介護現場ではじめて管理職になった際の現場マネジメントのポイント【後編】

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介護現場ではじめて管理職になった際の現場マネジメントのポイント【後編】

【科目】介護✕リハビリ  【テーマ】介護現場におけるマネジメントの課題と対策

【目次】
看護者の倫理綱領から考える尊厳
介護現場におけるマネジメントの難しさ
マネジメントにおける課題解決のポイント

こんにちは。理学療法士兼webライターの森田亮一と申します。

前回はマネジメントの基本的な知識を企業の視点から紹介いたしました。今回は介護現場におけるマネジメントの失敗例などから、3つのポイントに絞って解説いたします。

看護者の倫理綱領から考える尊厳

医療や介護は一般的な企業と異なり、倫理観や個人の尊厳を守ることを目的にしています。看護者の倫理綱領によると「生命」や「尊厳」という言葉は、すべての人にとって同じ意味を持つとは限らないとしています。

例として、脳死状態の患者の話を展開しています。

家族に懇願されて入院患者の人工呼吸器を取り外した医師が、殺人容疑で書類送検されたというニュース(2007年8月)に関連して、ある学生が書いた文章を紹介します。

「私の祖母も最近まで人工呼吸器をつけていた。はじめて人工呼吸器をつけた祖母を見たとき、ショックのあまり泣いてしまった。祖母はまさに生きているというより、生かされている感じがした。ずっと眠っており、声も出ない。本当に見ているのがつらく、ニュースの遺族の方の気持ちはよくわかる。機械によって生かされている祖母を見て「生きることの意味」を考えさせられた」

生命は何より尊い、人工呼吸器につながれていようと、機械によって生かされていようと生命は生命。このような見方が成り立つ一方で、意識がない生物学的な生を長らえさせることは、むしろ人間としての尊厳を侵すものという考え方もできます。

【一部引用:日本看護協会 やさしく読み解く「看護の倫理綱領」第1~6条】

脳死状態は、臓器移植法によって「生」と「死」をドナーカードによって定義することになりました。脳死状態になったとき、臓器提供の意思表明をした場合は「死」、臓器提供の意思表明をしない場合は「生」と法律によって定められました。

法律の内容のみでなく、「生」や「死」という言葉の解釈は容易にできるものではありません。患者や家族の意向を大切にすることが、尊厳を守るうえで重要だとしています。そのため「尊厳の保持」とは、個別性の高い内容になるでしょう。

「尊厳の保持」と「自立した日常生活」の狭間で

尊厳の保持のために患者、介護現場であれば利用者の意思を大切にした場合、必ずしも自立した生活に結びつくとは限りません。

介護や看護されることそのものに喜びを感じる方もいるでしょう。病状や症状の悪化リスクを理解していても、体に悪いことを止めたくない人もいるでしょう。

患者や利用者の意向は、人生における選択とも捉えられます。ケアするチームの価値観と擦り合わせることも困難なときもあるでしょう。個別性の高い事柄に目的を立てるとき、その時点ですでに簡単ではありません。

「目的は個人の人生にとって正しいのか?目的に対する手段は正しいのか?成果と捉えられる事柄は何か?」を決めることは複雑です。時には個人の考えが変わり、目的が変わることすらあるでしょう。介護保険制度の中で、目的の設定をすることに難しさがあるのです。

介護現場におけるマネジメントの難しさ

介護保険制度の理念をもとにし、目的を立てる際には個人の個別性が高くなるということに加え、介護サービスは同時に多くの方々を看る環境も存在しています。

そのような環境では、「別々の目的を持った個人」が同じサービスの中で同時に存在していることになります。

「ケアプランにおける個人の目的」と「介護サービス提供者側組織のミッション」、さらには「各専門職における理念」が混在し、職員はそれらを理解したうえで成果を上げなければなりません。

マネジメントを行うマネジャーは、すべての目的を理解して成果を定義し、評価や教育などを行わなければなりません。

目的無くして成果や評価の判断はできません。介護現場におけるマネジメントは、目的の設定が難しく複雑であり、成果や評価の判断がしにくいところが根本にあると考えられます。

介護現場では目的の設定が複雑になる

介護現場で起こるマネジメントの失敗例

介護現場では、マネジメント職の不足が問題であるといった記事もよく見かけます。マネジメントを上手に行える人材が少ないという現状があるのかもしれません。

実際にどのようにマネジメントを失敗してしまうのか、例を挙げてみましょう。

1.コミュニケーション不足で目的や成果を明確にしないままマネジメントする

マネジメントにおいて最も重要なのは成果です。マネジャーは組織の成果を上げさせるために活動します。

介護サービスの場合は、利用者や各職員、各専門職のミッションやビジョンを知らずにマネジメントを進めていくと失敗してしまいます。それぞれの方々が、どんな将来像を見つめているのかを知らずにマネジメントを進めてしまうと、目的の共有ができず、それぞれがバラバラな方向に進むことになってしまいます。

目的が共有されず、バラバラな方向性の活動を続けていると、目的の達成が困難になります。そして、誰にとっても満足の得られない状態になってしまうでしょう。

2.仕事の優先順位を明らかにせずにマネジメントする

何が目的であり、成果なのかを定義しない場合、仕事の優先順位を決めることができません。優先順位が明らかでない状態で仕事をするとき、順序は個人の判断に任せられます。

マネジャーの考えている優先順位と職員の考えている優先順位が一致するとは限りません。双方が間違っているとも定義できません。このように仕事の優先順位が明らかでない環境は、不満を生み出し、教育や評価を難しくします。

職員の仕事に対する満足度のみならず、利用者にも影響する可能性があるでしょう。

3.フィードバックする環境をつくらないままマネジメントする

マネジャーと介護サービスに関わる方々のミッションやビジョンの把握のためにコミュニケーションが重要であると同時に、仕事の生産性を向上させるためには分析が必要になります。

「利用者に行った介護サービスは果たして良かったのか?良くなかったのか?」「仕事は目的に沿った内容であったか?」「成果は上げられているのか?」などを評価せずにマネジメントを進めていると、成果を上げるための方法が見つかりません。

それは、結果的に多くの方々が進むべき方向を見つけられない状態をつくることになってしまいます。

マネジメントの課題解決ポイント

マネジメントの本質は、成果にあります。成果のために何をすべきなのかを考え、活動していくことがマネジメントにおける課題解決の重要なポイントになるでしょう。

今回は、ポイントを3つに絞り解説します。

多くのコミュニケーションを取って目的や成果を明確にする

マネジャーは、組織のミッションやビジョンを理解した上で、利用者・上司・部下を含む職員などとコミュニケーションを取り、それぞれの方がどんなミッションやビジョン、価値観を持っているのかを知る必要があります。そのうえで目的や成果を定義していく必要があります。

組織・利用者・職員のミッションやビジョンを明確にし、すり合わせ、それぞれの強みを見出して成果を上げるための活動をすることが介護現場のマネジャーの役割です。

注意点は、関わる方々から表面上の建前の意見ではなく、なるべく本音の意見を引き出すこと。建前だけでは、その人の目指したい本当の目的が見えにくいからです。

だからこそ、マネジャーは関わる方々との信頼を大切にし、本音の目的を聞き出し、成果や活動を定めていくことが課題解決につながります。

仕事の優先順位を明らかにする

目的や成果が定まると、優先順位も定めやすくなるでしょう。マネジャーは、優先順位を定め、共有していく役割があります。

組織・利用者・職員において、何が重要なのかを判断していく必要があります。それは、単純ではありません。マネジメントにおいては、長期的か短期的かという判断を主にして、重要度や緊急度などを含めて状況に合わせた判断を求められるでしょう。

忘れてはならないことは、利益ではなく、成果の責任をマネジャーは負っているということです。常にミッションを意識し、優先順位を判断することが大切です。

フィードバックする環境をつくる

フィードバックの環境は一人ひとりの状態のみでなく、組織の活動や各職員の目標などにおいても大切です。

行ってきた活動を振り返るために、評価の基準を決め、果たして良い活動ができたのか、そうではなかったかを明らかにする必要があります。

例えば、利用者の目標達成度・職員の仕事に対する満足度・組織の事業継続のために必要な利益などが挙げられるでしょう。

マネジャーの役割においては、どの部分の判断をし、どの基準を用いて評価していくかを定め、その機会を設ける仕組みをつくることが大切です。

マネジメントの課題を解決する3つのポイント

介護保険事業において、目的と成果を定義していくこと自体が難しい環境にあります。

しかし、目的と成果なくしてマネジメントは行えません。マネジャーは、上司や部下を含めて多くの関係者と信頼関係をつくり上げ、まずは目的を明確に理解していく必要があるでしょう。

マネジャーとして、どのように成果を意識し、活動していくのかが最も大切なのではないでしょうか。

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