? 


トー「ラッキーなことに、ボスとウードの関係は、僕とアイスさんの関係に似ていました。アイスさんは、役者になる前のモデル時代からの先輩だったので、関係を築くのはさほど難しくありませんでした。それに、僕もアイスさんもとても真剣に役作りをしていたので、問題なく演じることができました。ボスを演じる上でチャレンジングだったのは、観客がボスを観たときに『楽そうな人生を送っているな』と思わせること。それに、異なる時代のボスを演じなければならないのも大変でした。演じ分けて変化をつけなければならなかったので、まるで複数のキャラクターを演じているような気分でした」


――ニューヨークやタイのさまざまな都市が舞台となっていますが、ロケ中に印象に残っている思い出は?


トー:ニューヨークでの撮影中はアイスさんと同じ部屋に泊まっていたのですが、ボスとウードの関係と実際の僕らの関係が似ているなと実感しました。僕らはかつてすごく親しかったんです。本作ですごく久しぶりに再会して、再び毎日会うようになって、昔の思い出がよみがえってきました。僕がモデルを始めたばかりで、まだ何もできなかった頃、アイスさんは先輩として運動の仕方やモデルウォークなど、いろんなことを教えてくれたんです。撮影中はそんな過去の思い出がよみがえってきました」





――オフの日は一緒に出かけたりしましたか?


トー「そういう日もあったんですけど、すごく少なかったです。2人ともとても難しい役を演じていたので、外に出ることでキャラクターが抜け落ちてしまったら嫌だなと思っていました(笑)」


――人生についてたくさんのことを考えさせられる作品ですが、本作に出演したことによって、トーさんの死生観や人生観に変化はありましたか?


トー「かなり大きな影響を受けましたし、これからはより人生を充実させようと思いました。また、本作のおかげで、役者の道に進んだことは正しかったと実感できたんです。後悔しないためにも、さらに役者の道を歩んでいきたいと思いました。これからの人生への応援をもらったような気分です」





――ボスを演じた日々から得た一番大きなことは何ですか?


トー「役者になってからの僕の夢は、自分の演技や出演作をタイだけではなく世界中の人に見せることでした。この作品が海外で上映されることによって、夢に一歩近づけたと思っています。心に残る良い映画であることは間違いないので、ぜひ日本の皆さんにも観ていただきたいです」


――ウォン・カーワァイ監督は日本でもファンが多いですし、バズ監督の『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017)は、日本でタイの映画が大きく注目されるきっかけとなった作品の一つでもあります。日本公開を楽しみにしているファンも多いと思いますが、何か伝えたいことはありますか?


トー「『プアン/友だちと呼ばせて』が旅をして、皆さんに観ていただけることになりました。きっと気に入っていただけると思いますし、この映画は皆さんをすてきな旅に連れて行ってくれます。観たらきっと、人生の価値に思い至るはずです。とても愛すべきキャラなので、特にボスを応援してください(笑)」


――今後はどのような役者に成長していきたいですか?


トー「役をリアルに演じて、観客に実際の人物だと信じてもらえるような演技をしたいです。また、さまざまなタイプの演技ができるように、もっともっと演技が上手くなりたいので、努力を続けていきたいと思っています」





text nao machida



『プアン/友だちと呼ばせて』(原題:One For The Road)
公式HP:https://gaga.ne.jp/puan/
2022年8月5日(金)新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、渋谷シネクイントほか全国順次ロードショー
監督:バズ・プーンピリヤ
出演:トー・タナポップ、アイス・ナッタラット、プローイ・ホーワン、ヌン・シラパン、
   ヴィオーレット・ウォーティア AND オークベープ・チュティモン
配給:ギャガ
Twitter:@puan_movie
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【ストーリー】
NYでバーを経営するボスのもとに、バンコクで暮らすウードから数年ぶりに電話が入る。ガンで余命宣告を受けたので、帰ってきてほしいというのだ。バンコクに戻ったボスが頼まれたのは、元恋人たちを訪ねる旅の運転手。カーステレオから流れる思い出の曲が、二人がまだ親友だったころの記憶を呼び覚ます。忘れられなかった恋への心残りに決着をつけたウードをボスがオリジナルカクテルで祝い、旅を仕上げるはずだった。だが、ウードがボスの過去も未来も書き換える<ある秘密>を打ち明ける―。

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