離れていても「見守れる」、アプリで追跡できるサービスも。官民連携で安心の高齢者「見守り」

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離れていても「見守れる」、アプリで追跡できるサービスも。官民連携で安心の高齢者「見守り」

進化する高齢者の見守りサービス

老後も住み慣れた土地で暮らしていくための支援

2025年に突入する超高齢化社会に向けて、国や自治体は地域包括ケアシステムの構築を進めています。地域包括ケアシステムの中には、医療や介護サービス以外にも高齢者の生活支援も含まれています。

高齢者が「住み慣れた地域で暮らしていく」うえで、高齢者自身が社会的な役割を持つことで生きがいを抱いたり、介護を必要としない生活を送れたりするような支援が求められています。

支援策のひとつに挙げられているのが、「見守り」です。急速な高齢化や社会構造の変化などによって、地域コミュニティが希薄化する今、地元住民たちによるお互いを支え合う機能が低下しています。高齢者の孤立や認知症は、周囲が気づかぬままに進行してしまうことも少なくありません。こうした事例を未然に防ぐためにも、地域コミュニティによる「見守り」の必要性が叫ばれているのです。

東京都が発行している『高齢者等の見守りガイドブック』によれば、「見守り」は、大きく「緩やかな見守り」「担当による見守り」「専門的な見守り」の3つに分類されています。

1.緩やかな見守り地域住民や民間事業者が日常生活や業務の中で「いつもと違う」「何かがおかしい」と感じる人がいたら、専門機関に相談するといった地域で行う見守り活動2.担当による見守り定期的な安否確認や声がけが必要な人に対して、民生委員や老人クラブ、住民ボランティアが訪問するなど、担当を決めて行う見守り活動3.専門的な見守り認知症、虐待など対応が困難なケースなどに対して、地域包括支援センターや高齢者見守り相談窓口など専門機関の職員が専門的な知識や技術を活用して行う見守り活動

続々登場する民間による高齢者見守りサービス

国は、高齢者の「見守り」には地域や民間の力が必要との見解を示しており、現在、企業や自治体による高齢者見守りサービスの提供が進んでいます。セキュリティ会社による24時間体制のサポートサービスなどはそのいち典型例です。

さらに、近年ではICTやロボットなどの先端技術を活用した見守りサービスが登場。例えば、北海道札幌市の一般社団法人「セーフティネットリンケージ」は、認知症の高齢者を対象にした見守りアプリを開発。鹿児島県霧島市や東京都国分寺市で導入されています。

このアプリの利用方法は、次の通りです。認知症高齢者などを抱える家族や施設スタッフが、対象者の持ち物や衣服に個別のID番号が記されたステッカーを貼付。居場所がわからなくなった場合、自宅や施設から半径500m~20kmの範囲を選んで、圏内にいる協力者に顔立ちや当日の服装など情報を添えて捜索願いを送信。その情報を受け取った協力者が発見した場合、フリーダイヤルに電話して、ステッカーのID番号を介して依頼者とやりとりできるというものです。

また、介護施設で導入が進んでいるのが見守り機器です。厚労省の調査によると、見守り機器導入の有無は、「導入している」が73.5%に達しています。そのうち、見守り機器のタイプ別でみると「センサータイプ」が45.5%、「バイタルタイプ」が35.0%、「カメラタイプ」が17.4%になっています。主にセンサータイプやカメラタイプは徘徊防止、バイタルタイプは身体の異常の検知などを目的にしています。


出典:『社会保障審議会介護給付費分科会(第177回)資料』(厚生労働省)を基に作成  2021年12月05日更新

このように、多岐にわたる見守りサービスや機器が、続々と提供されているのです。

見守りサービスにおける官民の協力

民間による見守りサービスの需要が拡大

国土交通省の資料によると、高齢者向け見守り関連サービス市場規模は約75億円で、2025年には124億円程度に拡大すると見込まれています。

見守り市場の拡大傾向が続く背景には、高齢者の孤立死や認知症の徘徊防止のほかにも、各世帯による事情も関連していると考えられています。みずほ情報総合研究所の報告書によると、「高齢者は軽中程度の支援が必要な状態にあっても、自立した生活が歩める限りは自宅にとどまりたいと考えている」ことが示されています。

その理由には、「お気に入りの庭を眺める」「好きな酒を飲みながら食事をする」「ペットと過ごす」など、何気ない生活を大切にしたいという傾向があると指摘。また、40~50代の子世代の仕事の両立などの面を考え、なるべく「子どもや周囲の人に迷惑をかけたくない」と考える高齢者が増えたことも大きな要因となっています。

同報告書では、介護者を対象に「介護と仕事を両立するうえであると良いもの」のアンケート調査も実施。その中で介護と仕事を両立している人は、「情報通信機器を使った在宅の高齢者の安全を見守るシステム」の割合が37.8%と最多。次いで「情報通信機器を使った在宅の高齢者の健康管理システム」31.4%、「情報通信機器を使った認知症の徘徊高齢者の探索システム」23.5%と続きます。


出典:『広がりつつある高齢者の見守りの現状と今後のあり方について』(みずほ情報総合研究所)を基に作成  2021年12月05日更新

こうしたニーズを捉えた民間企業が、次々と介護業界へ参入しているため、市場は今なお拡大を続けています。

ニーズが高まらない自治体による見守り

民間サービスへの注目度が高まる一方で、あまり周知が進んでいないのが自治体などによる見守り支援です。前述したみずほ情報総研の調査によると、現在(または介護終了時)利用している在宅サービスのうち「ボランティアなどによる見守り」や「緊急通報などのサービス」は、わずか1~3%にとどまっています。

現在、全国の市町村は、見守りのしくみやネットワークの構築、緊急通報システムの提供、サービス利用料金の助成などの取り組みを急いでいます。それに加えて、地域ボランティアなどの活用を進める一方で、市場のニーズに合わせて、見守りロボットや民間サービスとの連携も同時に行っています。

例えば、千葉県浦安市ではかつて、単身高齢者世帯や高齢者のみ世帯に、緊急通報装置の貸し出し、メール機能付き携帯電話を利用したコミュニケーションづくり、安否確認と併せて行う給食サービス、認知症高齢者の徘徊探知機の賃貸料助成などの見守り事業を展開していました。しかし、多くの高齢者に普及することがなかったため、より確実かつ効果的な「見守り」ができるよう、センサーと自動開錠システムの技術を有するメーカーと介護事業者の業界団体と連携して、ICT活用に踏み切りました。

包括的な見守りを実現するために

地域コミュニティの成熟を促す地域包括支援センター

見守り活動は、ICT活用などによって進化を続けていますが、民間サービスだけでは、本来の目的のひとつでもあった「地域住民による支え合い」という視点が欠けています。その役割を担うと期待されているのは地域包括支援センターです。

東京都では、各センターに見守り専門職を配置して、見守り対策を実施しています。常勤の社会福祉士やケアマネジャーなどが担当窓口になることが多いようですが、ほかの業務との兼任が多く、専従しているケースはほとんどありません。そのため、支援内容や役割が明確化されていないケースもあると考えられ、専門家は実践的な支援に結びついていない可能性があると指摘しています。

事実、東京都による自治体へのアンケートによると、住民や地域団体による見守り活動は72.6%に達しているのに対し、その支援は限定的です。「広く住民向けに見守りに関する普及啓発を行っている」が62.2%、「見守り活動に有用な情報を提供している」が55.6%なのに対し、「各地域が見守りに関するマニュアルを作成する際に相談に応じたり、情報提供するなど支援している」「地域で見守りが必要な高齢者に関する情報を提供している」は、ともに20%にとどまっています。


出典:『高齢者等の見守りガイドブック第3版』(東京都)を基に作成  2021年12月05日更新

「見守り」の真髄は、互いの「信頼関係」にある

人員などのリソースが限られる地域包括支援センターだけで、地域に住む高齢者の見守りを一括して行うことは困難です。そこで、東京都では2010年度から「シルバー交番」の設置を開始しました。シルバー交番とは、24時間365日体制でワンストップサービス機能を担う見守り機能に特化した窓口です。

しかし、初年度の設置はわずか3ヵ所とふるわず、2015年度に事業の見直しを実施。「高齢者見守り相談窓口設置事業」として地域への設置やサービス内容を拡充させています。専門家の中には高齢者見守り相談窓口が、見守りの機能を最も発揮しているという指摘をする人もいます。

一方、自治体による地域包括支援センターや高齢者見守り相談窓口に対する支援はあまり広がっていないのが現状です。

「見守り」とは、「監視」することではありません。冒頭でも述べたように、「見守り」とは、高齢者が住み慣れた地域で、これまでと同じような生活を送れるようサポートすることです。

見守られる人、見守る人、それぞれ適切な距離を保ちながらも、お互いの信頼関係を築けるような仕組み作りが求められています。

離れていても助けを求められる、繋がっていられるという安心感の醸成こそ、「見守り」に求められていることであり、「見守り」の輪を広げていく活動を積極的に行っていくことが求められているのです。


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