訪問リハで大切な3つの力。現場から持ち帰るべき情報とは?|介護の教科書|みんなの介護

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訪問リハで大切な3つの力。現場から持ち帰るべき情報とは?|介護の教科書|みんなの介護

【科目】介護✕リハビリ  【テーマ】訪問リハビリで大切にしたい現場から持ち帰る情報

【目次】
訪問リハビリの特徴
訪問リハの現場から持ち帰るべき情報の具体例
訪問セラピストに必要な3つの力

こんにちは、YouTube「訪問リハ&訪問看護&介護保険【制度マニア】」の運営者であり、訪問看護ブログ「ビジケア訪問看護経営マガジン」の編集長、書籍『リハコネ式!訪問リハのためのルールブック【第二版】』著者の杉浦良介です。

理学療法士などが年々増加し、訪問リハビリテーションや訪問看護といった介護保険領域で働くセラピストも増えてきています。

昔は「養成校卒業後、3年間程度は急性期や回復期の病院で勤務して基本の経験を積んでから訪問リハビリで働いた方が良い」と言われてきました。その理由としては、訪問リハビリの現場は「一人」という環境だからです。

しかし、最近では理学療法士などの養成校卒業後、新卒で訪問リハビリの世界に飛び込む人も増えてきました。

私は10年以上訪問リハビリの経験があります。「セラピストが利用者さんのお宅に訪問をして帰ってくること」はどんなセラピストでもできると思います。しかし、その訪問リハビリの質には差が生じます。

病院などで多くのセラピストや、ほかの専門職がいる現場では見落とすことがないことも、訪問リハビリというたった一人の現場では見落としてしまうこともあるかもしれません。

今回は、訪問リハビリの経験10年以上の立場から「訪問リハの現場から持ち帰るべき情報」についてお話をしたいと思います。新卒で訪問リハビリに挑戦したい方や、これから訪問リハビリで働きたいと思っている方はぜひ読んでいただけると嬉しいです。

訪問リハビリの特徴

訪問リハビリの最大の特徴は、利用者さんの自宅にセラピストが訪問し、その自宅という環境でリハビリをするという点です。

自宅という環境では、基本的には利用者、セラピスト、家族しかいません。一方、病院などの医療機関では、ほかのセラピストや医療職(医師や看護師など)が同じ建物や空間にいるため、相談しやすい環境だと言えます。また、自身で気づかなくても周りの温かい目で間違いに気づいてくれることもあります。

一方、訪問リハビリは、ほかに誰も医療職がいない環境において一人で判断したり、問題解決したりしなければいけないということが、ハードルが高いと言われている理由の一つになっています。

訪問リハビリは下記の流れで行います。

利用者さんの自宅に訪問する
そこでリハビリをする
事業所に戻る

上記の1~3の流れをこなすだけなら、最低限の知識がある資格をもった専門職なら可能だと思います。しかし、リハビリの対象者はさまざまな病気を持っている方々です。ですから、下記のようなことも起こり得ると頭に入れておかなければなりません。

【パターン1】

利用者さんの自宅に訪問する
利用者さんの状態が悪いことに気づく
その場で対応する
事業所に戻る

【パターン2】

利用者さんの自宅に訪問する
そこでリハビリをする
事業所に戻る
その後、利用者さんが急変して救急車で運ばれる

【パターン1】は、利用者さんの状態が変化しており、利用者さんの状態の変化に気づくことができました。しかし【パターン2】では、利用者さんの状態が変化していましたが、利用者さんの状態の変化に気づくことができませんでした。訪問セラピストであれば、【パターン2】のケースを防ぐ必要があります。

こうした課題を解決するためには下記のような流れをあらかじめ認識しておかなければなりません。

STEP1:利用者さんの状態変化に気づくことができる

STEP2:一人で判断をする(一人で判断できなければその場で電話やテレビ電話などを利用してフォローを依頼する)

課題を見つけたうえで解決方法がわからなければ、他の人がフォローすることはできます。しかし、課題が見つけられなければ、その後のフォローすらできません。したがって、課題解決の方法より、課題発見(気づくこと)が非常に大切なのです。しかし、この課題発見の方が難しいと思います。これが一人で訪問する難しさかもしれませんね。

利用者の課題解決よりも課題発見の方が難しい

訪問リハの現場から持ち帰るべき情報の具体例

訪問リハの現場から持ち帰るべき情報とはどんなものがあるのか具体例を示していきたいと思います。

ケース1

血圧の薬が処方されていたが血圧が高い状態が続いていた。そもそも薬を飲むことができていなかった

ケース2

認知症で自分の状態を訴えることができない利用者。いつもと何か違うと思ったら一週間、便が出ていなかった

ケース3

慢性腎不全の利用者。いつの間にか両下肢の浮腫が増強しており、体重も大幅に増加していた

ケース1~3の状態であることを見逃して帰ってきてしまうセラピストもいれば、しっかりと情報収集をしたうえで危険認識を持って帰ってくるセラピストもいます。上記のように具体例を示していれば、「そんなこと見逃すわけがない!」と思う人も多いと思いますが、実際に普段と変わらない訪問リハビリの中で、上記のようなケース1~3の状態を発見すること自体が難しい場合もあります。それが先述した「課題が見つけられなければ、その後のフォローすらできない」ということなのです。

訪問セラピストに必要な3つの力

訪問リハビリの現場から多くの情報を持ち帰るためにはどのような能力が必要なのか話をしたいと思います。

訪問セラピストに必要な3つの力は下記の通りです。

1.話を聴きだす力

訪問リハビリは自宅に訪問をして運動をするだけではありません。その中でさまざまなお話をして困ったことがないかなどを確認します。例えば、下記の通りです。

排泄(便や尿)はしっかり出ているか?その頻度や形態、色はどうか?など
食事は摂れているか?量、内容、咽せはないか?など
水分を摂取できているか?何を?どのくらい?とろみが必要ならつけられているか?
夜は眠ることはできているか?睡眠時間、夜間の尿の回数、睡眠薬の使用の有無など
薬は飲むことができているか?時間帯、正しく飲めているか、悩みはないか?など
転倒や転落はないか?あるならば場所、頻度、原因は?など
受診は行くことができているか?何科に?頻度、受診状況、医師からの説明内容など
外出はできているか?頻度、どこに、誰と、どのように?など

これは一例に過ぎません。聴取すべきことは利用者さんの疾患や個人因子、生活環境など置かれている状況によって変わります。今、何を聴くべきかを常にアンテナをはって話から聴き出す力が大切となります。

2.身体状態を診る力

入院中は主に看護師さんが体温や血圧を測定してから、リハビリ専門職がリハビリをすることが多いです。しかし、在宅生活では必ずしも看護師がかかわるわけではないため、訪問セラピストは最初に必ず身体状態を診る必要があります。

この身体状態を診る力のことをフィジカルアセスメントとも言います。「話を聴きだす力」と重なるところもありますが、「問診」とフィジカルイグザミネーション(「視診」、「触診」、「聴診」、「打診」)を用いて、身体的健康上の問題を明らかにするために、全身の状態を系統的に査定することを指します。

問診:利用者さんの身体の訴えを聞く(疼痛、痒み、苦しさなど)
視診:利用者さんの全体を視て観察
触診:利用者さんに触れて皮膚などの状態をみる
聴診:呼吸音や心音、血管音、腸音などをみる
打診:叩いてガスや疼痛などの内部の確認など

在宅生活を送る利用者さんの変化をできるだけ早期発見するためには看護師さんの専門分野であるフィジカルアセスメントの能力も身につける必要があります。

3.情報を総合的に結びつける力

「話を聴きだす力で得た情報」や「身体状態を診る力で得た情報」や「そのほかの情報」を総合的に結びつける力が訪問セラピストにはとても大切になります。

例えば、「体温が38℃」+「血尿」+「最近体調が悪いと感じている」+「自己導尿実施者」+「過去に膀胱炎の既往あり」という情報が集まった場合、もしかしたら普通の風邪ではなく、膀胱炎や腎盂腎炎が疑われるため、早めに医師に連絡をして受診を勧める必要があります。

よって、あらゆる情報を総合的に結びつけて、時にはそこから新たな情報を聞くという能力が必要になるのです。

訪問セラピストが身につけたい「3つの力」

今回は、「訪問リハの現場から持ち帰るべき情報」の大切さとその情報を持ち帰るために必要な3つの能力について説明をさせていただきました。

まず、訪問リハビリは基本的には一人で訪問するため、「利用者さんの状態変化に気づく」必要があります。そして、利用者さんの状態変化に気づくためには、上記で説明した3つの力が大切になります。

これから訪問リハビリで働きたい人は、これらの力を身につけておくことが大切です。また、今、訪問リハビリで働いている人はなるべく多くの「訪問リハの現場から持ち帰るべき情報」を意識して普段の業務にあたることができると良いと思います。

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