第98回 父の日に改めて観たい『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』

第98回 父の日に改めて観たい『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』

I am your father(私がお前の父親なのだ)とてもシンプルなフレーズですが、これは映画史に残る名セリフの1つ。そう『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』のクライマックスで、悪のダース・ベイダーが主人公ルークの父親であることを明かす衝撃シーンのセリフ。実際、「最も有名な映画のセリフはなにか?」みたいな時にMay the Force be with you!(フォースのお守りあれ!)と並んで、スター・ウォーズからはこの台詞が選ばれることがあります。

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かくいう僕も『帝国の逆襲』を日本公開の初日(1980年の6月28日)に観に行って、ベイダーのこの告白に心底ビックリした覚えがあります。というのも本シリーズの公開1作目となる『スター・ウォーズ(後に『新たなる希望』と副題がつく)』は全米公開が1977年5月、日本公開は1年遅れの1978年6月でした。従って丸々1年のブランクがありました。その間、海外からどんどん情報は入ってくるし、それを受け日本のメディアも特集とか紹介をずっとし続けていた。映画を観る前にほとんどその内容は知っていた状態なんですね。事前にすべてわかっている話を映画館で確認に行くという感じ。それでも当時はWEBとか動画サイト、それどころかレンタルビデオ等もないから、映像が流出するということはなく、話は知っていても映画館で噂のシーンを観る楽しみはありました。しかし公開2作目の『帝国の逆襲』はほぼ日米同タイミングでの公開。事前情報にほとんど触れず観に行くことができた。だからこそ、このサプライズ・シーンに心から「ええ!!」となってしまったわけです。特にこのセリフの直前にベイダーによってルークの手首が斬り落とされる、というショッキングな描写もありましたから、余計印象に残っています。

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そしてこのセリフ以降、スター・ウォーズというのは家族ドラマとしての顔つきをし始めたのではないか? 正直『スター・ウォーズ』の時はルークとダース・ベイダーの絡みというのはあまりなかったような気がします。あの作品においてルークの父的存在はオビ=ワン・ケノービであり、ダース・ベイダーは純粋に悪役として目立っていました。公開1作目は正義=反乱軍、悪=帝国軍の戦いをストレートに楽しむ宇宙活劇だったかもしれません。しかし『帝国の逆襲』でベイダーとルークの関係がわかると、スター・ウォーズは反乱軍が帝国をどうやっつけるか?だけではなくこの父と子の関係がどうなるか?がドラマの重要なポイントになってきます。そしてダース・ベイダー自体も、かっこいい悪役であると同時に共感すべき(愛すべき)キャラへと変化していきます。「映画に登場する最も魅力的なヴィランは誰か?」的なアンケートをやるとダース・ベイダーはいつもランクインする常連ですが、「映画に登場する最も印象的な父親は誰か?」でもベイダーは選ばれることがあります。ちなみにジェフリー・ブラウンという人が本家公認の2次創作的絵本『ダース・ヴェイダーとルーク(4才)』を出版して話題になりました。(この絵本ではヴェイダー表記です)。ここでは2人が楽しい父子時代を過ごしていたらという設定でスター・ウォーズの世界を語る楽しい絵本になっています。

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英雄神話において主人公が父親を超えていくというのは王道のパターンでもあり、スター・ウォーズの作者であるジョージ・ルーカスがこの要素をとりいれたのは当然でしょうか。しかしルークの場合、父親を倒し真の英雄になったというよりは父親として目覚めさせたという方が正しいかもしれません。公開3作目にあたる『スター・ウォーズ ジェダイの帰還(初公開時のタイトル:ジェダイの復讐)』のクライマックスで、銀河皇帝にルークは殺されそうになります。ルークはベイダーに助けを求めます。その時のセリフはFather,,,Please help me(父さん、お願い、助けて)なんです。初めてこのシーンを観た時に、ヒーローが父親に助けを求めるなんて不甲斐ないと思いました(ルーク、ごめんなさい!)。せめて「あなたはジェダイです!ジェダイに戻って!」的なことを言って欲しかった。しかし、このシーン、後で見直した時にすごくいいシーンなんですね。ルークが息子として父に甘える最初で最後のシーンであり、この時のベイダーの顔が苦しむ我が子をみて苦悩する・動揺する父親としての顔なんです。仮面で表情は見えないハズなのにそれがちゃんとわかる。そしてベイダーから悪のカリスマ臭が消えているのです。ベイダーはジェダイに戻ったから皇帝を倒したのではない。父親として目覚めたから愛する息子を傷つける皇帝に立ち向かったのだ。このシーン、親への反抗期の時に観るのと父親の立場になってから見直すのでは全く印象が違います。父の日に銀河最大のお騒がせ父子の物語をもう一度楽しんでみてはいかがでしょうか?

(文/杉山すぴ豊)

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『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』
『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』
『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』
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