「全国×まちだDサミット」開催までの経緯と理念|介護の教科書|みんなの介護

access_time create folder政治・経済・社会
「全国×まちだDサミット」開催までの経緯と理念|介護の教科書|みんなの介護

【科目】介護✕ケアマネ  【テーマ】町田市で開催される「全国×まちだDサミット」の意義と目的

【目次】
最初の分岐点『16のまちだアイ・ステートメント』
これまでの「まちだDサミット」の成果
「認知症とともに生きる」を全国に広める

医療と介護の連携支援センター長谷川です。

今回は介護の教科書でも、すでにお伝えさせていただいている町田市での認知症施策についての取り組みと、今年度開催される「全国×まちだDサミット」についてご紹介をさせていただききます。下記の回もご参照いただければと思います。

第11回 第12回 第13回 第57回 第68回

最初の分岐点『16のまちだアイ・ステートメント』

私が働く町田市では、これまでもさまざまな認知症施策を行ってまいりました。その中でも転換点となった取り組みは、次の3つではなかろうかと個人的に考えております。

2016年度に、認知症当事者に加えご家族、医療福祉関係者、行政、民間企業、NPO、研究者などが話し合い、「認知症の人にやさしいまち」のあるべき姿として『16のまちだアイ・ステートメント』を作成しました。
2018年度「まちだDサミット」、2019年度「まちだDサミット2」では、さまざまなセクターの方が一堂に会し、『16のまちだアイ・ステートメント』を念頭に、認知症に関するまちづくりの事例を紹介。認知症当事者とこれからの地域のあり方について議論を行いました。
2021年度「認知症の人にやさしいまちづくり」から「認知症とともに生きるまちづくり」を掲げ、2021年12月11日に「全国×まちだDサミット」を開催予定としています。

まず、最初の転換点は『16のまちだアイ・ステートメント』の作成です。第13回でも説明していますが、次のような内容が記載されています。

町田市では、『16のまちだアイ・ステートメント』を認知症当事者や行政、民間を含めた多様なセクターの方の協力を得て、「私」を主語に、「現在認知症である私」だけではなく、「これから認知症になり得る私」も含め、誰もが自分のこととして捉えられるように作成しています。

私は、早期に診断を受け、その後の治療や暮らしについて、主体的に考えられる
私は、必要な支援の選択肢を幅広く持ち、自分に合った支援を選べる
私は、望まない形で、病院・介護施設などに入れられることはない。望む場所で、尊厳と敬意をもって安らかな死を迎えることができる
私は、私の言葉に耳を傾け、ともに考えてくれる医師がいる
私は、家族に自分の気持ちを伝えることができ、家族に受け入れられている
私の介護者は、その役割が尊重され、介護者のための適切な支援を受けている
私は、素でいられる居場所と仲間を持っており、一緒の時間を楽しんだり、自分が困っていることを話せる
私は、趣味や長年の習慣を続けている
私は、しごとや地域の活動を通じて、やりたいことにチャレンジし、地域や社会に貢献している
私は、認知症について、地域の中で自然に学ぶ機会を持っている
私は、経済的な支援に関する情報を持っており、経済面で生活の見通しが立っている
私は、地域や自治体に対して、自分の体験を語ったり、地域への提言をする機会がある
私は、認知症であることを理由に差別や特別扱いをされない
私は、行きたい場所に行くことができ、気兼ねなく、買い物や食事を楽しむことができる
私は、支援が必要なときに、地域の人からさりげなく助けてもらうことができる
私たちも、認知症の人にやさしいまちづくりの一員です

その後、このアイ・ステートメントだけでは理解しにくい部分もあるとのご意見があり、アイ・ステートメントの中に「エレメント(要素)」と呼ばれる具体的な内容を盛り込みました。

例えば(9)の項目には、以下のような「エレメント」があります。

本人がしごとや地域の活動に参加できる場や機会がある。
本人がやりたいこと、できることをともに考え、しごとや地域の活動につなげる人いる。
本人がやりたいことにチャレンジできるよう、しごとや地域の活動を傍でサポートする人がいる。
本人のしごとや地域の活動による貢献を評価し、サポートする具体的な仕組みがある。

このエレメントは、『16のまちだアイ・ステートメント』ごとに3~5つほどあり、具体的な内容を示しています。そのため、私たちが現在行っている活動や取り組みが、どのアイ・ステートメントにつながるかがわかりやすくなっています。町田市では、このアイ・ステートメントを基礎に据えて、さまざまな取り組みを展開しています。迷いが生じたときは、このアイ・ステートメントに立ち戻りながら、前に向かっていきます。

町田市の取り組みの理念である『16のまちだアイ・ステートメント』

これまでの「まちだDサミット」の成果

次に、2018年・2019年に開催された「まちだDサミット」「まちだDサミット2」が転換点にあたると考えています。先述したアイ・ステートメントは、専門職の方や協力していただいたセクターの方に、内容や意味が伝わっていないケースがありました。

そこで、2018年に町田市で策定された第7期介護保険事業計画において「認知症になっても地域の一員として暮らしたい」「認知症の人にやさしい地域づくりの推進」が計画に位置づけられました。その中で、「具体的にやさしい地域づくりって何?」という疑問に対して、地域で実践されている方にお話してもらおうという取り組みです。

2018年「まちだDサミット」では、若年性認知症当事者でもあり、全国で講演活動をされている仙台の丹野智文氏に認知症当事者の方の気持ちを講演していただきました。また、市内外で活動する認知症当事者らと、さまざまなセクターの方による9つのセッション【しごと】【交通】【カフェ】【書店】【デザイン】【金融】【病院】【見守り】【テクノロジー】で話し合いました。当事者の生の声を聞けるうえ、現在進行形で進めている「認知症の人にやさしいまちづくり」を市民に発信しました。

翌年の「まちだDサミット2」では「認知症の人にやさしいまちづくりのすすめかた」として、認知症本人の視点から、暮らしの場面における現在の町田市の姿を捉え、福祉ジャーナリストの町永俊雄氏による講演をしていただきました。また、市内で暮らす認知症の人のありのままの暮らしを撮影したドキュメントムービーの上映、NPO法人「町田市つながりの開DAYSBLG!」理事長の前田隆行氏とのトークセッションを実施。2018年同様に、認知症当事者の生活の場面で暮らしやすいまちになるための9つのセッション【カフェ】【しごと】【学ぶ】【介護施設】【家族の視点】【病院】【お金のこと】【お出かけ】【買い物】について、現状と今後についての共有を行いました。

この「まちだDサミット」での大きな収穫は、医療福祉だけの枠で考えているとなかなか知りえないこと、多様なセクターの方が認知症の人や高齢者にとって住みやすく、やさしくあるために考えていることを共有できたことだと思います。そのうえで、医療福祉関係者だけではなく、「実は認知症当事者はこう考えています」という生の声を届け、皆が認知症の人にやさしいまちづくりの一員であることを再確認できた場でもありました。

「認知症とともに生きる」を全国に広める

こうした取り組みが、今回実施される「全国×まちだDサミット」につながっていきます。

新型コロナの影響を受けて2020年度は開催できず、今年も開催すべきか判断に迷いました。本記事の執筆時点では、緊急事態宣言も解除され、東京都では一日50人を下回る状況です。今まで同様に対面での開催も考えられる状況でしたが、イベントを開催するにあたり、概ね3~6ヵ月前から予定を立てて動き出します。

そのため、まずは12月に開催するスケジュールを確定する必要がありました。市役所を含めた実行委員会でも検討を重ねましたが、タイミング的には緊急事態下でもあり、オンラインでの開催を決断しました。「今まで対面で行っていたものをどうすればオンラインで開催できるか」を考えたとき、会えないことを逆手にとって「対面で会えない今、オンラインでつなげられるからこそ全国での認知症当事者がどのようにまちで生活をしているか」を考え、そのアイデアをさらに町田市で活用していけないかと考えました。

今回は、2016~2019年までの「認知症の人にやさしいまち」から、2020年「認知症とともにいきるまちづくり」にテーマを置いています。

微妙なニュアンスの変化のように思われるかもしれませんが、私は見ている方向が変わったように感じています。「認知症の人にやさしいまち」の段階では、どこかテーブルを挟みながら対面で認知症の人を見ていたような気がします。知らず知らずのうちに「支援する・される関係」をつくっていたのかもしれません。私は、この言葉の意味として「認知症の人にやさしいまちはどなたにとってもやさしいまち」だと考えていました。年齢や障がい、属性に関係なく、やさしくお互いを許容できる寛容な社会・まちづくりにつながるものだと思っています。

一方、今回のテーマである「認知症とともにいきるまちづくり」は、テーブルの同じ側に座り、同じものを見ながら考えているように思います。対面ではなく、同じ方向を向きながら対話しているようなイメージです。「支援する・される関係」ではなく、「お互いを知りながら必要なことを協力し合う」という、ごく当たり前のまちをつくっていくと感じます。

今回の「全国×まちだDサミット」には、こんな副題をつけています。それは「『認知症とともに生きるまちづくり』のはじめかた」です。

全国各地で活動されている認知症本人の方々のさまざまな思いや考えを聞き、「ともに生きる」を言葉として理解することにとどまらず、「何を意味しているのか」「それに伴う自身の次なるまちづくりアクションは何か?」を考えるきっかけにすることを目的にしています。

認知症の人もそうでない人も、皆さんがまちづくりの一員です。全国各地のたくさんの方々が対話し、それぞれがアクションの種を見出す場にしたいと思っております。

全国の多様な人と共有したい「認知症とともに生きるまちづくり」

サミットではセッションを4つに分け、全国各地で活動されている認知症当事者の皆さんにセッションのモデレーターをお願いしました。そこに参加されるスピーカーの方も認知症当事者の方にお願いをしてテーマごとにお話をいただきます。

セッション1では認知症とともに生きる「今のわたし」について、奈良在住の平井さん。セッション2では認知症とともに生きる「時代に向けて」について、京都在住の下坂さん。セッション3では認知症とともに生きる「皆さんへ」について、関西在住の牧田さん。セッション4では「やさしいまちから、ともに生きるまち」について、『16のまちだアイ・ステートメント』の作成にご協力いただいた筑波大学の河野さんにお願いしています。

どのセッションも対話ができる形と、視聴のみの申し込みができるようになっております。このような形式のイベントは視聴のみで開催させることが多いのですが、私たちが大切にしている対話を積み上げていくことを考え、参加した人限定で対話可能な方法での開催を行います。

今回読んでいただいた皆さんにも、ぜひこの機会に町田市で行われている「認知症とともに生きるまちづくり」を一緒に考えていただければと思います。

町田だけでなく、全国各地から「ともに生きる」が全国に広がることを祈っています。今回も最後までお読みいただき、ありがとうござました。

参照:まちだDサミット

「介護✕ケアマネ」記事一覧はこちら

関連記事リンク(外部サイト)

自分の殻を打ち破れ!
仕事も家庭も両立したい私が選んだ
介護という世界

「一人ではない」と教えてくれた、コロナ禍での奇跡の出会い
介護職の賃上げ、2022年2月から。関係各所の要望と実現へ向けた課題

access_time create folder政治・経済・社会
local_offer
みんなの介護ニュース

みんなの介護ニュース

みんなの介護ニュースは、最新の介護情報、介護に関する話題や時事ニュースを、コラム形式でわかりやすくお届けします。

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

ガジェ通制作ライブ
→ガジェ通制作生放送一覧