65歳雇用義務化についてのまとめ

65歳雇用義務化についてのまとめ


今回は城繁幸さんのブログ『Joe’s Labo』からご寄稿いただきました。

65歳雇用義務化についてのまとめ

なぜか65歳雇用義務化についての取材が多いので、以下に論点をまとめておこう。
一々同じこと話すのはめんどくさいので、これ読んでまとめちゃってください。
(話聞きに来る場合でも最低限読んでおいて下さい)

65歳までの雇用が義務化される影響は何がありますか?

企業の人件費原資は一定なので、5年分の雇用が増えた分を誰かの人件費を削ることで対応しないといけません。
2011年経団連調査によると、38.4%の企業が新卒採用の削減で対応。
また、派遣社員や契約社員といった正社員以外を雇い止めし、高齢者に置き換えることで対応する企業も多いです。

それから、全体的にこれから企業に入ろうとする人も採用されにくくなります。
たとえば新卒学生の場合、従来は「こいつは60歳まで雇う価値があるか」を人事が判断していましたが、これからは「こいつは65歳まで~」となるわけで、それだけの価値のある人間だけが雇われることになります。

そして、人材がロックされることで、企業活動も制約されます。
今、政府の有識者会議で、人材の移動を活発化させ経済の新陳代謝を促進することが議論されていますが、新陳代謝どころか麻痺させるようなもんです。

要するに、世代間、男女間、雇用形態、能力といったすべての面で格差を拡大させる政策といえます。
ILO、OECD勧告に真っ向から歯向かう*1政策です。

*1:「僕が慶應義塾長とケンカしたわけ」 2012年11月04日 『Joe’s Labo』
http://jyoshige.livedoor.biz/archives/6046587.html

でも「高齢者のやる仕事と若者のやる仕事はかぶらない」という意見もありますが

仕事はかぶらないけど、人件費は同じ財布から出ているので、誰かを雇えば誰かを切るしかないです。
「パパのお小遣いと子供の塾の費用は全然関係ないじゃないか」というロジックは恐らくママには通じまい。

新卒求人倍率は1.27なんだから若者は贅沢言わなきゃ就職口はあるんじゃないですか?

じゃ高齢者も贅沢言わずに自分で再就職活動すればいいんじゃないですかね。

日本は人口減少が続くので、これからは65歳まで働ける社会をつくるべきでは?

65歳まで働ける社会と、特定の人間だけ65歳まで雇わせる社会はまったく別物ですね。

ついでに言うと、労働力不足対策としては「女性や高齢者も働きやすい流動的な労働市場を作ること」であって、一律で正社員65歳雇用義務化なんてやったら(現状では女性と若者ががはじき出されるわけだから)いっそう少子化が進んで逆効果でしょう。

65歳雇用義務化に賛成の論者が見当たらないのでどなたか推薦してください。

いないんだったら別に取り上げなくていいんじゃないですかね。
これだけ無料メディアが発達している昨今、うちは両論併記で中身には一切コミットしないというスタンスだと商売上がったりになるんじゃないですかね。

まああえて言えば、厚生労働省OBか慶應義塾長がおススメです。
他に本件に賛成する識者はまずいないはず。

じゃ、なんでそんなむちゃくちゃな法改正が通ったんですか?

年金財政が破たん寸前→ 〇支給開始年齢の引き上げ → 〇企業は65歳まで雇え
            ×年金支給額カット      ×高齢者は自分で職探せ
            ×増税or保険料引き上げ    

要はシルバー民主主義。

なぜ急に複数の政府の有識者会議で解雇規制の緩和が取り上げられ始めたんでしょうか?

それくらい、希望者全員65歳まで雇わせる法律は常軌を逸したものだから。
さすがに委員の皆さんも危機感抱いたんでしょう。

この人*2はどう思いますか?

*2:「高齢者雇用・・・まだまだ、社会の第一線で働いて頂きましょう!!!!」 2013年04月05日 『BLOGOS』
http://blogos.com/article/59557/?axis=g:0

ただのバカですね。

執筆: この記事は城繁幸さんのブログ『Joe’s Labo』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年04月11日時点のものです。

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