笠松将インタビュー「今まで知らなかったことに気づくが大きなテーマ」 主演作『リング・ワンダリング』公開

初長編監督作『アルビノの木』が海外映画祭で20の賞を獲得して注目を集めた金子雅和監督の最新作、『リング・ワンダリング』が公開となります。漫画家志望の青年が不思議な娘と出会い、東京の眠る記憶を知る――過去と現在が交差する切なく幻想的な物語で、自然と人間の関係性を描いてきた金子監督が、初めて東京を舞台に街や人々の記憶と対峙した意欲作です。

その漫画家志望の青年・草介を、近年NHKの大河ドラマや現在放送中のドラマ「ムチャブリ!わたしが社長になるなんて」でも強烈なインパクトを残している若手俳優・笠松将さんが演じています。本作では、ふわふわと地に足のつかない現代の若者のリアルを丁寧に表現されていますが、どのような撮影だったのか。お話をうかがいました。

■公式サイト:https://ringwandering.com/ [リンク]

●まず脚本を受け取った時、どのような感想をお持ちになりましたか?

何よりも映画のオファーをいただいたことがまずうれしかったです。しかも金子監督が『花と雨』という僕の主演作品を観てオファーをくださったので、本当にありがたく思いました。監督の作品も何作品か拝見させていただいて、監督とならきっといいものが作れると、とても前向きな気持ちになったことを覚えています。

●それは具体的にはどういうことでしょうか?

僕が感じた監督の凄さというのは、自然の切り取り方が本当に美しいということと、作品そのものがすごく優しいと感じられること。観る人の心が温かくなるようなものなんです。僕は自分が作品に参加することで、そこへの化学反応と言うか、新しいスパイスのような役割になれるかもしれないと思ったんです。ただ当時は、そこまでしっかりと意識していたわけではないのですが、そういう思いは根底にあって参加していたという感じですね。

●笠松さんの演じる主人公・草介とはどのようなキャラクターですか?

草介は僕に近いのかなと思います。それはたとえば、偏屈さや、こだわりの強さ、それにある種のストイックさに関してもそうです。そんな人間でも、ふとしたきっかけで他者にすごく優しくなれるのも、「分かるなあ」と思っていました。この物語の中で新しい価値観に触れていく草介は、ごく一般的な人間だと思います。彼はある種、『リング・ワンダリング』に触れる観客の方々を代表するような役だと思いますね。

●おっしゃるように主人公の体験に自己を重ね合わせる人もいるかと思います。

この作品は、今まで知らなかったことに気づくということが大きなテーマだと僕は思っていて、きっと僕たちは何も知らないまま生きている。世間で当たり前に流行っていたりすることや時代的な価値観や正義を、僕たちは無意識に押し付け合っていることもあるけれど、それだけではない、いろいろなことに気づかなければいけない、そう教えてくれる映画なのかなって。

●そのメッセージをご自身でも受け取りましたか?

そうですね。みなさん、僕も含めて何かがあれば変われるじゃないですか。主人公の草介にとっては何かがあればと思っている時に、たまたま出会った女の子がその何かだったんですよね。阿部純子さん演じるミドリという女の子が出てくるのですが、そういうきっかけは常に僕たちの生活にもあることだし、ファンタジーと言うけれど、全然そんなことはないんです。

●撮影現場の様子はいかがでしたか?

金子監督もとにかく優しい方なんですよ。阿部さんも本当に一生懸命にお芝居に向き合っていて、パワーをすごくもらいました。みんなでいろいろ話し合いながら作っていて、斜に構えてるほうがが恥ずかしくなるくらいの雰囲気でした。その空気は映像に出ていると思います。本当に優しい作品になりました。

●撮影も編集もとても丁寧な印象でした。

撮影自体は2月くらいの真冬に撮っていたんです。でも監督がその前の夏に、いろいろな花火大会に行って花火を撮っていらしたそうで。花火はあることを象徴しているわけですが、そういうところへのこだわりを惜しまないんです。とことん納得のいく風景を追求して探しに行く。そういう意味でも作品に真摯だし、優しいなと思いますね。この作品への愛がすごい方なんです。

●今日はありがとうございました。映画を待っている方たちへ一言お願いします。

この大変な時期は、まだまだ続くと思うんです。そんななかこの映画は、すごくたくさんのことを気づかせてくれると思うので、機会があればぜひこの作品を観てほしいです。

■ストーリー

漫画家を目指す草介は、絶滅したニホンオオカミを題材に漫画を描いているが、肝心のオオカミをうまく形にできず前に進めない。そんなある日、バイト先の工事現場で、逃げ出した犬を探す不思議な娘・ミドリと出会う。転倒しケガをしたミドリを、彼女の家族が営む写真館まで送り届けるが、そこはいつも見る東京の風景とは違っていた…。

キャスト
笠松将 阿部純子 片岡礼子 品川徹 田中要次 安田顕 長谷川初範

監督:金子雅和
脚本:金子雅和 吉村元希
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
製作: リング・ワンダリング製作委員会
(2021年/日本/カラー/5.1ch/1:1.85 /DCP /103分) 映倫区分G

(C) 2021 リング・ワンダリング製作委員会

公開中

執筆者: ときたたかし
撮影:宮坂恵津子

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