高齢者と障がい者で異なる外出支援。現状の制度では不備がある?

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高齢者と障がい者で異なる外出支援。現状の制度では不備がある?

【科目】介護✕在宅介護  【テーマ】高齢者と障がい者との比較でみる外出支援サービスの現状

【目次】
介護保険サービスで利用できる移動支援介護保険外サービスで行われる買い物支援障がい者の移動支援は高齢者よりも対象範囲が広い65歳以上の「壁」は本当に必要か?

千葉県の地域包括支援センターに、社会福祉士として勤務する藤野です。

今回は、高齢者や障がい者が地域で生活を続けるために、必要な移動の支援について考えていきたいと思います。

介護保険サービスで利用できる移動支援

私たちが担当する地域は、過疎高齢化が進み、高齢化率は47%を超えています。

歩いて行ける範囲に小売店や病院がある人は少数です。運転免許証を返納した場合、必要最低限の食料品などを買う機会や、通院すらできなくなってしまう人がいます。

そこで、地域住民が主体となって、安価で通院や買い物を支援する団体を創設したり、地域の医師による往診でカバーしたりといった対応が取られています。

介護保険サービスでも、買い物や通院をする方法はあります。しかし、その場合はヘルパーに必要な物品を頼んで買ってきてもらうスタイルで、自身で小売店に行って直接選ぶことができません。ヘルパーの運転で小売店に一緒に行って、買い物に出かけるといったことができないのです。

例外的に、ヘルパーとともに歩いて小売店に出向き、手の届かない商品を取ってもらったり、会計の支援を受けたりすることは可能です。しかし、前述の通り、過疎高齢化地域においては歩いて行ける範囲に小売店など、ほとんどありません。

また、通院に関しては、介護保険の通院乗降が利用できます。要支援の高齢者は、介護保険外サービスになりますが、介護タクシーを利用して通院することも可能です。

しかし、院内の介助はサービスに基本的に含まれていませんので、認知機能に支障が出始めていたり、歩行がおぼつかなくなっていたりする人は大変です。特に、総合病院での検査など、高齢者は次にどこに行ったら良いのかわからなくなってしまったり、広い病院内の移動ができなかったりと困る人も少なくありません。

介護保険サービスで利用できる移動支援には制限がある

介護保険外サービスで行われる買い物支援

私たちの市では、運転のできない対象者にタクシーの割引券を配布するなどの対応をしていますが、介護タクシーも一般のタクシーも慢性的に人材が不足しています。過疎高齢化で人がいなくなった地域では商売が成り立たないので、民間企業の助けにも限界があるのです。

住民が行政の補助金を受けながらつくり出した移動支援の団体も、これから先もっと高齢化が進んで住民がいなくなれば、担い手がいなくなってしまう可能性もあります。

現在、介護保険制度では、買い物支援はお世辞にも充実しているとはいえません。しかし、近い将来必ず必要になるサービスであることは明白です。私は買い物支援も制度に組み込む必要があると考えています。

「自分の目で見て選択して買い物をする」「車や公共交通機関を利用して自由に買い物に出かける」など、若い世代には何でもないことが高齢者にとっては一大事になります。

車の運転や公共交通機関を利用できなくなると、途端に外出の機会や他者との交流の機会が減ります。社会参加も制限されるので、他者との交流の機会もまた減るでしょう。生活環境は認知機能を低下させる重大な要因となります。

障がい者の移動支援は高齢者よりも対象範囲が広い

一方、障がい者の移動支援はどうなっているのでしょうか。

自治体によって支給量などが設定される移動支援事業や、視覚障がい者に対する同行援護、知的・精神障がい者に対する行動援護などのサービスがあります。特に、移動支援事業に関しては、社会生活を営むうえで必要不可欠な外出、余暇活動などの外出の際の移動を支援するもので、小売店や百貨店での買い物に行くことや美術館、映画館、コンサート、観劇、カラオケ、余暇活動を行うこともできます。

障がい者が外出を認められる対象

【社会生活上必要不可欠なもの】

金融機関における手続き・相談社会生活一般で必要と考えられる外出商店、デパートでの買い物(趣味、嗜好に関するもの)結婚式、葬式、法事などの冠婚葬祭

※通院、官公庁(国・県・市の機関)での手続きや選挙の投票に係る外出は、居宅介護(通院などの介助)、重度訪問介護を利用することになります。また、介護保険対象者は、利用可能な介護保険による訪問介護(外出介助)が優先されます。

【余暇活動等社会参加を目的とするもの】

美術館、映画館、コンサート、観劇、カラオケなど体育館、トレーニングジム、プールなど理容院、美容院など

外出を認められない対象

【通年かつ長期にわたるもの】

通勤・通学、学童保育、障がい者施設への通所、学習塾、習い事日常的な食材などの買い物政治活動及び宗教活動に係るもの(選挙運動や布教活動)公的サービスを利用することがふさわしくないもの(競輪、競馬、競艇、パチンコ等のギャンブルや飲酒・遊興を目的としたもの)

上記にあるように、買い物に出かけることすらできない介護保険サービスとは大きな違いがあります。

障がい者に対する移動支援は充実

65歳以上の「壁」は本当に必要か?

障がいを持った人が65歳になったときはどうなるのでしょうか。基本的に65歳となった段階で、介護保険が優先されますが一定期間利用しているサービスで、介護保険では対応できないサービス、もしくはその地域にサービスがない場合などに限って継続して障がい者のサービスが利用できるようになっています。

障がいを持った人への施策では外出の機会や余暇活動、社会参画を目的とした移動支援が設定されています。

一方、全国の身体障がい者手帳の保持者の約72%が65歳以上です。もちろん先天性の障がいを持った人が高齢者となったパターンもありますが、脳血管障がいなどの疾病によって、高齢となってから障がい者手帳を所持した人もいます。

障がい者手帳を持つ高齢者のうち、障がい福祉サービスから利用を開始した高齢者には、継続して障がい者サービスを利用できる権利があり、高齢となってから障がい者手帳を所持した人にはその権利がありません。

介護保険と障がい者施策のサービスの提供の違いには「障がい者には社会参加の機会を保障するが高齢者はダメ」と言っているのに等しいと感じざるを得ません。

こういった制度間の取り扱いの差は、65歳を迎えようとする障がい者の人にも不安を与えているようです。

高齢者も難聴が進み聴覚障がいを持つようになったり、白内障や緑内障による視力障がいを持つようになったり、変形性膝関節症や骨折によって移動に支障が出るようになったり、認知症の症状があらわれるようなれば、障がい者と変わらない支援が必要だと思うのです。

定年が65歳となろうとしている今、その後に残された時間は平均寿命の約85歳でも20年、人生100年時代で考えれば35年もあります。

健康で長く住み慣れた地域で生活をするためには、高齢者となっても、社会参画や余暇、買い物を楽しむ機会を保障していく体制について議論する時期に来たのではないでしょうか。

高齢者も障がい者も支援を必要としていることに変わりはありません。社会参画や余暇活動の支援を必要とする全世代に保障される日が来ることを望みます。

それは、まさに政府が提唱する全世代型社会保障の具現化だともいえるのではないでしょうか。また、私たちに与えられた退職後の時間を移動支援と言う事業の担い手として、移動手段を失った高齢者を支援しつつ、収入を得るという新たな選択肢(雇用)も創出することになるのではないかと思います。

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