ソフト・金メダリスト山田恵里の「心のマネジメント術」~変えられるものから変える~

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ソフト・金メダリスト山田恵里の「心のマネジメント術」~変えられるものから変える~

 「心理カウンセラー×アスリート」の対談により、日々の生活や仕事にも役立つ「心のマネジメント」をひもとく本連載。今夏の東京五輪で日本中をわかせた女子ソフトボールで2大会連続となるキャプテンを務め、見事金メダルに輝いた山田恵里選手に臨床心理士・公認心理師としてこれまで様々な悩みを抱える人をカウンセリングし、解決へ導いてきた心理カウンセラー・塚越友子氏が引き続き、話を聞く。

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ソフト・金メダリスト山田恵里の「心のマネジメント術」~ルーティンの効用とは~ https://cocokara-next.com/motivation/method-of-mind-management-eriyamada-01/

1年越しのイメージトレーニング

塚越 前回は心を整えるためにルーティンを重視しているという話を伺いました。またイメージトレーニングについてはいかがでしょうか?

山田 イメトレは北京五輪の時、13年前に1回、日本代表チームでやったことはあります。

塚越 それ以外に、試合前や直前、試合中で取り組んでいることはありますか?

山田 いつも土日に試合があるのですが、大体対戦相手が決まっているんですね。イメトレといえるかは分りませんが、その相手の映像を見たりとか、相手をイメージして、ボールの軌道や、どういう攻め方をされるといったイメージはしています。自分の中でイメージ力は高いのかなと思っています。

塚越 そういったイメージを行うと心と体の両方にどんな作用を感じていますか?

山田 それも準備の一種でイメージすることが結果への近道といいますか、より結果が出しやすいかなと思います。イメージすることによって、なにもしていない状態で試合に臨むのと、イメージして臨むのでは、心の落ち着きも違うのかなと思いますね。

塚越 イメトレが精神安定にも繋がっているんですね、実際イメージ通りに球が飛んできた時に、漫画みたいに、ボールがゆっくり見えたとかありますか?

山田 私は結構配球を読む方で読みが当たるとヒットの数が多くなるんです。それは、早い段階からイメージしていたものが結果として出る時は、結構多いですね。

塚越 特に印象に残った場面は?

山田 何年か前のリーグ戦で、その前の年に上野(由岐子)さんと対戦して、打ち取られた時があったんです。その時に『絶対来年の試合は、このボールを投げてくる!』と思って、ずっと準備していたんです。そうしたら、本当にそのボールを投げてきて打った時は嬉しかったですね。ずっと準備してイメージしてきたことが結果として出たので。

塚越 1年越しはすごいですね。それが自信にもなり、大丈夫だっていう精神的な安定にも繋がると綺麗に好循環していくんですね。また、悩み事やストレス、スランプとかある際には、どのように対処されているんですか?

山田 ポジティブなのかわからないんですが、全部をいい方向に持っていこうと捉え方をするようにしています。今まであまり大きなスランプというものを経験したことはないんですが、少し結果が出なくなった時に、そのままずるずる下がらないように保ちながらやっていくイメージです。打てない時が続いても、『次からは打てる!』と言い聞かせていたりとか。そうやって無理やり持っていっていますね。

塚越 無理やり思考を持っていって、浮き沈みを小さくできるってすごいことです。一般的には、無理やり考えれば考えるほど『私なんてダメだ』という方向にいってしまいがちです。

変えられるものから取り組む

塚越 切り替えのうまさという点では、ソフトボールを始めたきっかけに女子は野球で甲子園に出れないからソフトボールに転向されたという記事も読みました。そこを嘆くのではなく、自分にコントロールできないことにとらわれても意味がないからと。そのような考えは大事にされている部分でしょうか?

山田 確かに変えられないものは変わらないので。そこにはとらわれないようにしていますね。

塚越 たとえば頭の中で、変えられるものと変えられないものがあって、変えられないものにこだわりすぎた時に、そこからどうやって意識をそらすようにしていますか?

山田 私は『変わらないからいいや』となりますね。諦めがいいと言いますか。それだったら変えられるものを変えようと。自分の考え方だったり、そっちを変えた方が早いかなって思うようにしています。

塚越 基本の感情のコントロールができているという証拠ですね。感情コントロールで大事な点は『変えられないもの』にこだわるんじゃなくて、『変えられるもの』をいかに変えて、状況を好転させることです。

山田 私は悪いほうに思いがいきたくないので、変えられるほうを変えたいと思うのですが、逆に『でも~』って悪い方向にいってしまうのは、どういう考え方に基づくものでしょうか。というのも立場上、色々な人の考えがわからないといけない立場にいるので、教えて頂けるとありがたいです。

塚越 色々なタイプの人がいらっしゃるんですが、不安や恐怖に負けちゃっている時というのは、悪い想像しかできないように頭の中がなっています。悪いようになることは考えられても、山田選手のように悪くならない方は全く思い至らないという状態です。

山田:どうやったらその負のイメージを断ち切れるのでしょうか。

塚越 不安感が強い人が多いので、安心できる要素を増やしていく。それを増やしたところで良い想像ができるようになります。安心を担保した上で、1番オーソドックスなやり方としては、解決した未来を一生懸命イメージしてもらうことですね。『魔法がかかって、ある日起きたら全て解決していて、薔薇色の世界にいる』というそこだけをまず想像してもらう。想像がうまくいくようになったら、『絶対にこれをやったら結果が出る』ようにスモールステップに分解して、『まずはここだけをやってみようか』とやらせてみる。その上で『ほらできるじゃん!』と相手を認めて実績と自信をつけてあげるという方法ですかね。山田選手のお話を聴く時間なのに、解説して申し訳ないです・・・
 
山田 いえいえ。なるほどですね。とても参考になります!

 対談3回目となる次回は山田選手が「燃え尽き症候群」に陥ったときの話を深く掘り下げます。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

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塚越友子(つかこし・ともこ)

過去に自身で仕事中にうつ病を発症した経緯から、働く人のカウンセリングに注目。2008年に東京中央カウンセリングを開業。社会学修士号(社会心理学)教育学修士号(臨床心理学)。公認心理師・臨床心理士・産業カウンセラー。

山田恵里(やまだ・えり)

幼少期から野球を始め、高校入学と同時にソフトボールに転向。
高校卒業後、日立製作所に入社。日本リーグで本塁打王、打点王、ベストナインを獲得。
8連続安打のリーグ記録など卓越したバッティング技術から「女イチロー」の異名を持つ。2004年のアテネ五輪から代表入り、08年の北京五輪、今夏の東京五輪では共にキャプテンを務め、2大会連続金メダルに大きく貢献した。デンソー所属。


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