現場の実感とはかけ離れている?介護現場の書類手続きの効率化|介護の教科書|みんなの介護

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現場の実感とはかけ離れている?介護現場の書類手続きの効率化|介護の教科書|みんなの介護

【科目】介護✕在宅介護  【テーマ】介護現場における書類手続きの効率化の現状と課題

【目次】
行政もオンライン化が進んでいない
クリアできない慣習とコストの問題

皆さんこんにちは。株式会社てづくり介護代表取締役の高木亨です。

働き方改革の実現に向けて各種関連法も施行され、各所においてテレワークの普及やデジタルツールの導入など業務の効率化が進みました。

介護分野においても、コロナ禍以前から効率化に向けた話は進められていました。業務の効率化を阻む懸案の一つに「膨大な書類・文書による事務負担」が挙げられ、負担軽減が試みられています。

社会保障審議会介護保険部会『介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会』中間とりまとめによると「順調に書類手続きの効率化は進んでいる」という結論が見てとれます。

実際に周囲の実感として「脱ハンコ」の動きがあるようです。一部ではリモートでの担当者会議も実現したとの話もありました。

しかし、一方で現場レベルで書類手続きの効率化・負担軽減を実感できているかどうかといえば私が周囲に伺った中では、ほとんどありませんでした。

そこで今回は書類手続きの効率化が進んでいるという話と現場での実感との差がどうして生まれているのかのポイントをいくつか挙げてみようと思います。

行政もオンライン化が進んでいない

まず1つ目が「介護分野の文書に係る負担軽減」として今回中間報告に取りまとめられた簡素化・標準化・ICT化などの活用については「現場レベルの書類・文書」はほとんど含まれていないことが理由の一つとして考えられます。

令和元年度内を目途として進められてきた主な取り組みは以下のようになります。

介護事業指定申請・許可にあたっての様式・添付書類の削減や簡素化
実地指導に際し提出する文書の簡素化
省令改正・様式例改訂の周知徹底による標準化
実地指導のペーパーレス化・画面上での文書確認など

これらのほとんどは管理者以上か、それに近い事務が携わる部分ですので「現場レベル」といったとき、かなり距離があると言わざるを得ません。関係が出てきそうなのは「実地指導のペーパーレス化・画面上での文書確認」ですが、各施設や事業所の介護従事者にその軽減が実感できるレベルで浸透している現場はそう多くはないと考えられます。

2つ目に、そもそも行政側の書類手続きの効率化・オンライン化が進んでいないことが理由として考えられます。

2020年6月18日の日本経済新聞によると、中央省庁全体で55,000件以上あるとされる行政手続きのうち、ネット上で手続きを完結できるものは7.5%しかないとのことです(2019年3月末時点)。

今から20年も前に「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)」が施行されていますが、新型コロナウイルス対策での「特別定額給付金」のオンライン申請では、多くの自治体で受付停止が余儀なくされました。こうした実態からわかるように行政のオンライン化はまだまだ時間がかかりそうです。

もちろん、オンライン化に向けてさまざまな法制度が追加で施行され続けていますし、実際に進んではいるのでしょうが、各種手続きで必要とされる紙の添付書類は相変わらず多数存在しています。

各種手続きにおける添付書類は今も多数存在

クリアできない慣習とコストの問題

3つ目は「各自治体によるローカルルールの存在」です。介護保険制度の「全国どこにいても同一基準で同一サービスを受けられる」という建前は、現実とは乖離していると言わざるを得ません。そのことについては以前の記事でも触れましたので今回は割愛しますが、書類手続きにおいてもローカルルールは存在します。

このことは『介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会』中間とりまとめでも一部触れられています。例えば、更新申請時の提出書類の量は「最も少ない自治体では2枚、最も多い自治体では149枚」などとかなりの差があります。

各種書類の保存・保管期間についても最も短い自治体では1年、最も長い自治体では永久の保管を求められています。それをデジタル化するとしても10年以上も積み上げられた書類をデジタル化する労力とコストは尋常ではありません。

そして4つ目がお金・人材・時間といったコストに関わる問題です。デジタル化を進めるにあたってコストがかかります。言うまでもなく、介護保険事業は市場のニーズによって価格が決まるわけではありません。しかし「あるものでどうにかせよ」ということになれば、現場に新たな負担を強いることになり業務の効率化どころかむしろ負担増となりかねません。

そして、ただでさえ3年ごとに改正・改定が確実に行われる業界にあって、効率化のために変更に次ぐ変更を従事者へ課されれば業務の効率化を実感できることなど到底あり得ないでしょう。介護業界の介護従事者の平均年齢は今や50歳に近いのです。デジタル化を進めること自体も遅きに失した感があります。

自治体による地域差やコストにも問題がある

医療や介護は「高確率で生じうる万が一に備えた制度」であって、「使わずに済むならそれに越したことはない」ものです。つまり、「常に余力がある状況」が望ましいのであって「常にギリギリで運営されていて良いものではない」でしょう。それこそ業務の効率化のために最優先で投資され、最先端で進められてしかるべきところと思われますが、常に言われるのは「予算がない」という問題です。

予算がないから問題が解決せず、非効率なままの予算がかかり続けている現状が解消されないという状況が一刻も早く改善され、介護現場レベルで負担が軽減されたと感じられるようになることを切に望みます。

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