CineWhoop Shooting STYLE 〜 vol.3 『Mont-Saint-Michel like never before! – Cinematic FPV』

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CineWhoop Shooting STYLE 〜 vol.3 『Mont-Saint-Michel like never before! – Cinematic FPV』


CineWhoop(シネフープ)と呼ばれる撮影用小型ドローンで作られた注目の映像とそれに関連する技術を紹介していきます。

文●青山祐介/構成●編集部

 

vol.3『Mont-Saint-Michel like never before! – Cinematic FPV』

 

撮影したパイロット

コロナ渦のロックダウン期間中に無人のモン・サン=ミシェルで撮影

この動画はフランスの写真週刊誌「パリ・マッチ」の企画で作られたもの。撮影はフランス人ドローンパイロットのFinckyが手がけた。彼が所属するドローンチームBuzar Droneが制作した。映像編集はビデオグラファーのEllvitzが担当。フランスでもっとも有名な観光地の1つとして知られる「モン・サン=ミシェル」は、1000年以上の歴史をもつ海に囲まれた修道院。1979年に世界遺産登録されており、現在は33人が住居している。普段は観光客が溢れているが、ロックダウン期間中で人がまったくいない状況で撮影できた。

https://www.facebook.com/FinckyFPV/

 

雲の中からおぼろげに現れる修道院の尖塔と島影。次第にあらわになるゴシック様式の建物は、フランスの大西洋岸にあるモン・サン=ミッシェルだ。周囲わずか900mという小さな島に、修道院を中心に建物が寄り添うように立ち並ぶモン・サン=ミッシェル。西暦966年に修道院が立てられて以来、要塞、監獄としても使用されるなど、さまざまな表情を持つこの島を、Finckyさんはドローンを駆使して描き出している。

1979年にユネスコの世界遺産に登録されたモン・サン=ミッシェルは、世界有数の観光地でもある。ふだんは1年を通じて大勢の観光客があふれるこの小さな島だが、折からの新型コロナウイルス感染症の拡大により、3月17日から観光客の受け入れを停止したことで、修道院を中心とするモン・サン=ミッシェルの厳かさが戻ってくることとなった。

 

ドローンが速すぎたり 極端な動きを排除した

フランスの『パリ・マッチ』誌に掲載されたこの作品は、BUZARDRONEという制作会社が手がけたもの。フリースタイルドローンと360°カメラを組み合わせ、大西洋にそびえたつ修道院、そして細い路地が入り組む街並みを描き出している。雲を抜けたドローンは、ミカエル像のアップからゴシック様式の搭屋を抜け、やがて細い路地を駆け抜けていく。まったく人がいない街並みの景色を見ていると、ここが要塞や監獄であったという歴史も連想させる。

ドローンを飛ばしたのはフランス人のFinckyさん。撮影にはGoPro HERO8とGoPro MAXを使用し、ReelSteady Goでブレ補正を行なっている。「今回のプロジェクトでは、今まで見たことのないモニュメントを新しいアングル、新しい形で探っていくのが狙い。そこで撮影中はドローンが速すぎたり、極端な動きをしないよう注意を払った。また、編集を担当したEllvitzにも、そこをよく理解して作業してもらった」という。

「近年のモン・サン=ミシェルは多くの観光客で溢れている。そのため観光が始まる前の何世紀にもわたって人がいない、建築物とその場所のオーラに焦点を当てて撮影できたことは、またとない機会だった」とFinckyさんは振り返る。

 

CineWhoopのTechネタ

本連載の監修でドローンエンジニアの田川さんがCineWhoopでキレイな映像を撮るためにメカニカル的な観点でワンポイントアドバイス!

監修 田川哲也

ドローンにも使われている、アイペックスコネクターの設計を本職とするドローンエンジニア。Facebookグループ「 U199 ドローンクラブ」の発起人、管理人。現在 DMM RAIDEN RACIN G チーム エンジニア。

 

映像酔いを起こさない飛ばし方

「軸ズレ」と「ロール方向の揺れ」が肝

今回もGoPro Awardの受賞作を紹介します。この動画はフランスの世界遺産であるモン・サン=ミッシェルを撮影したもので、今年8月に公開された。モン・サン=ミシェルは実は、私が一生に一度は行ってみたいと思っていた場所のひとつで、5年前の年末に訪れたことがあります。

巡礼者や修道士のほか、監獄時代には囚人が過ごした建物で、さまざまな人々が感じたであろう時間の流れを感じたいと考え、訪れましたが、そこは観光地。世界中からの多くの観光客でごった返して、それを感じることは難しかったです。

今回のこの映像には、私がイメージしていた、モン・サン=ミシェルがあります。コロナ禍のロックダウン中に撮影されたこの映像、パイロットであるFinckyさんも同じ想いで撮影に挑まれたのでしょう。

 

映像のブレ補正は後処理で

さて今回の撮影はこれまで紹介してきたCineWhoopよりも大きいプロペラサイズが5インチクラスのフリースタイル機に、GoPro HERO8とGoPro MAXを用いて撮影されています。

手ブレ補正に関しては、HERO8に搭載されているHyperSmooth2は使わず、手ブレ補正OFFに設定して、撮影後にReelSteadyGoというソフトで補正処理がされています。

撮影に使用された機体の詳細は明らかにされていませんが、彼がPiratframesというフレームメーカーのスポンサードを受けているので、Piratframesのフレーム、またフライトコントローラはKISSを使って組まれた機体なのではないかと推測します。フライトコントローラには数種ありますが、KISSは滑らかに飛ばすことができるフライトコントローラーで私の5インチ空撮機もすべてKISSです。

 

画面が大きいほど 映像酔いしやすいというが…

今回の映像をスマホ(6インチ)、ノートPC(15インチ)、外付けモニター(27インチ)、テレビ(65インチ)で鑑賞しました。一般的には視聴画面が大きければ大きいほど、映像酔いが起こりやすいといわれていますが、この映像は大画面ほど、ゆっくりと飛んでいるように感じられ、とても迫力ある映像に見えます(大画面で見ることを想定して作られた映像であると思います)。なかでも映像酔いが起こりやすいと感じたのは、PCの外付けモニターでした。これは鑑賞距離が近すぎたためだと思います(距離は約50cm)。

この映像が見やすく没入できることには、主にふたつの理由があると思います。ひとつは「軸ズレ」が少ないこと。もうひとつはロール(水平回転)方向の揺れが少ないことです。詳しく説明していきましょう。

 

「軸ズレが少ない」とは?

これは映像の20〜34秒のカットが参考になります。ドローンが遠方より修道院の塔に向かって飛んでいきます。その際、塔の屋根部分に焦点があっていて、軸がズレません。塔に近づきつつ、屋根部分を「ノーズ・イン・サークル」しながら、上昇して塔の先端をとらえて、ピッチ(上下)方向に機体を倒す。ロール方向の動きは最小限です。この「前方に進む」+「ノーズ・イン・サークル」+「上昇、下降」+「ピッチ」という動きが映像のいたるところに出てきます。

ちなみにノーズ・イン・サークルは被写体を中心に弧を描くように飛行する操縦方法で、ドローン撮影の基本中の基本です。プロポの操作はエルロン(ロール)とラダー(ヨー:左右)の組み合わせになります。

ジンバルが付いた空撮機の場合、ノーズ・イン・サークルの回転スピードはエルロンの舵の入れ具合(傾き)によって調整できます。しかし、ジンバルがないCineWhoopやフリースタイル機の場合は、できるだけロール方向には傾けたくありません。そのため、ピッチ方向に機体を倒して前方へのスピードを利用しつつ、ヨー軸方向に回すテクニックが使われます。

 

ノーズ・イン・サークルの良い例と悪い例


▲目標に向かって進んでいく。その推力(惰性)を使って回転し、カメラで常に被写体をとらえる。


▲カメラセンターが被写体センターからズレている。軌道も滑らかでない。

 

 

 

ロール方向の揺れが少ない

これについては36〜49秒の映像が参考になります。路地を飛び抜けるかなりスピード感ある映像ではありますが、ほとんどロール方向へほとんど機体が揺れていないことに気がつきます。特に45秒あたりの階段を90度に曲がるシーンはすばらしいです。

もちろんパイロットができるだけエルロンを使わずに飛ばしていると思いますが、90°のコーナーを曲がるシーンはさすがにこのスピードだと、ヨーだけの操作では曲がり切れません。おそらく機体は大きく傾いているのだと思います。しかし、ReelSteadyGoのスタビライザー編集により、なるべく水平を保ちつつスムーズな映像になっているのでしょう。

 

映像酔いの条件

せっかくシネマティックな映像を撮ってスマホの画面で視聴したときはいい映像だと思っていても、自宅のテレビの大画面で観たときに撮影した本人ですら酔ってしまい、残念な結果になることがあります。

映像酔いに関しては専門家が研究していますが、下図が示すようにいくつか条件があるようです。①FPV映像のようなダイナミックな動き。②大きな画面での視聴。③映像は遅くても速くても酔わない。30〜60deg/s(1秒間に30〜60回転)あたりの映像が酔いやすい。3Hの距離※で画面の端から端まで0.5秒で流れるような映像。④ピッチ、ヨー、ロールではロール方向の動きがある映像に酔いやすい。

科学的にもロール方向に揺れが酔いやすい映像ということがわかっているので、できる限りロール揺れを抑える飛行、映像処理で揺れを補正することが、魅力的な映像表現につながると思います。

※「3Hの距離」。16:9の映像を視聴する場合の最適な視聴距離は「画面の高さの約3倍」と言われている。

 

ロール軸の揺れで映像酔いが起こりやすい


▲左はロール・ピッチ・ヨーの回転方向の図。右は映像の回転速度と映像酔いの関係を表した図。横軸は右に行くほど回転速度が早くなり、縦軸は上へ行くほど映像酔いの影響が大きい状態。

 

 

●VIDEOSALON 2020年12月号より転載

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