『聖地X』入江悠監督インタビュー「コメディ要素もあるし、探偵要素もあるし、ジャンルが謎で面白い」「寅さんとの共通点」
この地に宿るのは、神か悪魔か。オール韓国ロケで送る、想像を絶する驚愕の展開が話題の『聖地X』が公開中。『22年目の告白 私が殺人犯です』『AI崩壊』の入江悠監督が、岡田将生さんと川口春奈さんの共演で描いたホラー作品です。
劇作家・演出家の前川知大が主宰する「劇団イキウメ」の同名人気舞台を映画化し、オール韓国ロケで製作された本作。入江悠監督に映画作りについてお話を伺いました。
ーー本作大変楽しく拝見させていただきました。私も「劇団イキウメ」の舞台を拝見しており、ファンなのですが、映画もすごく面白かったです。
そう言っていただけると嬉しいです。僕も本当に劇団イキウメの舞台が好きなのですが、ストーリーが非常に面白くて、映画にしたいと思いました。許可していただけて嬉しいです。前川さんの考えるお話って、自分では絶対に思いつかない、誰にも思いつかない様な面白い展開があって。映画ならではの仕掛けも組み込んだので、ぜひ多くの皆さんに体験していただきたいなと思います。
ーー公式サイトでは“エクストリームホラー”というジャンルになっていますが、本当に良い意味でジャンルが謎の作品ですよね。
「なんなんだこの話は」と思っているうちに引き込まれていくという。本当によく分からないんですよね。前川さんは『太陽』や『散歩する侵略者』はSF、『奇ッ怪〜小泉八雲から聞いた話』は怪談と色々なジャンルを書かれていますけれど、『聖地X』のジャンルって何なんだろうって。コメディ要素もあるし、探偵要素もあるし、それが面白いですよね。
前川さんともお話させていただいたんですが、寅さん(『男はつらいよ』)なのかもなって。お兄ちゃんが妹の為に頑張って、色々なことに巻き込まれていくという(笑)。観る方によって感じ方がまったく違うと思うので、それが魅力だなと思います。
ーー舞台は非常にシンプルな舞台美術の中でストーリーが展開していきました。映画化するにあたり変えた部分、見せ方を工夫した部分はありますか?
ストーリーは変えていないのですが、舞台を韓国にしたのはプロデューサーのアイデアです。舞台では壁つたいに会話をしたりして展開していきますが、映画ではその空間的な距離が日本と韓国になっていて。日本にいるはずの人間が韓国にいるのは、時間的にも空間的にもあり得ない、そこからこの怪奇現象がどう展開するか物語が進んでいきます。
ーー“聖地X”となる場所、岡田将生さん演じる輝夫のオタク部屋、などなどセットがすごく好きでした。
聖地Xとなるあの場所は割とすぐに見つかって、大きな木があってイメージ通りだったんです。井戸は日本から持っていって設置しました。輝夫の部屋は美術さんがこだわってくれて、ゲーム、アメコミのフィギュア、ポスター、ありとあらゆるものを飾るため、ものすごい量を日本から送って。色々なことが好きなのだけど飽きっぽくて悠々自適に暮らしている輝夫というキャラクターを、部屋からも感じてもらえる様にこだわっているので、細部まで見ていただけたら嬉しいです。
ーーまた、個人的には薬丸翔さんが演じた滋の何とも言えない絶妙な気味の悪さが最高でした。
薬丸さんは劇団イキウメの新作に出ていらして、拝見してすごく良い役者さんだなと思いました。滋はすごく難しい役柄ですよね。これは映画を観る前だと分かりづらい説明になってしまうのですが、自分が持っているはずの記憶を、持っていないかの様にふるまわないといけない。それでいて女好きで軽さしかないという(笑)。岡田さんとももともと面識があったみたいで、川口さんとの3人の関係性を含めて良かったです。
ーーそして、ご祈祷のシーンも見所だと感じました。
韓国ロケをするからには絶対にやりたいなと思っていたんですよね。もともと韓国映画が好きなのでムルタン(ご祈祷)ってすごく面白いなと思って。こんなすごい祈祷師の方が苦戦して、次どうなっちゃうんだ?という物語の展開にもつながりますし、バンバン独自のアドリブを入れてくれて、迫力のあるシーンになっていると思います。
ーー韓国での撮影で監督が新鮮に感じられたこと、学びを得たことはありますか?
全ての韓国映画がそうやって作られているかは分からないのですが、若いスタッフの方が多くて勢い、元気を感じました。そして、労働時間など働く環境を整えて、スタッフと役者を守っていることは僕も学ぶところだなと思いました。日本の場合はどうしてもスケジュールありきで進んでしまう部分があるので、作品に対する熱量ということも見習いたいです。俳優さんが監督と近いので、今回出てくれた韓国の俳優さん2人も、僕にどんどん意見を言ってくれたり、「どうですか?」って質問したりしてくれるんです。そこも面白いなと感じました。
ーー今日は素敵なお話をありがとうございました!
【ストーリー】小説家志望の輝夫(岡田将生)は、父親が遺した別荘のある韓国に渡り、悠々自適の引きこもりライフを満喫中。そこへ結婚生活に愛想をつかした妹の要(川口春奈)が転がり込んでくる。 しかし、韓国の商店街で日本に残してきた夫の滋(薬丸翔)を見かける要。その後を追ってたどり着いたのは、巨大な木と不気味な井戸を擁する和食店。無人のはずの店内から姿を現したのは、パスポートはおろか着の身着のまま、記憶さえもあやふやな滋だった。 輝夫と要は別荘で滋を捉えるが、東京にいる上司の星野(真木よう子)に連絡すると、滋はいつも通り会社に出勤しているという。では輝夫と要が捕まえた滋のような男は一体誰なのか? さらに妻の京子(山田真歩)が謎の記憶喪失に襲われた和食店の店長・忠(渋川清彦)は、「この店やっぱり呪われているかもしれません」と言い出す始末。日本人オーナー江口(緒形直人)いわく、店の建っている土地では、過去にも同じように奇妙な事件があったことがわかってくる。 負の連鎖を断ち切るため、強力なムーダン(祈祷師)がお祓いを試みるも、封印された“気”の前には太刀打ちできない。この地に宿るのは神か、それとも悪魔か? 彼らはここで繰り返されてきた数々の惨劇から逃れ、増幅し続ける呪いから解放されることはできるのか!?
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。