「単なるデジタル化」ではない DXとは結局何なのか?
近年メディアでよく目にする「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」という言葉は、「デジタル技術によって人の生活や企業活動をより良い方向に変えていくこと」を指す。
ただ、この定義は漠然としている。「より良い方向に変える」とは一体どういうことか。どうすれば変わるのか。
はっきりしているのは、DXとは単なる「デジタル化」ではない点だ。真のDXとその恩恵について『DXで会社が変わる』(幻冬舎刊)の著者・竹本雄一氏にお話をうかがった。今回はその後編である。
■DXは「単なるデジタル化」ではない
――「DXとは何なのか」という根本のところが、日本では今のところ曖昧になっている印象があります。この点につきまして竹本さんのお考えをお聞かせいただければと思います。
竹本:いろいろな考え方があると思うのですが、よく言われるのは「アナログをデジタルにするのがDXではない」ということです。DXは決して単なる「デジタル化」ではない。
本では「ソリューション=リレーション」と書かせていただきました。つまりあるデジタル化した作業を次の作業にリレーできなければ作業の効率化にはなっていない、ということです。RPAにしても、導入するからには業務を可視化して属人化させないように、誰がやってもできるようにしないといけません。
その業務が次の業務に自動的につながる、もしくは誰しもがその流れに乗れる「リレーション」が必要です。
――企業がDXを導入した際の成功事例と失敗事例をご存じの範囲で教えていただければと思います。
竹本:ある大手自動車メーカーのディーラーの例なのですが、これまで車検というとディーラー側が各ユーザーの車検の時期に合わせて電話をして日取りを決めていましたよね。でも今はみんなスマホを持っていますから、そのディーラーは車検や点検の予約をLINEでできるようにしたんです。裏では、LINEと自社の車検システムの連携をしたはずですが、これも一つのDXですよね。電話をかけて日取りを決めるよりも効率的です。
――失敗例もお聞きしたいです。
竹本:ある学習塾のRPAで、5人いる先生が一週間でどれだけ授業をしたかというのを自動的に計算するようにした事例があります。実はこれは我々が手がけたことなのですが、学習塾の目的は子どもたちがどれだけ点数が上がったかじゃないですか。その意味ではあまり意味のない施策だったのかなと思います。データの活かし方が悪かったといいますか、目的をまちがえたデジタル化だったと思います。
――何を達成するかという「目的」の設定をまちがえると、DXもまちがった方向に進んでしまう、ということですね。
竹本:そうです。世の中のものって、方程式があればデジタル化、自動化は可能なのですが、「何を求めたデジタル化・自動化なのか」を見誤った結果、変な方向に行ってしまったケースはたくさんあると思います。
――書類のデジタル化から、決済のキャッシュレス化、単純作業のロボット化まで、DXはかなり幅の広い概念です。企業がDXを推進していくにあたって、どこから手をつければいいかわからないこともあるかもしれません。これからDXを取り入れる会社にアドバイスをいただければと思います。
竹本:単純作業であればあるほど、それをもし人的作業で行なっているのであればデジタル化するというのが一番早いのではないでしょうか。たとえば手元にある集計表をExcelに転記するような作業は意外とまだあって、それを人間がやると必ずどこかでミスが出ます。
これはRPAですぐにデジタル化できますし、デジタル化することで、違うシステムにデータを渡しやすくなる。先ほどのお話であった「リレーション」が生まれるわけです。
――またDXを推進することで企業には業務効率化や生産性向上、新たなビジネスの創出など様々なメリットがあるとされています。このメリットを最大化させるためには何が必要なのかについて、考えをお聞かせいただければと思います。
竹本:極力業務を可視化することでしょうね。もう一つはその業務が次に何に役立つかという「リレーション」を考えることです・
「リレーション」を考えることによって、それぞれの業務がどんな人、どんな部署と関わっているのかがわかってきますし、DXでどこを効率化すれば次の人が楽なのかもわかってきます。それによって組織全体がDXの恩恵を享受できるようになると思います。
――最後に、本書の読者となる企業経営者やDX導入に関わる部署の方々にメッセージをいただければと思います。
竹本:本の帯にもあるのですが、地方だからといってDXを諦める必要はありません。逆に地方が有利なこともたくさんありますので。自分が置かれているロケーションや能力に合わせてDXを導入してみていただければと思います。
(新刊JP編集部)
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