【復興を知るまち歩き】奇跡の一本松のある岩手・陸前高田へ

【復興を知るまち歩き】奇跡の一本松のある岩手・陸前高田へ

東日本大震災から10年を迎え、徐々に新しいまちが整備される東北。今回は『盛岡の「ふだん」を綴る本 てくり』のスタッフ・水野が、「奇跡の一本松」を中心に復興が進む岩手県陸前高田市、漁港の賑わいを取り戻しつつある宮城県気仙沼市を訪ねました。

東京駅

一ノ関駅から、ワンマン列車で沿岸ルートへ

岩手県の玄関口、一関市。JR東京駅からだと東北新幹線「はやぶさ」で約2時間、JR一ノ関駅に到着します。ここから沿岸に向かう大船渡線で、JR気仙沼駅へ向かいます。

大船渡線 車両

大船渡線はコンパクトな2両編成

大船渡線では、一部の列車で車掌が乗っていないワンマン列車(※)で運行しています。私が乗ったのもワンマン列車。無人駅や駅員のいない時間帯は、1両目の後部ドアからしか乗れないので、慣れないと少しドキドキ。降りるのは1両目の前部ドア(運転手後ろ)からになりますが、駅員がいる一ノ関駅や気仙沼駅は全てのドアから乗り降りできます。

※編集部注:無人駅や駅員のいない時間帯のワンマン列車の乗り方、降り方はこちら

陸前高田駅

大船渡線で、心和む田園風景を満喫

大船渡線の車窓にはさわやかに晴れた空の下、のどかな農村風景が続きます。あざやかな緑に癒やされながら、気仙沼駅まで約1時間半の旅です。

車窓 千厩町付近

千厩町付近の車窓

気仙沼駅

気仙沼駅ホームからBRTのバス停へは直結

気仙沼駅からは大船渡線BRT(バス高速輸送システム)に乗り換えて、いざ、陸前高田市へ。JR陸前高田駅までは約40分。スムーズに移動することができました。

陸前高田駅

2018年に移転した陸前高田駅

かき小屋 広田湾

「かき小屋 広田湾」でたっぷり牡蠣を堪能

陸前高田市に着いたのは、ちょうどお昼時。やはり、名産の牡蠣を食べねばならぬと、駅から徒歩1分の場所にある「かき小屋 広田湾」に向かいます。感染症対策として、消毒液や体温計、テーブルにはアクリル板が設置されています。

かき小屋 広田湾

お店のオーナーは漁師さん。震災後の2013年、水揚げしたてのおいしい牡蠣をたくさんの人に食べて欲しいという想いでオープンし、今や地元の人にも人気です。

毎年11月から6月ごろまでは生の真牡蠣を、それ以外の時期は水揚げ後すぐ冷凍保存した真牡蠣を調理して提供。蒸し牡蠣、フライ、グラタン、オリーブ焼きなどたくさんメニューがあって、何を注文するか迷います。

期間限定のセットメニュー

広田湾で採れた新鮮な牡蠣をいただきます!

悩んだあげく、期間限定メニューの蒸し牡蠣1kg(今回は10個)と牡蠣ご飯、牡蠣汁セット (税込1,155円)を注文。まずは調味せず、そのまま味わうのがおすすめ。ぷりっとジューシーな牡蠣を一口ほおばるとほんのり海の塩味と旨みが広がります。次はレモンをかけて……、次はポン酢で……、あっという間に10個を完食してしまいました。

かき小屋 広田湾

お店のスタッフが剥き方のお手本を見せてくれます

高田松原津波復興祈念公園

高田松原津波復興祈念公園を歩く

お腹いっぱいになったところで、いよいよ「奇跡の一本松」へ。食後の運動をかねて20分ほど歩いて移動すると、目の前にドーンと「高田松原津波復興祈念公園 国営追悼・祈念施設」が見えてきます。

高田松原津波復興祈念公園 エントランス

入り口にあるトップライトと水盤

東日本大震災による犠牲者への追悼と鎮魂、震災の記憶と教訓を次の時代へ、そして国内外へ伝えるために形づくった公園。一歩進むごとに、復興への「強い意志」を感じます。

エントランスの中央には水が張られ、大屋根から自然光が入るように設計されています。光に吸い込まれるような不思議な感覚の中、心地よい海風を受けながら、正面の「海を望む場」をめざします。

高田松原津波復興祈念公園「海を望む場」

先の階段を昇ると「海を望む場」

高田松原津波復興祈念公園「献花の場」

献花用の花は、「道の駅高田松原」で購入可能

「献花の場」には美しい花が捧げてありました。かつて、高田松原にはおよそ7万本の防風松が植えてあり、海水浴場としても賑わう場所でした。2021年4月には砂浜が一般開放され、5月には防風林の植樹を終えたばかり。7月には海水浴場として11年ぶりに海開きを予定しているそうです。

奇跡の一本松

献花の場を右手に5分ほど歩くと、「奇跡の一本松」が見えてきます。樹齢173年、高さ27.5メートルの一本松は、震災から1年後に枯死したものの整備され、震災遺構「陸前高田ユースホステル」と並び、復興のシンボルとして保存されています。

東日本大震災津波伝承館

「東日本大震災津波伝承館」で震災から学ぶ

次は、「東日本大震災津波伝承館」(愛称:いわてTSUNAMIメモリアル)へ。

東日本大震災津波伝承館 外観

「命を守り、海と大地と共に生きる」をテーマに、歴史をひもとく、事実を知る、教訓を学ぶ、復興を共に進めるという4つのゾーンに分かれた館内。まずは、ガイダンスシアターで三陸の暮らしや震災当時の状況などを学びます。

展示品 被災した消防車

中央には被災した消防車を展示

映像やパネル、被災した実物や写真などによって、津波の脅威、東日本大震災の事実と教訓を知る貴重な時間を過ごせます。館内を巡るうちに、先ほど眺めてきた海が穏やかであることがとても幸せに思われました。

東日本大震災津波伝承館 館内

道の駅高田松原

休憩がてら、「道の駅高田松原」で買い物

じっくり伝承館を見学したあとは、同じ建物の別棟にある「道の駅高田松原」に寄り道。

道の駅高田松原

「道の駅高田松原」のカフェ側入り口

広々とした店内には、三陸で採れた魚介類や加工品、旬の野菜や果物、お菓子などがずらりと並んでいます。三陸の海の幸を味わえる食堂やカフェも併設されているので、ひと休みにぴったり。

この日は大船渡線BRTで気仙沼駅まで戻り、駅近くのホテルで一泊しました。

気仙沼駅

気仙沼駅から気仙沼「海の市」へ

2日目の旅は、気仙沼駅前からスタート。三陸海岸の岩をモチーフにしたアプローチゲートがかわいい駅舎は、東日本大震災後にリニューアルしたそう。駅の隣には観光案内所があり、レンタサイクルも用意されていました。

気仙沼駅

自転車も楽しそうですが、この日訪問するサメの博物館「シャークミュージアム」はやや郊外。駅近くのバス停から市内循環バス(1乗車につき大人200円)に乗り、10分ほど揺られて到着です。

シャークミュージアム

全国唯一の「シャークミュージアム」を見学

「シャークミュージアム」のある気仙沼「海の市」は、魚市場に隣接する観光名所。やはり震災で大きな被害を受け長く休業していましたが、2014年7月に全面オープン。1階は気仙沼漁港で水揚げされた新鮮な魚介類や水産加工品などが並びます。

気仙沼「海の市」

「シャークミュージアム」は2階。全国で唯一というサメの博物館には、サメの巨大な模型や不思議な生態の解説はもちろん、リニューアル後は「震災の記憶」ゾーンと「絆」ゾーンも加わり、地域の人たちの未来へつなぐ想いがこもった展示になっています。

シャークミュージアム サメの模型

迫力満点のサメの模型

シャークミュージアム「絆」ゾーン

「絆」ゾーンでは来場者が自由にメッセージを残せます。手前のパソコンを使って入力した言葉が中央の壁に投影される仕組み。ミュージアムを観た感想、地元のみなさんへの応援など温かいメッセージを気仙沼に向けて発信しています。

いちば寿司

「いちば寿司」でフカヒレ寿司を!

ミュージアムを出たあと、気仙沼「海の市」最上階から市場の様子を見学。海の恩恵を受けて生活している方が多いという気仙沼市。生活再生に向け、震災から3カ月後には魚市場が再開したと知り、驚きました。

市場の様子

そして旅の締めくくりは、お寿司。サメの水揚げ日本一を誇る気仙沼でフカヒレを味わって帰りたいというわけで、気仙沼「海の市」2階にある「いちば寿司」に行ってみました。

いちば寿司

数あるランチメニューから、季節のにぎり8貫と巻物1本、みそ汁付きの「いちばランチ」をオーダー。せっかくなのでフカヒレ寿司2貫を加えても、なんと税込みで2,475円です。

いちばランチ

市場と直結する店ならではの鮮度とネタ

特製和風出汁で味をつけたフカヒレはコリコリの食感がたまりません。ぜひ味わって欲しい一品です。ほかにも、生ウニ、イクラ、イワシ、天然マダイ、マグロ、赤エビ、カツオ、サーモンと新鮮な海の幸がずらり。

シャリには、ふわりと仕上がるササニシキを使っています。モウカザメの握りや心臓(モウカの星)といった気仙沼ならではのネタも気になるところ。夏はホヤやスズキもおすすめと聞き、次に訪ねる楽しみができました。

気仙沼漁港

穏やかな気仙沼漁港

震災から10年の節目に訪ねた、岩手県陸前高田市と宮城県気仙沼市。いずれもインフラが整備されてまちの魅力をとり戻しています。とはいえ、住宅や道路の建造物の整備工事はまだまだ続いていました。

震災後にできた施設を訪れ、改めて東北を取り巻く大自然の力を実感。穏やかな海の美しさに心惹かれ、おいしいものと和やかな日常に感謝する、2日間のまち歩きでした。

東京駅

掲載情報は2021年7月29日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

  1. HOME
  2. 生活・趣味
  3. 【復興を知るまち歩き】奇跡の一本松のある岩手・陸前高田へ
びゅうたび

びゅうたび

旅するメディア「びゅうたび」は、ライターが現地を取材し、どんな旅をしたのかをモデルコースとともにお届け。個性たっぷりのライター陣が、独自の視点で書く新鮮な情報を、臨場感たっぷりにご紹介します。

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。