ジミー大西さんインタビュー「お笑いは客観。アートは主観」30年分のジミー作品がすべて観られる全国巡回展『POP OUT』スタート!
お笑い芸人であり、その強烈な個性から新たな表現者としての顔も持つジミー大西さん。彼は、とあるきっかけから画家としての活動をはじめ、2022年で画業30年を迎えました。
2015年から5年間の休筆を経て開催される今回の作品展は10年ぶり。新旧、およそ100点の作品展示が全国9か所を1年以上かけて巡回する予定となっています。
作品展の名前は『POP OUT』。その表現の枠を“飛び出す”新たなステージについて、ご本人からお話を伺いました。
ジミー大西から見た「お笑い」と「アート」の“視点”
―よろしくお願いします。今日お話うかがうにあたって、『ドキュメンタル』のジミーさん出演回を見返しながら、何を聞こうか考えていました
ジミー大西さん(以下ジミー):あの時(シーズン2)は優勝するかと思ってたなあ。森三中の大島も「ジミーさん優勝するのちゃいますか?」って言うてくれてたもんな。でも、(優勝を)ちょっと逃したな。あれ逃したのあかんかったなぁー。
―たとえばあのドキュメンタルの時にしても、人を笑わせるための独特な衣装とか、ジミーさんがご自分でお作りになられたわけじゃないですか。かなりぶっ飛んだ衣装で、あれも今見ると「アートっぽいな」って思うんですけども、お笑い考えるときと絵を描く時って、頭使う部分は一緒ですか?
ジミー:いや! やっぱお笑いの方が難しいですね。お笑いを考えるのは難しいです。アートも難しいんですけども、お客さんの笑い声(を取らないといけないのは)……やっぱり難しいですね。
―お笑いでは、お客さんの目線とか笑い声ありきだとして、絵を描く時ってもう「自分が見てどう思うか」とか?
ジミー:もう主観ですね。お笑いはやっぱりちょっと客観。ピンの場合は主観で考えるとあかんし……まあ「やってるやってる」とかギャグで逃げるのも、ちょっと反則的なとこもありますからね。(それに対して)アートはやっぱり主観です。
さんま「ジミー、変な、ちょっと変わった絵を描くなあー」
―そのアートですが、33才くらいから本格的に絵をお描きになられてたと言う風に伺っています。絵自体は幼少のころから得意だったんでしょうか
ジミー:全く、上手くはなかったですね。今でも上手いとは思わないです。
小学校5年とかそんな時に、みんなで写生大会やった時なんですけど、みんなは煙突描いたり工場(こうば)描いたり、家描いたり、ちゃんとしてたんです。で、僕は空の雲がなんかゾウに見えたんで、ゾウ描いて。そしたらみんな「また大西ちゃうことやってる」言うてね。
でもそんとき先生は「もう大西くんはこれでいいです!」って(認めるようにキッパリと)言うてくれてね。それで絵を嫌いにならへんかった、っていうっていうのは大きなところですね。はい。
―写生大会のその経験があり、何十年経ってからも、絵に対していい記憶というか印象が残った
ジミー:まあまあ、嫌いになってなかった、っていうのが大きかったです。
あと、(さんまさんの娘の)IMALUちゃんが2歳か3歳―(幼稚園の)年少の時に、僕とふたりで、お遊びで絵描いているときがあったんです。家でふたりでお絵描き大会してたんですよ。さんまさんがそれ見て「ジミー、変な、ちょっと変わった絵を描くなあー」って言うて。
で「紳助、そんなん(番組)やってるから紳助に言うたるわ 」って。当時、オークションの番組があったんです。「そのかわり、オチで使うからなー、(その番組に出てくる絵は)みんな上手いからな」って事で、僕の絵を使ってもらったんです。
岡本太郎からの手紙
―さんまさんの気づきと思わぬ流れから、紳助さんの番組で絵が使われることになったわけですね
ジミー:でも、オチで使ってもらったら、(思わぬ)高値がついて。ほんで、(岡本)太郎先生からFAXで手紙もろたんです。「キャンバスからハミ出しちゃえばいいんだ、もっと良くなるよ」っていただいて! 太郎先生からのあの手紙もらって、これがもうきっかけでしたね。
「人間として、働け」
―でも、ある時にちょっと絵を描くのをやめられた時期が
ジミー:そうですね、(2015年から)5年間。「えー、こんだけ必死で描いて時給(に換算したら)380円かあ」思うたら、なんか悲しくなってきて「もうやーめた」って。
吉本に言うたら、「わかった。そやったらタレント業やって、なんか仕事せんと、あかんで」って。
―いい会社ですね
ジミー:ええ会社ですよ。自由ですよ。でも(絵をやめたって言ってるのに)「絵、描き」と言えへんもんな。
―そんな絵をやめたジミーさんに対して、さんまさんが「コロナで仕事もない人も大勢いる」って一言があった、というエピソードは聞いたことがあります
ジミー:そうですね、「そんな状況なのに時給計算したらあかん」ちゅう。
「よう(売れている)“笑かし”のやつは、やっぱりそれだけの(お金を)もろうてるやろ。普通に笑かしてるやつはそれだけのもんやぞ」って。「一個も笑かさんやつはゼロやろ」って言われましたね。
あと、さんまさんに言われのたが、……何て言われたんやったかな…… 「お前、俺は福祉やないんやからな」って、言われたな。「働かなあかんねん」ってことを言われた。ストレートに「人間として、働け」て。
さんまさん、「何をどうして働くかは考えてったらええけども、俺もボランティアやないから、俺のところに来てお金(小遣い)渡すだけやったら、どうにもならんぞ」、と。
まあでも、小遣いはもろてますけどね(笑)。まだ58になって小遣いもろてますけど。でも「働け」と。
―(笑)
ジミー:だから「これ(絵)やめたい」って言うたら、「次の何かを働くもんを持って来い」と。「やめたかったら働く材料を自分で会社に言うて、それをアピールしながらやろ」って。
―まさしく、働かざる者、食うべからず、という
ジミー:例えば今回もこれ(POP OUT)にお客さんが入ってもらわないと「働いてないけ?」って(笑)。人入ってくれへんかったら、あかんわね(笑)。
たくさんお客さん入ってもらいたいです。
歳をとったからこその新たな“試み”も
―今までこういう形での展示って、そんなに何度もやってらっしゃらないです?
ジミー:最初は3年、5年に1回とか、そのくらいの(ペース)。でも、どんどんどんどん年取るせいと、間で5年休んでるから、今回は10年たっての開催です。
―10年ぶりの個展ということで、機会としてもすごく貴重ですね。あと、これお聞きしたかったことなんですが、僕、今50歳なんですね。で、今ジミーさんは58歳だと思うんですけど、若い時と比べてなんかできることとか、ちょっとずつなんか減ってきた感じって、ありませんか?
ジミー:減ってきますね! どんどんどんどん(力が)落ちてくるし。
―今回も、創作で作り方が変わった部分とか結構ありますか?
ジミー:そうですね。やっぱり時間はなお、かかるようになってしまいました。だから、もうこうなったら、(逆に)キャンバスからイチから作っていこうと思って。
―ええっ?!
ジミー:あの、ホンマは僕、(描くときは)板なんです。板から石粉(せきふん)やって、すって、またヤスリ入れて、そっから模様を作っていくっていう形を取ってきてるんですけど。
―むしろ、キャンバスから見直しをかけたんですね……。あと今回の『POP OUT』では、放送作家の高須光聖さんとご一緒に企画をやると伺ってます
ジミー:それこそ『POP OUT』という(タイトルにちなみ)、「筆を使わないでアートができんじゃないか」というところで準備中です。
―高須さんとはこれまでも色々?
ジミー:高須さんとは、色々な番組でネタを作ってきたやつを見てもらったり、ネタの相談はようしてますね。
―今回のこのパフォーマンスも含めて、ここに来なきゃ観られないアートは、たくさんあるわけですよね
ジミー:そうですね。もうだいぶ、ありますね。やっぱり、写真で見るのと本物見るのとでは、やっぱ全然ちゃいます。また、額はお金かかってるからすごいね!
―額も?!
ジミー:額も含めて(笑)
『POP OUT』来てくださいッ!
―アートにおける“本物”をナマで観られるのって、全然違いますよね
ジミー:ぜひとも現場に来ていただきたいなと思ってます。
―最後に『POP OUT』を楽しみにしてる読者の皆さんに、ジミーさんからメッセージいただけますか?
ジミー:新作も出てます。喋らなくても笑わなくてもいける“アート”って、この時期にもってこいじゃないですか? みなさん、是非『POP OUT』見に来てくださいッ!
―ありがとうございました!
強烈な個性をナマで体感できる貴重な機会
ジミー大西 画業30年記念 作品展『POP OUT』は、2022年4月27日東京・銀座三越での開催を皮切りに、静岡、埼玉、新潟、北海道、広島、愛知、福岡、大阪をめぐります。
ジミー大西さんの初期作から最新作まで、まるまる30年を網羅する内容となっています。
展示構成/制作年代ごとに展示区画を分け、5つの区間で展示空間を構成
1993~1995 デビュー~初期作品
1996~1999 芸能活動を休業~スペイン移住期
2000~2007 多様な創作活動の展開期
2008~2015 世界中を放浪~マルタ島移住期
2020~現在 創作活動の再開から現在まで
何にも似ていない強烈な個性、ぜひ、足を運んで体験してみてください。
■ジミー大西 画業30年記念 作品展『POP OUT』開催スケジュール:
01[東京]銀座三越 2022年4月27日~5月9日
02[静岡]静岡伊勢丹 2022年7月20日~8月1日
03[埼玉]浦和伊勢丹 2022年8月3日~8月15日
04[新潟]新潟伊勢丹 2022年8月17日~8月24日
05[北海道]札幌三越 2022年2022年9月7日~9月25日
06[広島]広島三越 2022年10月4日~10月16日
07[愛知]ジェイアール名古屋タカシマヤ 2022年12月23日~2023年1月8日
08[福岡]福岡三越 2023年4月1日~4月17日
09[大阪]阪急うめだ本店 2023年 6月ごろ開催企画中
※開催会場は追加予定あり。詳細・最新情報はホームページよりご確認ください。
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