“ストーリー”で差がつく! 専門学校の志望理由書の書き方とは?
近年、多くの専門学校の入試で提出が求められる「志望理由書」。
受験生にとっては、自分をアピールするための最初のチャンスだ。
キラリと輝く志望理由書にするためには、実は“ストーリー”が大事!
何をどのように書けばいいのか、書き方のコツをつかんで、チャンスをモノにしよう!
教えてくれたのは
神﨑史彦先生
株式会社カンザキメソッド代表取締役。スタディサプリ講師。私立学校研究家。
高大接続・教育コンサルタント。21世紀型教育機構リサーチ・フェロー。
大学卒業後、大学受験予備校において小論文講師として活動する一方、通信教育会社や教科書会社にて小論文・志望理由書・自己アピール文の模擬試験作成および評価基準策定を担当。
のべ6万人以上の受験生と向き合うなかで得た経験や知見をもとに、小論文・志望理由・自己アピール・面接の指導法「カンザキメソッド」を開発する。
現在までに刊行した参考書は26冊(改訂版含む)、販売部数は延べ25万冊、指導した学生は10万人以上にのぼる。
専門学校の志望理由書とは?
志望理由書は合否を左右する重要な書類
志望理由書とは、「なぜその学校(学科・コース)で学びたいのか・どんなことを学んでどうなりたいのか」という志望理由や志望動機を記した書類のこと。
当然ながら受験生自身が書くもので、入試の出願時に提出が求められ、その後の面接試験でも参考にされるケースが多い。
つまり、合否を左右する重要な書類なのだ。
特に専門学校の志望理由書では、学校で学んだ先に就く職業について、「なぜその職業に就きたいのか・その職業に就いて将来どんなことをしたいのか」まで記すのが特徴だ。
また、志望理由の根拠となる自分の興味・関心や強み、特性、経験をアピールすることも大事。
読み手(専門学校の教職員)が、「この子ならうちの学校で熱心に学び、知識・技能を習得し、社会に出てからも活躍できる」と納得できるような内容にすることが求められる。
納得してもらうためにも、例文のコピペのような志望理由書はNG(読み手はプロ。すぐにバレてしまう!)。
自分の思いを自分の言葉で表現することが何よりも重要だ。
まずは下記の「基本構成」を頭に入れ、具体的な書き方について見ていこう。
【志望理由書の基本構成】
自分は、○○という技能を身につけたい〔身につけたい技能=目的〕
自分は将来、○○という仕事に就きたい〔就きたい職業=目的〕
↓
なぜならば、〜〜だからだ〔理由〕
(=自分の興味・関心や強み、特性、経験といった「根拠」を追加)
↓
そのためには、××という学びが必要だ〔手段〕
↓
その学びが可能なのが、この学校なのだ〔結論〕
(=なぜこの学校に魅力を感じたのか「理由」を補強)
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志望理由書の書き方“4STEP”
志望理由書は、書く前の「準備」が命。
自分自身について振り返って分析したり、職業や学校について理解を深めたり、将来はどんなふうになりたいのか未来を描いたり…。
そうしたプロセスを経て、自分自身の“ストーリー”を作っていくことが大事なのだ。
STEP1. 自分自身のことを振り返る
どんなことが好き、得意かなどを書き出してみよう
専門学校への進学は、多くの場合、職業選択に直結する。
憧れやイメージだけで「なんとなく」職業を選んでしまうと、進学後や就職後にミスマッチに苦しむことになる。
そうならないためにも、「自分の特性に合っているか」「心から興味・関心をもてるか」という視点が重要だ。
志望理由書を書く前に、まずは自分自身のことを改めて振り返ってみよう。
自分が好きなことや得意なこと、長所や強み、特性、これまでの印象的な経験などを書き出してみるのがオススメ。
書き出したら、そうした要素が就きたい職業にどう関連づけられるかを考えてみよう。
とはいえ、自分がどんな人間かというのは、意外と難しいもの。
家族や友人に尋ねてヒントをもらうのもいいだろう。
そして、自己分析の次は、未来の自分に目を向けよう。
「この職業に就いて、どんなふうに人の役に立ちたいか」「身につけた技能を活かして、どのように社会に貢献したいか」といった職業選択の一歩先まで掘り下げてみよう。
これが、志望理由書では効果的なエッセンスとなるのだ。
【振り返りの視点の例】
・どんなことが好き、または得意か。
・どんな分野に興味・関心があるか。
・自分の性格的な長所はどこか。
・これまでに影響を受けた・心動かされたのはどんなときか。
・高校時代はどんなことに力を入れてきたか(勉強、部活動、課外活動など)。
・進路を考えるきっかけとなったできごとは何か。
・今の社会、これからの社会についてどう考えるか。
・将来、どんな大人になりたいか。
・世の中にどう貢献したいと考えているか。
【自己分析の例】
・人とコミュニケーションをとるのが好きで、人の話を聞くのも得意。
・音感やリズム感があり、音楽が大好きで成績も良かった。
・絵を描くのが得意で、高校ではポスターのデザインなどをよくまかされてきた。
・人のお世話をするのが好き。祖父母の介護も積極的に手伝ってきた。
・運動が得意で、人に教えるのもうまいとよく言われる。
・パソコンやメカに強い。細かく手間のかかる作業も苦にならない。
【未来のビジョンの例】
・身につけた技能を活かして、過疎化が進む地域のデジタル化を進め、どこに住んでいても情報にアクセスできる社会をつくりたい。
・将来は訪問看護師として、地域の高齢者の方々のQOLを高めたい。
・保育の現場で経験を積んだのち、子どもたちの個性を伸ばす幼児教室を立ち上げたい。
STEP2. 職業のことを深く知る
イメージだけで職業を選んでいないか改めて考えてみよう
「子どもが好きだから保育士になりたい」「ドラマで見てあこがれて看護師を目指した」というような人は要注意。
安易な理由やイメージで職業を選んでいないだろうか。
志望理由書を書く前に、改めて、就きたい職業について調べてみよう。
大事なのは、断片的な側面だけでなく、多角的な視点から総合的に見てみること。
当然、どの職業もいいところもあればそうでないところもあるので、両方を知ったうえで判断してほしい。
職業体験などに参加することも大事だが、それだけでは得られない深い情報もある。
オススメは、実際にその職業に就いている人のホンネを見聞きすること。
動画サイト、SNS、ブログ形式のサイトなど、今はさまざまな媒体で発信されているのでチェックしてみよう。
ただし、いずれの情報もうのみはしないこと。
冷静かつ客観的な視点で、「数ある側面の一つ」とらえよう。
【職業理解の例】
・保育士は子どもの成長を見守り支える社会的にも重要な存在。保護者からのクレーム対応など大変な面もある。
・看護師は患者さんの心身のケアをする貢献度の高い仕事。人手不足で忙しく夜勤もあり、心身共に疲弊してしまう人もいる。
・美容師は手に職をつけることができ、働く場所を選ばず、出産などのライフイベントがあっても復帰しやすい。洗髪や立ち仕事で腰を痛める人が少なくない。手指も荒れるので肌が弱いと向かない。
・簿記の資格を取得すれば経理担当として活躍の場が広がるが、5年後、10年後にはAIなどの進化により不要なスキルになっているかもしれない。
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ほかの学校と比較検討しながら学校の強みや特長を理解しよう
志望理由書では、結論として、「この学校で学びたい!」という思いをアピールする必要がある。
そして、「なぜこの学校で学びたいのか」という根拠や理由を訴えることができれば、より説得力のある志望理由書になる。
そのためには、志望する学校のことを深く理解することが不可欠だ。
その学校の特色を洗い出すには、ほかの学校と比較・検討するのが有効だ。
「違い」を意識することで、その学校の強みや特長が見えてくる。
オープンキャンパスにはできるだけ参加し、積極的に情報を集めよう。
ポイントは、どんなコースがありカリキュラムや授業の内容はどうか、実習などができる施設・設備は充実しているか、卒業生の就職先にはどんなところがあるか…など。
新しくてキレイな校舎や就職率や資格試験合格率という見た目や数字だけを見るのではなく、より本質的なところに目を向けよう。
例えば、同じ調理系の専門学校でも、中華に強い、フレンチに力を入れている、和食に伝統がある…などそれぞれに特色がある。
それを理解しているのといないのとでは、志望理由書の深みはまったく変わってくるのだ。
【学校のチェックポイント】
・コースやカリキュラムの内容
・どんな授業が開講されているか
・どんな専門分野をもつ先生がいるか
・取得できる資格や技能
・学校の沿革(歴史やなりたち)
・施設や設備の充実度
・先生や在校生の雰囲気
・奨学金制度など学生生活の支援体制
・卒業生の就職先・進路
【学校理解の例】
・保育士と幼稚園教諭の免許がダブルで取得できる。
・奨学金制度が充実しており、経済的な面でも安心して学べる。
・製菓のなかでも和菓子や中華菓子に強い。
・実習の設備や器具が充実していて、授業では一人につき一台利用できる。
・卒業生の就職先に、地元の有力企業が多い。
・近隣の事業者との連携が強く、インターンシップの機会が充実している。
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STEP4. 文章にまとめる
自分の言葉でシンプルに、ストーリーを伝えよう
自分自身、職業、学校への理解を深めたら、いよいよ志望理由書を「書く」というステージになる。
いきなり書くのではなく、“ストーリー”を頭の中で描くことから始めよう。
先に紹介した「志望理由書の基本構成」の流れを参考に、筋道を立てていくといい。
文章を書くことに苦手意識がある人にオススメなのが、口に出して話してみること。
最初は普段使う話し言葉でいいので、まずは口頭で表現してみよう。
ストーリーを説得力のあるものにするコツは、「〜したい」「〜と考える」と主張する際に、必ず「理由(なぜならば)」を添えること。
「私は○○という仕事に就きたい。なぜなら私は〜だからだ」「貴校は〜だから、私は貴校で学びたいと考えた」というように、主張の根拠をしっかりと伝えよう。
さらに、STEP1で掘り下げた職業選択の先のビジョンにも触れること。
これにより「将来を見すえたうえで職業や学校を選んでいる」「社会とつながる意識が高い」という好印象を与え、差をつけることができる。
書くときは、自分の言葉でシンプルに。
ストーリーを伝えることが何よりも大事なので、細かい表現よりもきちんと筋道が通っているかを意識すること。
「AなのでB」「AだからB」「Bなのは、Aだから」などの表現を使い、理由をうまく挟み込んでいこう。
そして、志望理由書は、必ず第三者に添削をしてもらうこと。
論理が飛躍していないか、言いたいことが伝わる文章か、誤解されないか、そもそも中身が詰まっているか…など、着眼点は人それぞれなので、できれば複数の人にチェックしてもらうのがいいだろう。
【志望理由書の例】
(第1段落:どこで何を学び将来どうなりたいか)
私は、○△専門学校○○学科△△コースでプログラミングの技能やリテラシーを身につけ、将来は第一線で活躍できるようなプログラマーになりたいと考えています。
(第2段落:そう考えるようになった理由)
私は小学生のころから、ロボットなどを自分でプログラミングして動かすのが大好きでした。
内向きな趣味だと思っていたのですが、あるとき自作のロボットを見た高齢の方に「こういうのがうちにあると楽しそうだね」と言われ、自分が作ったものが人のためになる可能性があるんだということに驚きました。
それから、自分が好きなことを仕事にして、さらに人や社会の役に立てたら最高だと考えるようになりました。
これが、私がプログラマーをめ目指した理由です。
(第3段落:なぜこの学校で学びたいのか・入学して何をしたいか)
これまでは独学で勉強してきましたが、専門家から本格的に学びたいと考え、専門学校への進学を決めました。
貴校○○学科△△コースに惹かれたのは、プログラミングの技術や知識だけでなく開発系の知識も学べること、さらに、卒業生が業界の有名企業に就職して活躍していることに魅力を感じたからです。
貴校ではITに関する広く深い知識とスキルを身につけ、インターンシップなどにも積極的に挑戦したいと考えています。
プログラマーとしてだけでなく、将来的には社会に役立つシステムなどの開発にも携わりたいと考えている私には、貴校はまさに最適な学校です。
志望理由書最終チェックリスト
☑ポイント(職業・学校の志望理由・動機)が押さえられているか。
☑筋道(理由と結論)が破綻していないか。
☑誤字や脱字はないか。
☑文体(です・ます調 or だ・である調)は統一されているか(文体はどちらでもよい)。
☑読みやすく段落分けができているか(3〜4段落が一般的)。
☑字数は適量か(指定字数の最低8割〜字数内に収める)。
☑学校名や学科・コース名は正式名称で書けているか(文中では「貴校」とする)。
まとめ: “ロジック”と“心”のある志望理由書を
自分自身と真剣に向き合った成果が志望理由書に表れる
専門学校の志望理由書には、社会に出るための最初の一歩という意味合いもある。
だからこそ、たかが書類とスルーせず、しっかりと自分と向き合う機会ととらえよう。
そして、誰かのストーリー、よくあるストーリーをなぞるのでなく、自分だけのストーリーを自分の言葉で描くことが重要だ。
自分自身と真剣に向き合ったかどうかは、志望理由書に表れる。
ロジックなき志望理由書はもちろん、心なき志望理由書では相手には伝わらない。
志望理由書は、自分がどんな人間でどんなことを考えているかをアピールするチャンス。
最大限に活かして、合格を手にしよう!
取材・文/笹原風花 監修/神﨑史彦 構成/寺崎彩乃(本誌)
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