介護のイライラが限界に達したときにおすすめしたい「思考と感情の解体」

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介護のイライラが限界に達したときにおすすめしたい「思考と感情の解体」

【科目】介護✕メンタル  【テーマ】介護でイライラしたときの感情マネジメント

【目次】
【事例】介護する母親と会うだけでイライラするように…ネガティブな気持ちの解体作業ポジティブな気持ちの解体作業で練習を

介護者メンタルケア協会代表、橋中今日子です。

介護にイライラはつきものです。しかし、イライラしてはいけないと抑え込んだ結果、些細なことをきっかけに爆発して怒鳴り、後悔する…。私の元にも、そんな声がたくさん届いています。

私自身も、その後悔を何度も経験してきました。たくさん失敗し、後悔しながら、感情マネジメントを効果的に実践できるようになりました。

感情マネジメントの中で、誰でもできて効果的なのが、ネガティブな気持ちを「考え」と「感情」に「解体(分解)」する方法です。

【事例】介護する母親と会うだけでイライラするように…

【50代男性会社員Hさんの事例】

認知症の母親(80代、要支援1)を一人で、在宅介護を続けているHさんのケースです。母親はほぼ自立しているものの、仕事中に些細なことで何度も電話をかけてきたり、「預金通帳がない!」といった探し物をしたりします。母親に連日付き合わされているHさんは、自分のペースで動けません。最近では、母親が落ち着いている状態でも、顔を見るだけでイライラするようになりました。

Hさんには、「ネガティブな気持ちの解体作業」を行ってもらいました。これは、感情マネジメントの最初のステップです。気持ちを「考え(思考)」と「感情」に解体することで、「自分に何が起きているのか(自己理解)」と、「自分の状態をありのまま受け入れる(自己受容)」ことが進みます。

同じことがぐるぐると頭の中で巡るときは、考え(思考)と感情が入りまじっている状態です。気持ちを整えるためには、考えと感情を分ける必要があります。具体的には、「母はひどい!」や「あれはありえない!」は考え(思考)、感情は「つらい、悲しい、混乱している」など心の状態を示すものです。

気持ちを整えると、具体的な改善行動が取れるようになります。Hさんも、ネガティブな気持ちの解体作業をした結果、具体的な行動を自然に思いつくことができました。

感情マネジメントで具体的な改善行動が取れるようになる

ネガティブな気持ちの解体作業

作業は、3つの順番で行います。もしイメージしにくい場合は、下記の「Hさんの結果」を参照しながらお読みください。

1.イライラする気持ちを「考え」と「感情」で視覚化する湧き上がる思いを、思いつくまま紙に20分ほどかけて書き出します。具体的には、苛立ちを感じたときに「どんな考えが浮かんだのか」、その考えが浮かんだときに「どのような感情になったのか」についてです。2.感情を3つに分ける書き出したものを「出来事・状況に対する感情」「相手(母)に対する感情」「自分に対する感情」の3つに分けます。3.分けた感情を数値化するネガティブな気持ちを100として、この3つのグループがそれぞれどのくらいの割合か、スケーリング(数値化)します。

「Hさんの結果」は以下の通りです。

【出来事・状況に対する考えと感情:40%】

<考え>母親の認知症が進んでいるのでは?これ以上ひどくなったら、どうなるんだ?

<感情>受け入れたくない現実を突きつけられたようでショック、悲しい、苦しい、パニック

<考え>母の症状がこれ以上進んだらどうなるのか?仕事は続けられるだろうか?

<感情>漠然とした不安、焦り、苛立ち

<考え>努力はしている。でも状況は変わらず、むしろ悪くなっている。

<感情>絶望

【相手(母)に対する考えと感情:30%】

<考え>毎日、毎日、自分のことばかりで、疲れている俺ことを気遣ってくれないのか!

<感情>腹が立つ、悲しい

<考え>しっかりしてくれ!もういい加減にしてくれ、俺の時間を返せ!俺の人生をめちゃくちゃにしやがって!

<感情>悲しみ、苦しさ

<考え>しっかり者だった母が変わっていくのを見たくない。弱っていく様子を見たくない。

<感情>苦しい、寂しい、引き裂かれるような感覚

【自分に対する考えと感情 30%】

<考え>怒鳴るなんて最低だ。次は手が出てしまうかもしれない。

<感情>恐怖、緊張、苦しい

<考え>一番つらいのは母なのに、優しくしたいのにできない。

<感情>焦り、嫌悪感、不信感

<考え>母が助けを求めた時に優しくできず、気持ち良く対応できない自分はダメだ。

<感情>がっかり、罪悪感、嫌になる

Hさんは、母への怒りだけでなく、将来の不安や自分自身への怒りや罪悪感がストレスの要因になっていたことに気づきました。

そして、「母に優しくしたいと思っていたなんて、自分でもびっくりです」と驚かれていました。続いて「コロナ禍が少し落ち着き、業務も忙しくなって余裕もなかったんですよね…。最近、眠りも浅くて…」と、単に自分が怒りっぽくなっていたのではなく、心身の疲れも大きく影響していたことにも気づくことができました。

自分に何が起きているのかがわかれば、対策が取りやすくなります。

Hさんは、デイサービスの回数を増やし、一人になれる時間をつくるためのショートステイの利用について、ケアマネジャーに相談することを決めたそうです。

ポジティブな気持ちの解体作業で練習を

「とはいえ、イライラしたときに一人で落ち着いて気持ちを書き出す余裕はない…」と思われる方もいらっしゃるでしょう。

そこでおすすめなのが、うれしいときや楽しいときなど、ポジティブな気持ちの解体作業をやってみることです。

気づいていない喜びや感謝の思い、自分が何を大切にしたいかなど、新しい発見があるかもしれません。何よりポジティブな気持ちを掘り下げるのは楽しいことなので、幸せも倍増です。作業に慣れるだけでなく、自分の心を楽しく探索するツールとして、ぜひ活用してくださいね。

ポジティブな気持ちも解体してみよう!

橋中からの直接のお返事、対応はできませんが、『みんなの介護』の記事や当協会が配信している無料メルマガで解決策についてお伝えしていきます。

皆さんが介護で経験されていること、対策を取られていることを介護者メンタルケア協会の問い合わせフォームでぜひ教えてください。お困りごとやご相談には、こちらの「介護の教科書」の記事でお答えできればと考えています。

「職場が介護の状況を理解してくれない」「何度も同じことを言われて怒鳴ってしまう」といった日々の介護の悩みについては、拙書『がんばらない介護』で解説をしています。ぜひ、手にとって参考にしてほしいです。

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