短編宝探しRPG『廃都に願いを』故郷の復興を掲げる少年の冒険と”願い”の物語

access_time create folderゲーム

滅びた都「コキュートス」。そこには稀少価値の高い数多の宝物が眠っており、それら全てを手に入れれば、どんな願いも叶うとされる言い伝えがあった。

そして今、このコキュートスにひとりの少年が足を踏み入れた。
少年の名前はアイデン。
彼の目的は宝物を集め、故郷復興の願いを叶えることだった。

短編宝探しRPG『廃都に願いを』故郷の復興を掲げる少年の冒険と”願い”の物語

『廃都に願いを』は2021年5月より「ゲームアツマール」、「ふりーむ!」にてブラウザ向けフリーゲームとして公開中の短編宝探しRPG。『I・Fantasy』シリーズ、『クロスセイバー』、『トウゲンの館』など、独特な作風の短編RPGを数多く制作している作者・mobcharacter57氏の新作でもある。

故郷復興のため、宝探しに勤しむ探索主体のRPG

前述のストーリー通り、プレイヤーのやることは単純明快だ。
「コキュートス」に眠る宝物を探して見つけ出す。
それらを鑑定し、主人公アイデンの故郷復興に必要な資金を集める。
そして、目標金額に到達したら現地から撤収する。それだけである。

短編宝探しRPG『廃都に願いを』故郷の復興を掲げる少年の冒険と”願い”の物語

具体的な内容及びゲームの流れに踏み込むと、プレイヤーは主人公のアイデンを操作し、コキュートスの地を自由に巡りながら宝物を探しては回収していく。回収は単に対象へ近づいて調べるだけでよい。そして、それと同時にアイデンの仲間である商人「アキ」による鑑定が実施され、金額が提示される。それをそのまま故郷の復興資金として貯蓄。
基本的にはこの流れを通しながら、資金を集めていくことになる。

短編宝探しRPG『廃都に願いを』故郷の復興を掲げる少年の冒険と”願い”の物語

復興に必要な資金は1000000G(ゴールド)。額の大きさから察する通りだが、僅かな宝物を集めるだけでは到底貯められない。そのためコキュートス内を隈なく探索し、多くの宝物を探して見つけ出すことが達成へのカギとなる。

だが、宝物はそう簡単には回収できるものではない。一部、その場に直接置かれ、近づいて調べるだけで簡単に回収できるものもあるが、多くは違う。行く手を阻む障害を取り除いたり、カラクリ仕掛けを解くなど、頭を使うことが求められてくるのだ。さらにコキュートスの地にも特定のスイッチを起動させたり、特殊なアイテムを入手しなければ進めない場所がある。もちろん、その先には多くの宝物が眠っているので、行動範囲を広げなければ資金集めも難航確実だ。
このように探索・謎解きアドベンチャー由来の要素が宝物集めには色濃く反映されていて、一筋縄ではいかない骨太な作りになっている。そのやり応えたるや、件のジャンルに匹敵どころか、若干上回るぐらいである。

短編宝探しRPG『廃都に願いを』故郷の復興を掲げる少年の冒険と”願い”の物語

そして、RPGだけに探索中には戦闘も発生。システム周りは薄紫色のゲージが満タンになったキャラクターから行動する、アクティブターン制を採用したコマンド選択型。戦闘の発生形式はランダムエンカウントとなっている。

仕組み自体は正統派だが、通常攻撃実施からの次のターンが回ってくるまでの間、ダメージが30%軽減される効果が発動したり、「ブレイク」なる状態異常下で高い効果を発揮する「必殺スキル」など、やや独特な仕様に基づくバランス調整が施されている。

短編宝探しRPG『廃都に願いを』故郷の復興を掲げる少年の冒険と”願い”の物語

また、エンカウントはアイデンが最初から持つスキル「忍び足」で無効化できる。しかも、効果は永続。再度「忍び足」を使うか、「回復ポイント」と呼ばれる全回復地点で休まない限りは解除されず、ずっと戦闘を回避できるのだ。このため、宝探し(探索・謎解き)に集中したい時はスキル発動、アイデンのレベルを上げたい時はスキル解除といった具合にプレイヤーのやりたいことに応じた切り分けが可能。過度のストレスを抱くことなく、各行動に集中できるようにする配慮が凝らされている。

短編宝探しRPG『廃都に願いを』故郷の復興を掲げる少年の冒険と”願い”の物語

ほかに本作では戦闘に勝ってもお金は手に入らない。お金は回収した宝物の鑑定を通して獲得する。得られる金額は鑑定額の10%分。鑑定額が10000Gなら、1000Gが自分の分になるといった感じだ。それすなわち、本作のお金は有限。「回復ポイント」を使う際やアキから回復アイテムを買う際は残りの金額に神経を配る必要があるのだ。

ただ、武器や防具などの装備類は宝物の回収を通しての入手が基本になるため、それほどガチガチなリソース管理が試される訳ではない。

短編宝探しRPG『廃都に願いを』故郷の復興を掲げる少年の冒険と”願い”の物語

ただ、沢山貯金すれば、宝探しの優秀なお供となるパートナーロボットの任意雇用が可能に。どれぐらい使って節約するかは全てプレイヤーの戦略次第。こういったお金の使い道を考える要素も備えていて、攻略面にもそれぞれの個性が現れる作りだ。

乱暴に噛み砕けば、広大なひとつのダンジョンを探索するRPG。だが、「宝探し」をコンセプトにしたなりの歯応えのある探索、制限を課した資金周りなど、ユニークな味付けが施されており、突出した個性を持つRPGに完成されている。

そして、その魅力もまた分かりやすく、攻略自由度の高さである。

どう攻略するかはプレイヤー次第、自由度の高い宝探し

実のところ、1000000Gの復興資金はコキュートス内に隠された全部の宝物を回収しないと達成できない額ではない。一部、取れない宝物があっても十分達成可能なのだ。なので、取れない宝物に執着する必要はない。一向に取れないなら、無視してしまってもよい。また、宝物の回収順序も明確に決まっていない。どれから回収していくかは全てプレイヤーに委ねられているので、本当に自由に進めていける作りになっているのだ。

短編宝探しRPG『廃都に願いを』故郷の復興を掲げる少年の冒険と”願い”の物語

それもあって、攻略自由度の高さが際立つ。そもそも1000000Gに達していない時点でコキュートスから撤収し、エンディングを迎えてしまうことも許されているのだ。当然、そのようにすればストーリー的に消化不良な終わり方になってしまうが。それにゲームが始まって間もなくすぐの撤収はあまりにも諦めが早すぎ、との叱責が飛んでくる関係で不可能。さすがにそりゃそうだ、の一言に尽きる。だが、途中で終わることもひとつの選択肢、という具合に許しているのも本作の攻略自由度の高さを象徴する部分。まさにプレイヤーに委ねる作りを徹底しているのだ。

こうした内容もあって、自分なりの攻略順序を作っていくのが非常に面白く、2周目以降も新鮮な気持ちで取り組める。

短編宝探しRPG『廃都に願いを』故郷の復興を掲げる少年の冒険と”願い”の物語

あくまでも集め方が自由なのは宝物だけで、マップはストーリーを進めないと行動範囲が広がらない制限があるため、全部が全部自由では無い。ただ、あえてストーリーを先行させ、奥地へ踏み込めるようにして強力な武器兼宝物を回収してアイデンの強化を図ったり、仕掛けの解除が必要ない宝物だけを集めながら進めるなど、制限がある中でも集め方はどうとでもできる。これも全てはエンカウントを完全無効化できる「忍び足」のスキルがあってこそ。柔軟に遊べるのである。
なので、広大なマップを隈なく探索しながら進める、探索型のアクションゲームが好きな人にとって、本作の自由度の高い構成と攻略方法の多彩さは確実に琴線を刺激するだろう。

短編宝探しRPG『廃都に願いを』故郷の復興を掲げる少年の冒険と”願い”の物語

さらに宝物回収を中心とした、探索型アドベンチャーゲームとしての出来も素晴らしい。何よりも謎解きの難易度が絶妙。一見難しそうに見えながら、解法に繋がる”きっかけ”を掴めばアッサリ解けてしまうバランスに調整されているのだ。謎解きのバリエーションも多彩。制作に用いられた『RPGツクールMZ』の制約の範囲内で、実現でき得る限りのアイディアを投入した、手の込んだものが揃っている。

短編宝探しRPG『廃都に願いを』故郷の復興を掲げる少年の冒険と”願い”の物語

RPGらしく、宝物の前に立ちはだかる守護者との戦闘を乗り越えなければならないパターンも。その中にはどの守護者から倒すかで、残りの宝物の入手難易度が上がっていくという、判断次第でその後が変化する仕掛けを凝らしたものも用意されている。この対処法も強力な武器兼宝物を手に入れてからにするか、先行して手に入れてしまうかといった具合にプレイヤーが決められ、好みに応じた進め方ができる。

短編宝探しRPG『廃都に願いを』故郷の復興を掲げる少年の冒険と”願い”の物語

アイデンをどう強化していくかのタイミングを決めるのもプレイヤー任せだ。とは言え、強化はレベルを上げること、強力な武器・防具を調達するぐらいで、「スキルツリー」のようなものはないのだが。

ただ、どこで戦闘経験を重ねるかは「忍び足」のスキルを使うか使わないかで簡単に決められるのは快適。何より、集中したいタイミングの決定権がこちら側に委ねられているからこそ、ストレスなく取り組めるのが嬉しいところだ。この配慮が敷かれているのもあって、戦闘全体の難易度も適切な塩梅に収まっている。仮に強力な敵が登場する場所に入ってしまったとしても、「忍び足」を使えば容易に遭遇を回避できるので、理不尽さもほとんどない。理不尽に感じたとすれば、それは単純に対策不足である。

短編宝探しRPG『廃都に願いを』故郷の復興を掲げる少年の冒険と”願い”の物語

このように探索が中心で、RPGでもあることを踏まえた作り込みも徹底され、非常にバランスの取れた仕上がりになっている。何より探索主体である故の戦闘のお邪魔感が無いのは嬉しいところ。
攻略自由度の高さにせよ、探索アドベンチャーとしての出来栄え、RPGとしての遊びやすさも全てはプレイヤーにストレスなく遊3んでもらえることを強く意識していることの現れ。そんな具合に本作は「宝探し」という根幹たる遊びを際立たせ、魅力的にする工夫と作り込みが見事で、この作品でしか味わえない体験の数々を提供してくれるのである。

取り分け、探索(謎解き)と戦闘の2つを入れるなりの遊びにくさへの懸念を持つ人ほど、本作にはぜひ触れてみていただきたい。攻略順序を縛っていない所も含め、色んな意味で”理想的な姿”というものを目撃することになるだろう。

最後に驚きが待つストーリーも見逃せない良作

短編宝探しRPG『廃都に願いを』故郷の復興を掲げる少年の冒険と”願い”の物語

ここまで宝探しに焦点を当てた魅力を紹介したが、実はストーリーも非常に侮り難い内容だ。ある事件によって滅びた故郷の村を復興するため、ひとりの少年が宝探しをするというのが大筋で、序盤は比較的静かな展開に終始する。

だが、探索を進める内に「プルア」という女性と出会い、以降、「願いの神」と呼ばれる存在にまつわる話が語られていくようになる。さらにコキュートスの奥地まで行くと、アイデンが何故宝探しに挑んだかの暗い背景も語られ、徐々に重い雰囲気が漂い始める。

短編宝探しRPG『廃都に願いを』故郷の復興を掲げる少年の冒険と”願い”の物語

そして、目標の資金を集め切ってコキュートスからの撤収を判断した後には……思いもしないエンディングに向かう、意外な事態が発生するのだ。

何が起きるかはもちろん見てのお楽しみだが、きっと「まさかこんなことになるなんて……」という戸惑いを抱くこと確実。また、実はここに至るまで辿り、乗り越えてきた出来事の多くに、この一連の事態へと繋がる伏線が張られていたことに驚くだろう。最終的な締め括りも少しほろ苦いものになっていて、余韻が残ること確実。一体、宝探しを成し遂げた後に何が待つのか、気になるのなら直にでも本編を始めてみていただきたい。誇張抜きに、忘れるに忘れられないストーリーとして記憶に刻み込まれるはずだ。

短編宝探しRPG『廃都に願いを』故郷の復興を掲げる少年の冒険と”願い”の物語

このほか、全体のボリュームも前述のエンディングを目指した場合は大よそ2~3時間ほど。謎解きに要する時間に左右されるため、人によってはより短縮できるかもしれないが、短編らしい適切な物量だとなっている。かと言って密度は薄くなく、豊富な謎解きと前述のストーリー展開で申し分ない満足感が得られる。また、宝探しを題材にしているなりに全回収のやり込みも完備。これにちなんだ特典も用意されているので、挑戦しがいも十分だ。やり込みでは2周目以降、パートナーロボットなしで進めるプレイも楽しい。この場合、戦闘難易度もそこそこ高くなるので、腕と戦術に自信のある方はぜひ、挑んでみていただきたい

短編宝探しRPG『廃都に願いを』故郷の復興を掲げる少年の冒険と”願い”の物語

一部、マップにおいて壁か床なのか視認性に難のある部分があったり、「必殺スキル」の使い所が分かりにくいといった気がかりな箇所もあるが、宝探しの面白さと自由度の高さがそれを帳消しするほど、優れた完成度を誇り、記憶にも残るほどの印象深さを誇る本作。

短編宝探しRPG『廃都に願いを』故郷の復興を掲げる少年の冒険と”願い”の物語

RPG抜きに、探索アドベンチャーゲームとしても素晴らしくよくまとまった作品になっているので、機会があればぜひ、プレイいただきたい良作だ。可能な限り宝物を集め、故郷を復興させよう。その先にあなたは思いもしない願いと運命を目撃する……?!

[基本情報]
タイトル:『廃都に願いを』
作者:mobcharacter57
クリア時間:1~2時間
対応プラットフォーム:ブラウザ
価格:無料

プレイはこちら
※ゲームアツマール
https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm20245

※ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/25727

  1. HOME
  2. ゲーム
  3. 短編宝探しRPG『廃都に願いを』故郷の復興を掲げる少年の冒険と”願い”の物語
access_time create folderゲーム
もぐらゲームス

もぐらゲームス

もぐらゲームスは、ゲームプレイヤーとゲームクリエイターのためのWEBサイトです。 フリーゲーム、インディゲーム、アナログゲームを中心に、個人クリエイターや小規模なクリエイター集団が制作したゲームの紹介や、インタビューを行っています。

ウェブサイト: http://www.moguragames.com/

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。