カーボンニュートラルで注目のZEH住宅、2021年の導入率は?

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2021年のZEH住宅導入率は26%。脱炭素で注目されるも普及ペースは上がらず

2021年11月16日にイギリスで開催されたCOP26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)が閉幕した。日本政府は、脱炭素を目指す方策の一つに、住宅のZEH(ゼッチ)比率を高めることを挙げている。リクルートの調査によると、2021年度に建設された注文住宅のZEH導入率が増加したという。詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
「2021年 注文住宅動向・トレンド調査」を発表/リクルート

ZEH認知率は約73%、導入率は約26%

ZEHとは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」を略したもの。住宅の断熱性を上げ、エネルギー消費量を抑える設備を設置することに加え、太陽光発電などによってエネルギーをつくり、年間の「一次エネルギー消費量」を正味(ネット)で、おおむねゼロ以下にするものだ。

また、ZEHが正味で一次エネルギー消費量を100%以上削減するのに対し、75%以上削減できる住宅をNearly ZEH(ニアリーゼッチ)と呼んでいる。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁の資料のうちZEHの定義より転載

出典:経済産業省 資源エネルギー庁の資料のうちZEHの定義より転載

リクルートが全国の注文住宅建築者に調査したところ、2021年建築者の「ZEHの認知率(内容まで知っている+名前だけは知っている)」は72.9%だった。2017年から増加傾向にあったが、2020年建築者の認知率が73.1%だったことから「頭打ち」の様相だとしている。

ZEH認知者に、ZEH導入検討の状況を聞いたところ、「導入した」のは26.2%で、過去最高の導入率だったという。

ZEH認知者における導入検討状況(全国/ZEH認知者)(出典:リクルート「2021年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

ZEH認知者における導入検討状況(全国/ZEH認知者)(出典:リクルート「2021年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

住宅の省エネ性を高めると、快適に暮らせる環境になる一方で、建築コストもかかる。ただし、光熱費が削減されるので、長期的にコストを回収することができる。では、どの程度の削減効果があったのだろう?調査結果では、平均で月に8060円、月に1万5000円以上という人も11.8%いた。

ZEH導入による光熱費等の経済的メリット(全国/ZEH導入者)(出典:リクルート「2021年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

ZEH導入による光熱費等の経済的メリット(全国/ZEH導入者)(出典:リクルート「2021年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

ZEH住宅の普及がカーボンニュートラルで求められる理由

調査結果のZEH導入率26.2%という数値は、実は政府の目標よりかなり低い。その理由を説明しよう。

COP26の「グラスゴー気候合意」では、世界の平均気温の上昇を1.5℃未満に抑えるために、温室効果ガスの排出量を2030年までに45%削減(2010年比)、2050年にゼロにすることも明記している。COP26に出席した岸田総理大臣も、「2050年カーボンニュートラル」の実現を表明した。

カーボンニュートラルの実現には、家庭での取り組みも重要だ。住宅も多くのエネルギーを消費しているので、さらなる省エネ化や脱炭素化の取り組みが求められている。TBWA HAKUHODOとFUKKO DESIGNが、「自分は何をしたらいいの?」と思っている人向けに制作した『気候変動アクションガイド』を見ると、「個人でできる対策と効果」として、最も温室効果ガスの排出量削減に効果があるのが、「ゼロエネルギー住宅」にすること、次いで「太陽光パネルの導入」だった(出典: Ryu Koide et al.(2021) Environmental Research Letters.16 084001)。

「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方検討会」が取りまとめたりまとめた2050年までのロードマップでも、2030年までに新築される住宅の省エネ基準をZEHレベルに引き上げること、新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が導入されることなどを提示している。詳しくは、SUUMOジャーナル記事「脱炭素社会の実現に政府が本腰。2030年の住宅のあるべき姿とは」を参照してほしい。

政府は、2020年ごろには新築住宅の半数ほどがZEH住宅になることを想定していたので、調査結果の26.2%ではかなり想定を下回ることになる。今後はZEHレベルの義務化を求めるなどで、新築のZEH住宅を一気に普及させる計画だ。

ますます進む太陽パネルの設置や住宅のZEH化

「2050年カーボンニュートラル」を目指して、ここに来ていろいろな動きが出ている。東京都では「新築住宅に太陽光発電の義務化」を検討していると報道されている。実現するかどうかまだわからないが、再生可能エネルギーの創出に力を入れる考えだ。

また、野村不動産は、分譲戸建シリーズ「プラウドシーズン」の大規模住宅地の展開において、温室効果ガス削減に寄与する取り組みを積極的に推進するとして、全75区画で太陽光パネルを搭載した新築一戸建てを販売した。東急不動産は、今後同社が開発する分譲マンション「BRANZ(ブランズ)」、高級賃貸マンション「COMFORIA(コンフォリア)」、学生向け賃貸マンション「CAMPUS VILLAGE(キャンパスヴィレッジ)」の全物件で太陽光パネルを標準搭載することを決めた。

このようにハウスメーカー、デベロッパー各社が新築住宅へのZEH化や太陽光パネルの搭載を強化する方向で動いている。これからはさらに住宅のZEH化などが進んでいくことになるだろう。

政府や自治体、企業は脱炭素に向けてかじを切りつつあるが、私たち個人が生活の中でできることはあるのだろうか。
先ほど紹介した『気候変動アクションガイド』を見てみると、「衣類は大切に長く着よう」「LEDへ交換しよう」「休暇は近場で過ごそう」「植物由来の食事に転換しよう」などが挙げられている。私たちの子孫が暮らす地球のために、今できることから始めたいものだ。

●関連サイト
「2021年 注文住宅動向・トレンド調査」を発表/リクルート
TBWA HAKUHODOと専門家の有志が制作『気候変動アクションガイド』を公開
「脱炭素社会の実現に政府が本腰。2030年の住宅のあるべき姿とは」/SUUMOジャーナル

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