50年分蓄積された次元大介のカッコよさ 二代目声優・大塚明夫「自分で引き受ける方が納得がいく」ファン故の決断『ルパン三世 PART6』インタビュー
2021年10月9日より日本テレビ系で全国放送スタートとなる、アニメ化50周年記念の新作テレビアニメ『ルパン三世 PART6』より、次元大介を演じる大塚明夫さんのインタビューをお届けします。
アニメ化50周年を記念する今作『ルパン三世 PART6』には、超豪華なゲスト脚本家陣が参加。シリーズ構成を務めるのは、映像化作品多数の推理小説家でありアニメ・特撮の脚本も手がける大倉崇裕氏が担当し、オムニバスエピソードの脚本には特別ゲストとして、辻真先氏、芦辺拓氏、樋口明雄氏、湊かなえ氏、押井守氏など、小説界・アニメ界を賑わす豪華な顔ぶれが名を連ね、今シリーズのルパンを紐解くキーワード、謎多き〈ミステリー〉の世界へと視聴者を誘います。
初代・次元大介の声優を務めた小林清志さんが卒業され、今シリーズより新たに大塚明夫さんが次元を引き継ぎます。アフレコのお話や反響について、次元に対する想いなどお話を伺いました。
次元大介の大ファンが故の決断「他の方が演じているのを観て寂しい気持ちになるよりは、自分が叩かれれば済む」
――次元役の交代について、まずどういった経緯で大塚さんにお話が来たかお聞かせください。
大塚:事務所から次元声優のお話があり、そのときに、「清志さんの身に何かあったのかな?」という想いが先によぎりました。その後、清志さんの身に何かあったわけではないと聞きホッとして、それからは「大変だ」というプレッシャーに変わりました。
――では、元から事務所さんを通してのオファーという形だったのですね。すぐに引き受けるとお返事したのですか?
大塚:答える以前に、清志さんに何かあったのかという心配が先に来てしまい。無事だということを聞いて、ホッとしてそれからです。
僕自身が小学生の頃からリアルタイムで次元大介の大ファンだったので、あの次元のビジュアルから清志さんではない声がすることが、僕自信が納得しかねる、という想いがあります。でも、僕が「嫌です」とオファーを断ったとしても、他の誰かが引き継ぐことは変わりません。それとどちらが嫌だろうと比べたときに、他の方が演じているのを観て寂しい気持ちになるよりは、自分が叩かれれば済むのかなと(笑)。
自分が叩かれる分には自分のせいだから、受け止めるしかない。自分で引き受ける方が納得がいくかな、と思い、「喜んでやらせていただきます」とお返事しましたが、気持ちは複雑です。
――引き継いだ皆さんは最初は複雑なお気持ちですよね……。
大塚:嬉しい想いに負けないだけ「嫌だ」という気持ちとせめぎあいます。初代の方が良いに決まっています(笑)。加えて、清志さんは50年も演じ続けてこられたのですから。
――小林さんとは何かお話をされましたか?
大塚:清志さんとはお話できないまま、収録が始まりました。本当は清志さんのところに挨拶も行きたかったのですが、来られてもどうなんだろう、という想いもあり、行けないまま動き出してしまったんです。
その後、先日発表になった声優交代についてお手紙という形でのコメントを清志さんからいただいたのですが、僕は「PART1」からリアルタイムで観て育っているので、清志さんの言葉が50年の重みを持ってのしかかってくるんです。
でも、そのお手紙でヒントをいただきまして、すごく霧が晴れたような、地獄に住んでいたら蜘蛛の糸が垂れてきたような、救いを感じました。声優交代が発表になり、少しホッとした部分はあります。
参考記事:
アニメ化50周年『ルパン三世』次元大介の声優交代で大塚明夫に! 初代声優・小林清志「ルパン。俺はそろそろずらかるぜ。あばよ。」
https://otajo.jp/102423[リンク]
――時系列としては、アフレコが始まって途中で小林さんからのお手紙をいただいたんですか?
大塚:1クール目をほぼ録り終わってからです。
――お手紙を見る前の最初のアフレコはいかがでしたか?
大塚:ヘトヘトになりました。何も考えずにセリフを言うと、自分の出したセリフの声が「これは次元ではない」という想いがやはりあるんです。僕の中にも50年分、清志さんの次元の蓄積があるので、確実に「違うな」ということがわかってしまうんです。すごく苦しかったです。
――小林さんからのお手紙を拝見されて、苦しさには変化がありましたか?
大塚:清志さんが喜んで「明夫ちゃんに」ということではないということは感じています。お手紙の中で90歳まで次元を演じたかったとおっしゃっていますから。その上で、ヒントをくれたのかな、と思うと、とても有り難いですし、涙が出そうになりました。
役を作っていく上で、江戸っ子でジャズで、というヒントをいただいたことで、すごくこの先の道が見えました。とてつもない宝物をあのお手紙でいただいたという想いがあります。あのお手紙をいただいたことで、どちらに進めばいいのか教えていただけたような気がしますので、早く2クール目のアフレコをやりたくてうずうずしています。
――1クール目は小林さんからのお手紙をいただいていない中でアフレコをされて、どんなディレクションがあったのでしょう?
大塚:次元は僕が思っていたよりも “(ルパン一味と)嫌々付き合ってやってるんだぜ”感があったんだな、と。本当は嫌々ではないのに、“嫌々付き合ってやってるんだぜ”という感じを、もう少し出したほうが次元らしいのではないか、というディレクションがあり、「なるほど!」と思いました。そのあたりも含めて、改めてアフレコにチャレンジしたいなと思うのですが、そこは時間をかけて、徐々に身体に染み込ませ、皆さんにどうかひとつ納得していただきたい、という想いがあります(笑)。
「50年かけて僕が捉えて、僕の中で育った次元大介が居る」
――大塚さんが次元と共通点を感じる部分は?
大塚:僕の中での次元大介は、ほぼ清志さんなのですが、清志さんと自分に共通点があるか?と考えると、わかりません(笑)。
共通点を探していくと言うよりも、清志さんが50年かけて作ってきた次元大介像に僕がどうハマっていくか、という作業になっていくと思います。ハマリきらないではみ出したり、欠けていたり、そういう部分が超えられない壁というか、それが僕の個性として滲むといいなと思っています。
僕自身の新しい次元大介を作ろうとは思ってないんです。なぜなら、僕自身が次元大介の大ファンで、次元は次元であってほしいんです。だから、「僕の次元を作ろう」とは思えないんです。それくらい、許せないんです。当然ながら、僕の次元になってしまうところも絶対に出てくると思います。出る音色から違うわけで。できることは何かと言えば、次元ならこう考える、こう感じる、というところをトレースしていくことがまず第一歩かなと。その作業の中でどうしてもシンクロできない部分が出てくると思います。それが僕が演じたことによる次元大介の変化でありたいな、と。
まず考えるのは、モノマネをしようということではなくて、僕の中の次元大介を守るということ。清志さんが作った次元大介を踏襲していきたいという想いがあります。
――交代が解禁なった際に、ものすごく大きな反響があったと思いますが、大塚さんの元には、そういった反響の声は入ってきていましたか?
大塚:何年も会っていない友人などから「おめでとう」とメールが来ました。金メダルを取って急に親戚が増えるような感じでしょうか(笑)。こんなに世の中がザワザワするんだな、とビックリしましたし、それだけ、『ルパン三世』の次元大介という役が大きな存在なんだと、ひしひしと感じておののきました。
――PVで少し大塚さんが演じた声を聞かせていただきましたが、個人的にはとても素敵な次元だと感じて、YouTubeのコメント欄にも「違和感がない」など好意的な反応が多く寄せられています。その声は届いていらっしゃいますか?
大塚:そのような声が多くてすごくホッとしているのですが、中には「もっと自分の感じで演じればいいのに」というお声も見かけます。しかし、そうしてしまうと僕にとって次元大介ではなくなってしまいます。50年かけて僕が捉えて、僕の中で育った次元大介が居まして、その次元大介でありたいな、という想いのほうが先にあるため、「真似ばかりせずに自分の次元を演じればいいのに」という声があっても、今はあまり耳を貸したくないなと思っています。
【第2弾PV】シリーズ最新作『ルパン三世 PART6』2021/10/9(土)24時55分より日本テレビ他全国放送!│”LUPIN THE THIRD:PART 6″ New Trailer 2021
https://youtu.be/n1KYjg2SwbA[YouTube]
――大塚明夫さんはお父様の大塚周夫さんが『ルパン三世』の初代・石川五ェ門を演じていますが、その縁は感じましたか?
大塚:『ゲゲゲの鬼太郎』など、他にも同じ作品に出ていたりもするので、ルパンに関してだけではなく、親父も長い間声優として色々作ってきた人ですから、あちこちどこに行っても親父の足跡があるんだな、という感じがします。
――今作の『ルパン三世 PART6』は、王道でありつつ、ミステリーということで、ファンだった大塚さんの目にはどのように映りましたか?
大塚:カッコいいです! 画も演出も音楽も。画は最初の1話、2話はアフレコのときにもう出来ていたんです。だから、なんてカッコいいんだろう、と思ってドキドキワクワクしました。
――完成した画を観ながら収録されるというのは、また違ったお気持ちがありそうです。
大塚:そうなんです。「これだけ出来上がっているものを渡すので、よろしくお願いします」というプレッシャーもかかります。(初代・ルパン役の)山田康雄さんは、「画がないなら帰っちゃうぞ」と帰ってしまったことがあるらしいです(笑)。今どきの事情を考えると、到底そんなことはできません。今どきの事情の中で、仕上げてきてくださるスタッフの皆さんの想いをちゃんと受け止めなければいけないな、と。収録前に画を見せていただけるというのは、我々にとってすごく刺激になります。
――今シリーズでは、次元がフィーチャーされるお話もあるのでしょうか?
大塚:あります!
――どんなお話になっているか教えていただけますか?
大塚:それはダメです(笑)。ネタバレになってしまいますので(笑)。
――では、観てからのお楽しみですね(笑)。
大塚:お楽しみにしておいてください(笑)。そのお話は、もう1度アフレコをやりたいなと感じています。今、五里霧中で模索していた次元大介を解明するヒントが僕の中でどんどん見つかっていますので、もう1度演じたい、という気持ちです。
――実際に他のキャストの皆さんと収録する中で、頼もしかったり、心強かった瞬間はありましたか?
大塚:栗田さんとはTVスペシャル版で過去にご一緒させていただいているのですが、他の方々(銭形警部役:山寺宏一/石川五ェ門役:浪川大輔/峰不二子役:沢城みゆき)はもうみんな顔見知りで息もわかっているメンバーなので、それが助かります。
栗田さんが先代・ルパンの山田さんと交代されたときと比べて考えたら、僕はなんて楽をしているんだろう、と思います。清志さんに、納谷悟朗さんに、井上真樹夫さんに、増山江威子さんに、そういう方々の中で栗田さん1人で頑張ったわけですから、大変だったろうなと思います。さぞお疲れさまでした、という想いです。今、僕が60歳を超えまして、顔見知りのメンバーとご一緒させていただけることは、栗田さんと比べたらなんて有り難いのだろう、と。栗田さんがどれほどの想いをしたんだろう、と感じます。
――大塚さんにとって次元とはどんな存在ですか?
大塚:「PART1」が始まってリアルタイムで観て育ってきたので、次元大介のカッコよさというのは50年分蓄積されています。次元大介はカッコいいです。僕は人によく、「ダンディとは何?」と聞くのですが、でも次元大介のことはダンディだと感じる。ダンディとは一体何だろう?と思ったときに、そこに何か次元大介の秘密があるのかな、と。大人だけれど、照れと恥じらいと、それを内包していて、だから格好つけていても嫌味にならない。ルパンが居て、ルパンを自分が助けている、というところから踏み出さない。「ルパン、俺をフォローしろ」とは、ならない。わきまえている感じが次元のカッコよさなのかなと思います。
――大塚さんの次元も楽しみにしています! ありがとうございました!
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『ルパン三世 PART6』
【 INTRODUCTION 】
その男の名はルパン三世。怪盗アルセーヌ・ルパンを祖父に持つ大泥棒。
宝石、美術品、隠された財宝、不老不死の秘密、はては可憐な少女の心まで、彼に盗めぬものは何ひとつない。
相棒は凄腕ガンマンの次元大介。そして、居合抜きの達人・石川五ェ門。類まれな美貌と頭脳を持つ魔性の女・峰不二子。
執念で地の果てまでルパンを追い続ける銭形警部。
そんな個性豊かな面々とルパンが繰り広げる、ハードボイルドで、スリリングで、コミカルで、エキセントリックな物語――。
モンキー・パンチが生み出したコミック『ルパン三世』は、それぞれの時代の空気を取り込みながらアニメーションで展開され、世界中のファンを虜にしてきた。
そして 2021 年。アニメ化 50 周年を迎える今、ルパンがまた、動き出す!
新作アニメーション『ルパン三世 PART6』は、ルパンを紐解く 2 つのキーワードでストーリーを展開。
1 クール目は、〈ミステリー〉!王道かつ斬新な、謎多き物語が幕を開ける。
そのシリーズ構成を務めるのは、映像化作品多数の推理小説家でありアニメ・特撮の脚本も手がける、大倉崇裕。そして各話脚本にはゲストとして、辻真先、芦辺拓、樋口明雄、湊かなえ、押井守が参加。
小説界・アニメ界を賑わす、豪華な顔ぶれが名を連ねる。
エメラルドグリーンの背広に身を包んだルパンが繰り広げる、
新世界のための〈原点回帰〉ーークール&ミステリアスな冒険を見逃すな!!
『ルパン三世 PART6』
2021 年 10 月より日本テレビ系全国放送開始!
日本テレビでは 10/9(土)24 時 55 分より放送開始
※各局の放送日時は公式 HP でご確認ください
配信:Hulu 他配信サイトで配信予定 ※配信先情報は、公式 HP で順次公開
【 STORY 】
舞台はロンドン。
ルパンのターゲットは、英国政府を影で操る謎の組織・レイブンが隠したお宝――
その手掛かりとなる一枚の絵。
立ちはだかるスコットランド・ヤードや MI6。ルパンの動きを察知して現れた銭形警部。そして、ルパンの前に現れた探偵――その名はシャーロック・ホームズ!シリーズ構成・大倉崇裕のメインストーリーと、豪華脚本陣のオムニバスエピソードが絡み合う、謎多き〈ミステリ・ルパン〉が今、幕を開ける!
【 CAST 】
ルパン三世:栗田貫一
次元大介:大塚明夫
石川五ェ門:浪川大輔
峰 不二子:沢城みゆき
銭形警部:山寺宏一
八咫烏五郎:島﨑信⻑
アルベール・ダンドレジー:津田健次郎
ホームズ:小原雅人
リリー:諸星すみれ
【 STAFF 】
原作:モンキー・パンチ
監督:菅沼栄治
シリーズ構成:大倉崇裕
キャラクターデザイン:丸藤広貴
美術監督:松宮由美、備前光一郎、小倉宏昌、⻄澤 航、李 凡善、竹田悠介
色彩設計:宮脇裕美
撮影監督:佐々木明美
編集:吉武将人
音響監督:清水洋史
音響効果:倉橋裕宗
音楽:大野雄二
メインテーマ:「THEME FROM LUPIN III 2021」
作曲:大野雄二、編曲:大野雄二、演奏:Yuji Ohno & Lupintic Six with Friends
制作:トムス・エンタテインメント
製作:ルパン三世PART6製作委員会
原作:モンキー・パンチ (C)TMS・NTV
【公式サイト】lupin-pt6.com[リンク]
【公式 Twitter】@lupin_anime ハッシュタグ:#ルパン6
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