巡洋艦『モスクワ』沈没海域で作戦行動中!? 110歳・現役最古の海軍艦艇『コムーナ』の数奇な艦歴

ロシアによるウクライナ侵攻の中でも、2022年4月13日にスラヴァ級巡洋艦『モスクワ』が沈没したことは大きな衝撃を与えました。ウクライナはミサイル『ネプチューン』による攻撃によるものとしていますが、ロシア側は弾薬の爆発による火災が発生し、曳航中に沈没したと発表しています。

この『モスクワ』沈没に関して、喪失した海域に向けてロシア黒海艦隊に所属する潜水艦救難艦『コムーナ(Коммуна)』が派遣されたと見られています。この『コムーナ』は1912年に起工されており、2022年現在では全世界で運用されている海軍艦艇の中で最古の艦です。

帝政ロシア時代に竣工した時は『ヴォルホフ』という名前だったこの艦は、潜水母艦としてバルチック艦隊に就役。ロシア軍艦で初めて採用された双胴船で、1917年にはオーランド諸島沖で沈んだ潜水艦の引き上げに成功しています。その後、ロシア革命を経て、1922年に艦名を「コミューン」を意味する『コムーナ』へ変更されます。

第二次世界大戦時にはレニングラード(現・サンクトペテルブルク)を拠点として活動。沈没した艦の引き上げのほか、凍結中の湖を移動中に沈んだ車両の回収に従事しています。この活躍により、レニングラード包囲戦の終結後に『コムーナ』乗員全員に、レニングラード防衛記章が授けられたといいます。

1954年にはオランダ製の機関に換装され、1967年には黒海艦隊へと移籍。数々の墜落した戦闘機の捜索活動に参加しています。1984年に一度はロシア科学アカデミーへの移管のため係船されますが、ソビエト連邦の崩壊の混乱を経て、1999年に潜水艦救難艦として再就役。2009年10月には、イギリス製の深海救難艇パンテラ・プラスが搭載されたことにより、水深1000メートルまで捜索が可能です。

満載排水量が3100トンの『コムーナ』が、11300トンの『モスクワ』を引き上げることは難しそうですが、『モスクワ』が沈没していると見られる海域は水深50〜60mなので、その調査やミサイルの回収などの任務だった場合、十分に能力を発揮できるのかもしれません。

現在までに引き揚げた艦船は150隻以上と言われる『コムーナ』。ロシア黒海艦隊の作戦行動は『モスクワ』の沈没により、かなり制限されると見られますが、ロシア革命と第二次世界大戦、そしてソビエト連邦の崩壊を経て、なお現役の艦の動向には今後も注目が集まることになりそうです。

※画像はTwitterより
https://twitter.com/CovertShores/status/1517518693055578113 [リンク]

  1. HOME
  2. 政治・経済・社会
  3. 巡洋艦『モスクワ』沈没海域で作戦行動中!? 110歳・現役最古の海軍艦艇『コムーナ』の数奇な艦歴

ふじいりょう

乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。

ウェブサイト: https://note.com/parsleymood

TwitterID: ryofujii_gn

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。