映画『ホテルアイリス』台湾の注目女優・陸夏(ルシア)インタビュー「人間の根源なる渇望をめぐる物語」
芥川賞作家・小川洋子の原作を、『黒四角』の奥原浩志監督が圧倒的な映像美で映画化。日台合作映画『ホテルアイリス』が2月18日より公開となりました。
寂れた海沿いのリゾート地で、日本人の母親が経営するホテル・アイリスを手伝うマリ。嵐の夜、階上に響き渡る悲鳴を聞く。女に暴力と罵声を浴びせ立ち去る男に衝撃をうけながらも、激しく惹かれていく彼女は、やがて男が住む離れ小島へ導かれ、ふたりだけの禁断の世界にのめり込んでいく….。
主演は、日本を代表する国際的俳優・永瀬正敏さん。ジム・ジャームッシュや相米慎二はじめ数々の名匠の作品に出演してきた彼が、本作では大人の男の色気を纏うミステリアスなロシア文学翻訳者を演じます。マリ役には、本国でモデルやテレビCMで活躍している台湾のアップカミングスター・陸夏(ルシア)さんが 、映画初出演にして主演という大役を射止めています。
複雑なヒロインを可憐に、そして大胆に演じた彼女は、台北映画祭にて次代を担う期待の新人に贈られる「超新人賞」にも選出。今後の期待が活躍される、陸夏(ルシア)さんにオンラインインタビューを行いました。
――本作、大変ミステリアスで美しい映画でした。陸夏(ルシア)さんの存在感も素晴らしかったです。まずはこの作品への第一印象を教えてください。
一言で表現するのは本当に難しい作品だと思います。魅力的な作品であることは、私が言うまでも無いのですが、私の個人的な解釈では、「人間の根源なる渇望」をめぐる物語と感じています。
――「人間の根源なる渇望」おっしゃるとおりですね。観客に問いかけてくる作品だと感じました。
「ホテルアイリス」のテーマの一つが、“自分とは何か?”ということだと思うんですね。誰しもが自分自答してきたことだと思います。自分という事に悩みを抱えていたり、自分の理想を追い求めている段階の方におすすめ出来る作品だと思います。でも、映画というのはオープンで、たくさんの方に観てもらえるものですから、そういった悩みを抱えていない方であっても映像美やこの唯一無二のストーリーを楽しんでいただきたいです。
――映画初出演での緊張はありませんでしたか?映画に参加されて楽しかったことや驚いたことがあれば教えてください。
2018年の1月にモデル業をスタートさせて、ありがたいことに4月頃から色々な撮影のお仕事をいただく様になりました。モデルのお仕事と同時に、広告やMVのオーディションにも参加する様になり、6月にはこの映画のオーディションに参加していました。なので、人前に出る仕事を始めて割とすぐに映画に参加することになったのです。
モデルというのは、お洋服であったり、化粧品が主役なのであって、自分というものは一歩引いて馴染む必要があると思います。モデルというものは自我を押し出す必要は無い。女優というのは役柄に馴染むことはもちろんですが、自分という色を出す必要がある。そこが面白い違いだと思いました。
――ラブシーンなど、挑戦的なシーンも多かったと思います。
オーディションを受けて正式に役が決まった後、撮影を挑む前に、どこまでの肌の露出があるのかということを細かく打ち合わせしました。なので、現場に行ってから、何か困ったことがあったり、緊張してしまうということはありませんでした。何より相手役の永瀬正敏さんがとてもベテランの俳優さんでいらっしゃるので、永瀬さんのおかげでリラックスして撮影をすることが出来ました。本当にありがたかったです。
――永瀬さんとご一緒して影響を受けたことなどはありますでしょうか?
永瀬さんとお仕事をして一番学べたことは、「自分の演技はもちろん、相手の演技を引き立ててくれる」ことの素晴らしさです。私の様な新人に、色々教えてくれるだけでなく、「どのアングルが一番美しく見えるか」といったことを配慮して動いてくださりました。
予告編に映っているシーンの一つで、窓辺にもたれかかかっている私の頬に、永瀬さんの手が触れるという部分があるのですが、私の顔が綺麗に映る様に、永瀬さんは手の動きを変えてくださっていて。その場で咄嗟にそういった動きを出来るということが、素晴らしい俳優さんである理由の一つなのだと感動しました。
――YesかNoで答えられる質問では無いかもしれませんが、陸夏(ルシア)さんから見て「マリ」は幸せだと思いますか?
とても面白い質問だと思います。撮影中は、その場その場を乗り切ることに精一杯で、ストーリーをしっかり噛み砕いて臨めたかというとそうでは無いのですが、改めてすごいお話だなと思います。虚実ない混ぜに進んでいくストーリーで、観客の方達はそこが不思議であり面白く感じていただける部分だと思います。演じている私自身は、(映画の中で)起こっていることは全て現実なのだと思って演じていました。
映画の結末も、明るい兆しを感じることが出来て、私は、マリにとってハッピーエンドと言えるのではないかなと感じました。登場人物たちが最終的には何かから解放されたり、呪縛から解きはなたれたと思ったので。そういう意味で良い終わりだと感じました。
――今のお言葉を聞いて、またこの映画を観たくなりました。陸夏(ルシア)さんは今後どの様な作品に挑戦していきたいですか?憧れの監督さんがいらっしゃれば教えてくださいませ。
今お伝えきれないほどたくさん好きな監督さんがいるのですが…。台湾の監督でいうと、たまたま「ゴールデン・ホース・アワード」(金馬奨)の交流会でアン・リー監督でお話する機会がありました。ただいちファンとして、とても光栄で、素晴らしい経験となりました。アン・リー監督の作品にはかなり影響を受けています。日本の監督で言えば、濱口竜介監督の作品が大好きです。もし、幸運にもご一緒することが出来たら3日は興奮して眠れないと思います(笑)。
――私も濱口監督作品が好きなので嬉しいです。これからも陸夏(ルシア)さんの活躍を楽しみにしております。今日はありがとうございました!
陸夏(ルシア)さん
映画『ホテルアイリス』
新宿ピカデリー/ヒューマントラストシネマ渋谷/シネ・リーブル池袋/名古屋センチュリーシネマ他で公開中
監督・脚本:奥原浩志
原作:小川洋子「ホテル・アイリス」(幻冬舎文庫)
出演:永瀬正敏、陸夏(ルシア)、菜葉菜、寛一郎、大島葉子、マー・ジーシアン、パオ・ジョンファン、リー・カンション
配給:リアリーライクフィルムズ+長谷工作室
(C)長谷工作室
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