Eins:Vier、『LIVE2021”NOVEMBER LUST”』東京公演のレポートが到着!

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 あたたかくて、優しくて、それでいて何時もどこかには翳りや憂いをも滲ませながら、その根底にはしっかりとした力強さと頼もしさが感じられる音楽を、紆余曲折を経つつも今日に至るまで誠実に紡ぎ続けてきたバンド。思うに、Eins:Vierとは我々にとってそんな存在なのではなかろうか。
『Eins:Vier LIVE 2021

 そして、彼らEins:Vierは本来であれば2020年に30周年記念を迎えてそれに伴う動きをみせていくことになっていたはずだったのだが、いわゆるコロナ禍の影響により予定されていたライヴやツアーが相次いで中止・変更・延期へと追い込まれてしまうことに。故に、結果として各公演にはあらたに[30th+1 ANNIVERSARY. SINCE1990-2021]という題目が冠されたうえで、今年2021年に入ってから開催されていくことになったのだった。

 ただ、それだけイレギュラーな出来事が続いたからこその番狂わせ的な展開として、先日11月27日には公式に“2021”と銘打った唯一のライヴとして[Eins:Vier LIVE 2021 “NOVEMBER LUST”]が少人数制での観客動員+リアルタイム配信の形式で渋谷ストリームにて追加開催されることになり、これはある意味でバンド側にとってもファンにとっても大変喜ばしい予測外な事態とあいなったわけだ。

 かくして、本当の意味で“30th+1 ANNIVERSARY”を締めくくるライヴとなった今宵のステージにおいて、まず彼らが奏で出したのは、昨年21年ぶりの新曲を5曲収録したミニアルバムとしてリリースされた『five sights』からの「touch or don’t touch you know」と「100年の幻想」で、そのいずれからも感じられたYoshitsuguの響かせるアルペジオの繊細さや、Lunaの鳴らすベースラインの中にあふれる歌心、Hirofumiが発する声によって描き出される機微は、まさにEins:Vierならでは!と言えるものばかり。

 むろん、両曲とも彼らにとっての最新曲であると同時にそれぞれに色合いも違うのは確かなのだが、たとえば老舗ピッツェリアのマルゲリータやらマリナーラやらビスマルクなどがそれぞれに違うテイストを持ちながらも、その土台となる生地の組成自体は基本的にどれも同じであるというのとどこか似ていて、Eins:Vierという老舗バンドが醸し出してみせる根本的な味わいは30年の時を超えても、曲調があれこれと違ったとしても、良い意味でどれも全くブレずに変わらないものとして味わうことが出来るものなのである。

 ちなみに、ピッツァの場合で言えばどんな時でも同じような食感の生地を作り出すというのは単に何時も同じように作成すればいいという次元の話ではなく、日によって気温や湿度に合わせて生地配合や発酵度合を見極めて順応させていく必要があるそうで、これまたその複雑な構図はバンドが音楽を生み出していく過程とも不思議と共通点があるように思えてならない。

 つい我々が安易に口に出してしまいがちな“Eins:Vierらしさ”という言葉の裏には、きっと彼らの音楽に対する揺るぎない信念、尽きることのない情熱、微細にして徹底したこだわり、といった各ファクターが限りなく作用しているのであろうし、その時々の状況によってもさまざまな加減は変わっていき、それによって多様性をはらんだEins:Vierの世界は見事に構築されてきたものなのであろう、と筆者は推測している。

「こんばんは。[LIVE 2021 “NOVEMBER LUST”]ということで遂に始まりましたが、ここまでには30th ANNIVERSARYを“30th+1 ANNIVERSARY”としてやってきて長い長い歳月が経ちました。今日はそのファイナルでもありますし、実は“2021”と題してやる初めてのライヴでもあります。欲望をむき出しにして、思いっきり楽しみましょう!」(Hirofumi)

 新曲群から一転してのすこぶる懐かしい「メロディー」に始まり、10年前の再結成時に出演したイヴェント[V-ROCK FESTIVAL ’11]でも演奏されていた「Words of Mary」、聴いていると往年のライヴの光景が自然と甦ってくる「Notice」…と、すっかり気分が高揚したところで本編中盤に場内へと降り注がれたのは、冬の穏やかな情景を映し出した名曲「街の灯」。

 アッパーな曲で派手に盛り上がるのが楽しいのはもちろんのことだが、Eins:Vierには普遍的な魅力を持つ名曲が数多く揃っていることも特徴的な点で、その感覚はこの後に歌われたリリカルな「花の声」などからも伝わってきたものだったのではないかと思う。

「今日は少し優雅に自分に酔いしれながら弾こうかなーなんて思ってたんですけど、いざライヴが始まってみたら何時もと変わらん全力ですわ(笑)。まぁ、一昨年から久しぶりの新曲も作っていろいろと準備もして「さぁ、30周年行くぞ!」となった途端にこの有り様でちょっと時間は空いてしまったけど(苦笑)、それでもここまでの30年とか31年の間この3人が音楽の世界で生き残って来たということは本当に素晴らしいことであるなと思ってます。今回の30周年は途中で予定が中止になったり変更になったりでいろいろあったし、正直「何時終わるんやろう?!」って感じるくらい長く果てしない道のりでしたが、それでもなんとか今日までたどりつくことが出来ました。まぁ、1年半かけて長々とやって来たおかげで今日のライヴが追加で増えたわけなんで、これはとても素敵なことだとは思いませんか?僕もめっっっちゃ嬉しいです!感謝してます、ありがとう!!」(Luna)

 ここからの本編後半ではEins:Vierにとっての鉄板ライヴチューンとして長年にわたり君臨してきた「L.e.s.s.o.n」と「In void space」が連打され、場内に集ったファンらは声こそ発せないとはいえよりいっそうの盛り上がりぶりをみせることになり、それこそライヴタイトル通りの “NOVEMBER LUST”がこの場面では炸裂したと言えるだろう。

 また、アンコールでは95年夏にメジャーデビュー・シングルとして世に送り出された不朽の名曲「Dear Song」で〈忘れられなかった あのメロディーに想いをはせながら…〉という一節に今さらながらの感慨を感じることも出来たほか、この曲ではLunaだけでなくサポートドラマーの岡本唯史氏も一緒に歌詞を終始口ずさんでいた点が印象的で、その微笑ましい様子から岡本氏の胸の中にある深いEins:Vier愛を感じたのは何も筆者だけではあるまい。

 なお、この後には「In your dream」など計3曲が演奏されたWアンコールもあり、その場ではLunaから今回の[LIVE 2021 “NOVEMBER LUST”]の模様を軸とした4枚組のBlu-ray作品が後日発売となることが発表され、Eins:Vierの30th Annivesaryプロジェクトはそのリリースをもって最終的に完結することが告げられたのだった。

「今までもこれからもずっとEins:Vierを好きでいてくれる人たちに贈りたいと思います。聴いてください…!」(Luna)

 Eins:Vierのおりなす心のこもった音楽たちを存分に堪能出来たこの夜、渋谷ストリームホールの場内へと最後の最後に放たれたのはシングル「蒼い涙」のカップリング曲でもあった「Liquid blue sky」。〈眠れずに不安な夜が来ても 大丈夫さ 夜明けは待ってる さぁ明日へ〉というこのポジティヴな歌詞の内容を思えば、何故この場で彼らがこの曲を奏でたのかは明白で、この歌は今この時世を生きる人々へのメッセージとして伝わってきた。

 あたたかくて、優しくて、それでいて何時もどこかには翳りや憂いをも滲ませながら、その根底にはしっかりとした力強さと頼もしさが感じられるEins:Vierの音楽は、これからも彼らを愛するわたしたちと共にこの先の未来へと進んでいってくれるに違いない。

撮影:荒川れいこ(zoisite)/文:杉江由紀

<セットリスト>

『Eins:Vier LIVE 2021 “NOVEMBER LUST”』

2021年11月27日 at Shibuya STREAM HALL

M-1 touch or don’t touch you know

M-2 100年の幻想

-M.C-

M-3 メロディー

M-4 Words for Mary

M-5 Notice

-M.C-

M-6 街の灯

M-7 花の声

M-8 Not saved yet

●Luna M.C

M-9 three stories

M-10 I mean what I say

M-11 L.e.s.s.o.n

M-12 In a void space

<ENCORE 1>

En-11 Come on loser

●Luna M.C

En-2 I feel that she will come

En-3 Dear song

<ENCORE 2>

En-4 In your dream

En-5 In your next life

En-6 Liquid blue sky

END SE
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