森川葵、菅田将暉の青春映画の名編も! 映画『チョコリエッタ』ほか風間志織監督特集、風間監督に聞く<過去と現在、そして未来>

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撮影当時10代だった森川葵、菅田将暉を起用した『チョコリエッタ』(14)をはじめ、『火星のカノン』(01)、そして『せかいのおわり』(04)もデジタルリマスター上映で併映する<風間志織監督特集>が、現在全国の劇場で順次上映されています。10代で注目を集めた監督デビューから40年、風間志織監督は当時どういう想いで作品を撮り、『チョコリエッタ』(14)の作品世界の2021年になった今をどう見つめているのか。ご本人にお話をうかがいました。

■公式サイト:https://joji.uplink.co.jp/movie/2021/10170 [リンク]

●まず『チョコリエッタ』(14)ですが、菅田将暉さん、森川葵さんが現在のような大ブレイクする前の起用でしたね。

菅田さんは「仮面ライダー」の時点で売れるだろうなと思ってはいましたが、今一番売れている俳優みたいになっていて、ここまでになるとは思っていなかったですね。というか今聞かれるまで、そういうことを考えたことはなかったですが(笑)。

彼はとても理解が早い子でした。「君たちの役は抵抗する役だ」と説明したのですが、彼はすぐに理解しました。中には「どういうことですか?」と聞いてくる子もいて、抵抗の意味さえわからない人もいるのかと衝撃を受けましたが、彼はまったく違いましたね。そういう意味でも今のようになる素質はあったのかも知れません。

森川さんは、彼女の素材自体が抵抗でした(笑)。それで選んだようなものですね。オーディションの時、彼女の存在自体が抵抗でした。思春期の怒りのようなものを持っていて、面白かったです。当時から異常な運動神経の良さが際立っていて、撮影のために急に狭いところに乗ったりできたんですよ。なので今の活躍につながっているところはありますよね。

●『チョコリエッタ』(14)は、物語の設定的にも内容的にも今特集上映する意味があると思いましたが、当時どういう感想が届いていたのですか?

今思い出すと、政治的なメッセージを映画に入れてくれるなという人と、まったく逆で「そんなメッセージがあるのか」と驚く人でわかれたかな(笑)。これはそれが嫌いかそこに気づかないかの問題で、好きな人もいたと思いますが、そういう人の声はあまり出ないものなんですよね。何回も観に来てくださった方はそういうものが好きなのか、菅田将暉さんが好きなのか(笑)。時代背景はそういう感じでしたかね。

後は東京国際映画祭で初お披露目をした時、上映後の質問コーナーで「すみません、このおめでたい席でなんですが、この映画は放射能を描いていますよね?」と言われたんですよね。わたしは「いや全然よいですよ」とお答えしましたが、当時はまだそういうことを言いにくい意識が、人々の中にあったことがハッキリわかりました。

●8年でずいぶん世の中も変わるものですよね。

その時は30代くらいの男性の方で「原発事故前提の放射能ですか?」という質問だったので、「そうです」としか答えようがなかったのですが、こんなおめでたい席でのという前置きがあって、今思えば当時はそういう世の中だったのかと思いますね。あとは鼻血のシーンにご立腹の方もいました。放射能で鼻血は出ないと、そういうシーンを作ってはいけないと。それはわたしの理解とは異なるのですが、ああ、悪いことをしたなあとは思いました。その人の恐怖心を怒りに変えてしまったんですね。別な表現もあったかも知れないなと、その当時は思いました。

●ただ、2021年はコロナ禍になり、受け入れがたい現実が起こるという奇妙な偶然があるなかでの特集上映については、どう受け止めていますか?(プロデューサーさんのお話によると、もともと映画が、2021年が世界の作品だから特集上映の準備をしていたが、偶然マッチングしてしまったそうです)

最初、個人的にはラッキーなくらいにしか思っていなかったのですが、これも皮肉なもので、コロナ禍で新作の日本映画の製作が減り、旧作が上映できる機会が増えたんですよね。なので、あえてポジティブに捉えれば、悪いことばかりではなかったということでしょうか。

●その意味でも今回、デジタルリマスター版で『せかいのおわり』と『火星のカノン』もよみがえりますね。

『火星のカノン』はいろいろな恋愛の映画を撮りましょうと、わりと軽い気持ちで始めたと思います。いろいろな愛の形としてレズビアン、同性愛、不倫、そういうものを普通に描くと面白いだろうと始めました。改めて今観ても、普通に描かれているなと思いました。ただ当時、配給会社を探していた時に「恋愛映画は、もう流行らない」と言われたんですよ。当時、流行っていなかったらしいです(笑)。2000年当時、驚いた記憶があります。

●今観ても普通ということは、普遍性があったということですよね。

オーソドックスだったなあと。正解だったとは思いますが、わたしの読みが甘かったのは、わりと同性愛に関しては寛容な社会になるだろうと思っていたんです。そういう希望的な読みがあったからこその映画なのですが、そうしたらそうではなかったし、ここまでの差別があったのかと当時は気づいていなかった。そこまで根深いものではないだろうと、すぐにわかりあえるだろうと思っていました。

●『せかいのおわり』は、どういう想いでスタートした作品でしたか?

これは、日本は平和だというところから始まっているんです。日本はのんびりしているが、まわりでは戦争がたくさんありますよ、というテロのお話なんです。実は『火星のカノン』の後に怒っていたんです。わたしは『火星のカノン』の頃まで、世界は平和になるとどこか信じていたんですね。そうしたら9.11が起こり、NYがあんなことになり、アメリカが初めて直接的に攻撃されたわけですよね。今だにアフガンの問題は残っていますが、そこが出発点になっている作品です。

●この作品もまた、現代とのシンクロ率が高いですよね。

個人的なテロを描きました。個人が個人としてみんがテロ行為をしてしまう世界です。恋愛の中のちょっとした恨みなど、個人がみなテロリストになり、お互いに傷つけあう、そういう話の中でやっていくと、やがて何もできなくなるんです。でもラストで、そういう世界じゃなくなるといいね、という願いがあるのですが、これが今の時代にどう受け止められるかわたしにはわからないですね。

●監督には今からの未来はどう見えていますか?

あまり希望的なことが浮かばないから、作品のアイデアも浮かばず、辛いですよね(笑)。わたしは当時、原発問題もなくなるだろう、差別もなくなるだろう、戦争もなくなるだろうと思っていて映画を撮っていたわけです。なので本当に悪い方向に行くと、自分には何ができるだろうと思うんですよ。ひどいものをひどいと描いたところで、物語にはならないんですよね。希望が見えないので、どうしたらいいかなと思っているところです。

とはいえ、希望は…なくはないのかな(笑)。今ある状況でウソをつかず、何かを希望に変えていきたい。今は何を希望に変えようか、悩み始めているところですかね。

■作品紹介

『チョコリエッタ』 リバイバル上映
2014 年製作/159 分/5.1ch/PG12

風間監督自身、初の原作ものとなった『チョコリエッタ』(14)は、森川葵、菅田将暉を起用し、設定を原発事故から10年後の2021年に翻案して映画化。未来に希望が見えない21世紀を生きる少年少女たちを寄り添うように描いた設定の年である本年、リバイバル上映が決定した。

『火星のカノン』
2001 年製作/121 分/5.1ch

2001年製作の『火星のカノン』は、小日向文世、久野真紀子(現・クノ真季子)、中村麻美らが出演し、家族を持つ男との恋愛やLGBTも同じ地平で「愛する」とは何かを描く。

『せかいのおわり』 デジタルリマスター上映
2004 年製作/112 分/5.1ch

2003年製作の『せかいのおわり』は、中村麻美、渋川清彦、長塚圭史、田辺誠一、つみきみほ、小林且弥、高木ブーなど多彩な出演者が揃い、幼なじみの男女を中心にすれ違う恋模様をコメディタッチで写し出す。

(執筆者: ときたたかし)

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