パンマニアが案内するパン旅【秋田編】地産食材にこだわる食パン
10,000個以上のパンを食べ歩いてきた、旅するパンマニア片山智香子です。美味しいパンがあると聞けば、多少遠くても足を運ばずにはいられない性格。今回は、世界自然遺産・白神山地の腐葉土の中から発見された「白神こだま酵母」を使ったパンでも有名な秋田まで行ってきました。
東京駅
普段では味わえない新幹線の旅スタート!
JR東京駅から秋田新幹線「こまち」で約3時間50分、JR秋田駅へ向かう。
JR盛岡駅で連結していた「はやぶさ」を切り離したり、途中、上りの新幹線とのすれ違いのため停車する時間があったり、JR大曲駅から秋田駅までは進行方向が変わって座席が逆を向いた状態で走行したりと、普段では味わえない新幹線の旅に心躍る。
SOUP HOLIC(スープホリック)
スープ専門店の自家製パンが絶品だった
秋田駅着。夏の東北は涼しいというイメージがあったが、朝晩を除き日中は太陽がさんさんと降りそそいでいる。到着したのが、ちょうど昼前ということもあり、自家製パンが美味しいと評判の「SOUP HOLIC(スープホリック)」へ向かった。
秋田駅から徒歩約8分、近くには秋田市民市場や業務用スーパーといったランドマークになるところがあるので、場所としては分かりやすい。白い外観の建物に、スープのイラストと「SOUP HOLIC」と書かれた看板。
セットメニューも豊富なこちらのお店。店名にもなっているスープも堪能したいのでおすすめの「スープホリックセット」を注文。スープはクラシックガスパチョ、サラダはチョップドサラダを選択。お店の厨房でつくっている自家製パンも、数種類から選ぶことができる。
今回選んだハーブバターバケットは、白バゲットに、バター、ガーリックパウダー、それに数種類のハーブがぬりこまれている。パン自体の焼き色が濃くないので、香ばしさよりは小麦自体の味わいが前面にでて、純粋に生地の旨みを感じることができる。ディルなどハーブの味わいにも力強さがあるので、スープとサラダがあれば、もうそれだけでご馳走だ。
生はちみつ食パン専門店 ROSEMAY(ローズメイ)
はちみつのプロがつくる食パンは4種類
スープホリックから秋田駅に戻り、次に向かうのは、はちみつやジャムの専門店であるローズメイが2021年3月にオープンした「生はちみつ食パン専門店 ROSEMAY(ローズメイ)」。
秋田駅前から路線バスに乗り、川尻大川町バス停で下車。道路の混み具合にもよると思うが、だいたい20分もあれば到着する。バス停から、進行方向に1~2分歩くと道路の反対側に「生はちみつ食パン専門店」と書かれた看板とお店が見える。
実は、ローズメイの看板商品である「オレンジスライスジャム」が大好きで、以前からお世話になっているのだが、パンを食べるのは初めて。普段は、ついつい同じものばかり選びがちなので、今回は新しいジャムとの出合いも楽しみにしていた。
パンは「生はちみつ食パン」「ジャムにあうプレーン食パン」「オリーブオイルに合うパンドミ」「レーズン食パン」の4種類。それぞれに特徴があり、甲乙つけがたかったが、一番舌ざわりがなめらかで、砂糖を使わずに、アカシヤはちみつ100%でつくっているという「生はちみつ食パン」に、人気第2位の「ハニーメイド 紅玉りんごジャム」を合わせることに。
いやー、このジャムも最高に美味しい。秋田県産紅玉りんごの優しい酸味と甘み、それに純粋はちみつが入ることで全体がまろやかな味わいになる。
まずは、パンを焼かずに生のままジャムと合わせると、ふんわりもっちりした生地にりんごの甘みが染み込み、思わず顔がにやけてしまうくらい美味しい。次にトーストすると、香ばしさが加わりまた違った味わいを楽しめる。
秋田キャッスルホテル
秋田県産にこだわりぬいたホテルの生食パン
再び秋田駅に戻り、この日の宿泊先である「秋田キャッスルホテル」に向かおう。徒歩約11分でホテルに到着。チェックインの手続きを済ませて向かったのは、館内にある「キャッスル・デリカ」だ。
ホテルのベーカリーシェフが、伝統の製法で毎日焼き上げている手づくりパンを購入することができるホテル内のショップなのだが、その中でもどうしても食べてみたかったのが「秋田キャッスルホテルの生食パン」。
秋田県産小麦・銀河のちから100%、それに白神こだま酵母を使用するなど、秋田県産の食材にこだわった食パンでミミまで柔らかい。生地のキメがぎっしり詰まっており、噛むごとに甘さと小麦の風味を感じることができた。
秋田犬ステーション
秋田市文化創造館
秋田の歴史や文化にふれる
2日目の朝は早起きして、ホテル周辺を散策。まずは、秋田キャッスルホテルから徒歩5分ほどのところにある「秋田市文化創造館」へ行ってみた。
この建物自体は1967年に「秋田県立美術館」として建設されたものなのだが、老朽化などから美術館は移転、その後、改修して2021年3月に現在の施設としてオープン。
この日は展覧会が開催されていたが、今後は市民発信の場所にしていきたいとのことだった。秋田駅からも歩ける距離で、近くには日本100名城の1つにもなっている久保田城跡(千秋公園)があり、秋田の文化や歴史にふれることができる場所でもある。
秋田県立美術館
ゆっくり贅沢な時間を過ごせるカフェ
秋田市文化創造館の道路を挟んだ向かい側には、移転した「秋田県立美術館」がある。こちらは建築家の安藤忠雄氏の設計、目の前が大きな広場になっており非常に開放的な印象を受ける。
散策で喉が渇いたので、2階にあるカフェ「光風」へ行ってみた。
いやー、このカフェが最高で長居してしまいそうになった。何が良いってシートから見渡す景色。水庭越しに見える千秋公園は晴れている日に見ると、まるで一枚の絵画のようなのだ。時間が経つのを忘れてしまいそうになったが、せっかくなので秋田に本店がある老舗菓子舗「榮太楼」の米粉のロールケーキセットをいただくことにした。
運ばれてきたそれは、秋田県の工芸品である川連漆器にのせられていた。
秋田県立美術館に大壁画「秋田の行事」が展示されている洋画家・藤田嗣治(ふじた・つぐはる)。「乳白色の肌」とよばれた裸婦像などの、藤田が描いた乳白色をイメージしたという真っ白なロールケーキはオリジナルらしく、しっとりしたスポンジ生地には県産のあきたこまちの米粉を使用、口の中に入れるとホロリととけ、優しい甘みが広がった。
そして、シートの後ろにはミュージアムショップの商品が並んでいる。曲げわっぱなどにも心惹かれたのだが、少々お値段がはるのでこの日は断念。大好きな作家、サルバドール・ダリの付箋があったので自分へのお土産に購入。
亀の町ベーカリー
行くたびに新しい発見があるベーカリー
最後に向かうパン屋は、秋田県立美術館から徒歩約10分のところにある「亀の町ベーカリー」。姉妹店である亀の町ストアで出していたパンが人気で「それならば単独でベーカリーを開こう!」と2018年にオープン。ハード系が多めながら、食事パンや菓子パンなど幅広いラインナップで、常時40種類以上のパンが並んでいる。
「大事な人に食べて欲しい」をコンセプトに、月や日によってつくるパンが変わるらしいので、何度来ても新たな発見がありそうだ。人気第1位は角食パンのようなのだが、今回は、小腹をみたしてくれそうな小ぶりなパンを何種類か選んでみた。
「亀の町ベーカリーの人気パンは? と聞かれたら迷わずおすすめします!」とPOPに書かれていた「あんバター」は、しっかりした食感のパン生地に粒あんたっぷり。程よくとけたバターの塩味がクセになる美味しさ。
小さな子どもが落書きしたような亀が描かれた袋が可愛くて、パケ買いしてしまった「サクサクメロンパン」。全体的にしっとりしており、クッキー生地とパン生地に一体感がある。
「ドライトマトとベーコンのピザ」は、ピザといっても手のひらサイズなので、1人で食べるには丁度良い大きさ。ジューシーなトマトにベーコンの旨みがあふれでて、素材ひとつひとつの味がしっかりしているのが分かる。パン生地自体は程よい弾力があり、それでいて軽い。ピザはできたてが1番美味しい! と言われがちだが、パン屋がつくるピザは時間がたつと、逆に味が染みこみ、より美味しくなるから不思議だ。
ローストしたクルミが入っているセーグルは自分へのお土産として。
「昔ながら」と「新しい」が混在する街、秋田。初めて訪問したのに、どこか懐かしさを感じる自分がいた。地元の食材へのこだわりがある店が多く、短い時間ではあったが秋田の美味しさをギュッと凝縮して堪能することができた。今回は、秋田駅から徒歩で行けるところを中心に巡ったので、次は角館の方も行きたいし、比内地鶏など名産品を使った惣菜パンなども探してみたい。
東京駅
掲載情報は2021年10月5日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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