全国に拡大する訪問看護ステーション。設置数の地域格差が生じる理由

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全国に拡大する訪問看護ステーション。設置数の地域格差が生じる理由

【科目】介護✕リハビリ  【テーマ】訪問看護ステーションの設置数に地域格差がある理由

【目次】
訪問看護ステーションの地域格差地域格差が生じる3つの理由高齢者人口に差がある

こんにちは、YouTube「訪問リハ&訪問看護&介護保険【制度マニア】」の運営者であり、訪問看護ブログ「ビジケア訪問看護経営マガジン」の編集長、書籍『リハコネ式!訪問リハのためのルールブック【第二版】』著者の杉浦良介です。

昨今、在宅療養される高齢者が多くなり、在宅介護サービスの需要が高まっています。10年前の2011年には6,000弱であった訪問看護ステーションの数ですが、2021年の全国訪問看護事業協会による訪問看護ステーション数調査では、1万3,000を超える数になっています。一方、訪問看護ステーションの増加率に関しては地域格差が生じています。今回は、訪問看護ステーションについて私の考えをお話ししたいと思います。

訪問看護ステーションの地域格差

一般社団法人全国訪問看護事業協会の「令和3年度訪問看護ステーション数調査結果」によると、都道府県別の訪問看護ステーションの稼働数と過去2年間での増減数は下記の通りです。

訪問看護ステーションの稼働数と過去2年間での増減数【2021年4月1日現在】

1位:大阪府(1452)+222

2位:東京都(1315)+192

3位:愛知県(832)+135

4位:神奈川県(816)+103

5位:兵庫県(741)+84

6位:福岡県(671)+107

7位:埼玉県(560)+150

8位:北海道(542)+17

9位:千葉県(448)+64

10位:京都府(339)+29

……

38位:佐賀県(96)+19

39位:徳島県(94)-12

40位:島根県(90)-5

41位:福井県(88)-6

42位:富山県(82)+4

43位:山形県(76)+3

44位:高知県(74)+5

45位:秋田県(72)+1

46位:鳥取県(70)+5

47位:山梨県(60)+5

数が多い都道府県は増加率も大きく、数が少ない都道府県は増加率が小さい傾向にあります。

また、都心部の訪問看護ステーションは大規模化が進んでいます。東京には、たった一つの事業所で利用者数が2,600人を超え、看護師数120名以上、理学療法士等160名以上という大型の訪問看護ステーションもあるようです。

一方、訪問看護ステーションの数が一番少ない都道府県である山梨県では、最も利用者を抱えている訪問看護ステーションでさえ利用者数は130人程度です。(いずれも介護サービス情報公表システムの情報より)

訪問看護ステーションの数だけではなく、「請求数」や「利用者数」、「提供回数」「勤務者数」「保険給付額」にも地域格差があるように感じます。

訪問看護ステーションの設置数には地域格差がある

地域格差が生じる3つの理由

訪問看護ステーションの数に地域格差が生じる理由について、長年全国各地で在宅介護に触れてきた私の視点で、お話しさせていただきます。

1.看護師2.5人の確保が難しい

訪問看護ステーションを運営するためには、「保健師、看護師または准看護師が常勤換算で2.5以上となる員数うち1名は常勤」という人員基準があります。

都心部の訪問看護ステーションだと、利用者も多く、働く専門職も多いため、人員基準を満たしやすい傾向があります。一方、地方ですと訪問看護ステーションをつくるための最低限の看護師などが集まらないという問題があり、「立ち上げそのものが難しい」「立ち上げても事業所を続けていくのが難しい」という意見も多く聞かれます。

2.少人数の看護師では24時間対応が難しい

訪問看護ステーションは中・重度者であっても在宅生活が安心して送られるように支援するため、24時間対応をすることが国や利用者さんから求められています。

算定事業所は82.7%にもなる緊急時訪問看護加算ですが、利用者またはその家族などから電話などにより看護に関する意見を求められた場合に常時対応できる体制が必要です。

例えば、上述した最低限の人員基準である看護師等常勤換算2.5以上を満たしていたとしても、その人数で365日24時間対応することはとても難しいのではないでしょうか?

夜間帯に緊急の電話が鳴り、夜間に訪問看護を提供した場合、その次の日に同じように出勤することは体力的にも精神的にも大変厳しいと思います。利用者さんに安心した在宅生活を送っていただくためには最低限の人員基準を満たすだけでなく、夜間業務に対応できるだけの人員が必要なことがわかると思います。

3.都心部は多店舗経営している(さらに、サテライトも運営)

都心部は当然、訪問看護の対象者も多く、働く人も多いため一つの事業所をつくった後にそのノウハウを活かして、多店舗展開していく法人が多い印象があります。

同じ法人が運営している同じ名称の「訪問看護ステーション〇〇 △△」「訪問看護ステーション〇〇 ◇◇」といった訪問看護ステーションが多いことも、都心部に訪問看護ステーションが増加する理由の一つだと思います。

ほかの業界と同じように都心部の成長速度が早いという現象が、医療業界でもいえるのかもしれませんね。

さらに都心部はサテライト事業所も多いという特徴があります。2020年2月時点のサテライト事業所数は全国で1,328事業所あります。そのうち、東京都は303事業所、大阪府は268事業所となっています。効率よく運営するために、都市部はサテライトの事業所を設けて、拡大を図っていることがわかります。

サテライトとは、『利用者宅に近い場所からより効率的に訪問看護を提供するため、待機や道具の保管、着替え等を行う出張所等であって、一定の要件を満たすものについては、一体的な指定訪問看護の提供の単位として、従たる事業所(サテライト)を主たる事業所と含めて指定することが可能』な施設です。(引用:厚生労働省より)

サテライトは地方の田舎などに訪問看護ステーションをつくりやすくするための制度でもありますので、この制度を活用して訪問看護ステーションの地域格差が少なくなっていけば良いと考えます。

高齢者人口に差がある

訪問看護ステーションが大阪府や東京都、愛知県といった大都市部に多い理由は、高齢者の人口が多く、訪問看護の需要が多いという背景もあると思います。人口が多い地域にはスーパーマーケットも美容院、映画館、飲食店などが多いのと同様に、多くなることは当然のことだと思います。地域包括ケアシステム構築のためにも、必要な地域に必要なだけの訪問看護ステーションがバランスよくつくられ、その地域で在宅生活を送り続けたいという利用者さんが安心して生活できる環境が、構築できると良いのではないでしょうか。

今回は訪問看護ステーションの地域格差(稼働数と増加率)と都道府県ごとに、訪問看護ステーションの数に地域格差が生じる理由について私の考えをお話しさせていただきました。

訪問看護ステーションは増加に伴い、訪問看護の受給者数も増加しております。さらに各都道府県において地域格差が広がりを見せています。

しかし、このこと自体は問題ではないと思います。

各地域がその地域で暮らす人に対して、必要な人に必要なサービスを届けられるようにつくった結果がこの地域格差であるのであれば、それは地域包括ケアシステム構築の一端だと思います。

また、各地域で「訪問看護ステーションが必要だけど、足りない・つくることができない・提供する人がいない」などの問題に対しては、国からも支援をしてほしいですね。

例えば、もっと簡単に他の訪問看護ステーションと協同して24時間対応をできるようになったり、移動距離が長くなる地方ではもう少し特別地域加算の範囲を広げていただき加算を算定できるようになったら、大都市部以外にも訪問看護ステーションが増えるのではないかと思います。そして、現に行われているところもありますが、大都市部の訪問看護ステーションはもっと地方にも多店舗展開しても良いのではないでしょうか。

大都市の事業所が地方に展開すれば良い

これから在宅で生活を送る要介護者はますます増加していくことが予測されます。在宅で安心した生活を送るためにも、不利益が生じる地域格差はなるべく早く解消していきたいものですね。

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