【流星群を求めて1】『横浜流星 1st DVD R』17歳最後の夏の輝きが告げる“流星神話”

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【流星群を求めて1】『横浜流星 1st DVD R』17歳最後の夏の輝きが告げる“流星神話”

すい星が発するちりが彩る“流星”の輝き。それがまとまりより大きな輝きを放つ“流星群”。本連載では、そんな流星群としての俳優・横浜流星の足跡を辿る。第1回は、初のDVD記録映像『横浜流星 1st DVD R』(2014)を取り上げ、すべてのはじまり、その孤高の存在の「神話」を読み解く。

■17歳最後の夏、その日を摘み取れ!

【流星群を求めて1】『横浜流星 1st DVD R』17歳最後の夏の輝きが告げる“流星神話”

(C)2014 TOEI VIDEO

その記録は2014年まで遡る。『烈車戦隊トッキュージャー』(2014〜2015)で戦隊ヒーローを演じ、お茶の間に登場したその夏、彼は17歳だった。今や、数々の映画やドラマ作品に主演を重ね、若手俳優として実力を兼ね備えたその人気ぶりは他に類をみない。そんなキャリア絶頂の横浜流星が俳優人生の華々しいスタートを切り、まだあどけなさが残る17歳最後の夏に沖縄を訪れ、等身大の自分を見つめる様子をカメラが密着し記録したものが本作『横浜流星 1st DVD R』(2014)だ。
「理由のない胸のざわめきが、僕を突き動かす。急がないと、17歳の夏がもうすぐ終わろうとしている」、本作はこんな横浜自身のナレーションから始まる。初めての沖縄で、爽やかな潮風に吹かれながら、自転車を走らせる横浜は、秋の到来とともに年を重ねようとしている自分が、あともう少しの間だけこの最後の青春の狭間で揺らめく。彼は続ける。「僕の名前は横浜流星。でも、僕はまだほんとうの自分が何者なのか知らない」と。直後に彼の眼前には南国の美しい海が開ける。
17歳という年は、子どもと大人とのちょうどそのあわいを生き、危うくもあり、また美しくもある。彼は目の前の海を見ると、いかにもわんぱくな白のタンクトップをその場に脱ぎ捨て、波際に走り出す。燦々と降り注ぐ太陽の下、波と戯れたかと思うと、そのまま背中から水面に倒れる。波打ち際に身体を横たえ、遠く青空を望むその美しい視線は一体何を見つめるのか。「Carpe diem(その日を摘み取れ)」、アウグストゥス帝統治下の古代ローマに生きた詩人ホラーティウスによる詩句がふと頭をかすめる。それは、人生のある一瞬を逃さずにさっと摘み取るようにして大切にしなければならないという詩人の人生観を反映した名句である。波打ち際に立つ横浜は、この言葉通りに、17歳最後の夏の輝きの瞬間を人生の分岐点として記憶(記録)しているかのようだ。

■汗たぎるその輝き

【流星群を求めて1】『横浜流星 1st DVD R』17歳最後の夏の輝きが告げる“流星神話”

(C)2014 TOEI VIDEO

そんな17歳最後の夏は、肉体と精神の鍛錬を目的とするスケジュール構成でカメラが記録していく。まずいつもより早い朝5時に目覚める横浜は、限られた時間を無為に過ごすことなく、朝食作りを始める。フライパンに油を敷き、ハムを焼き、その上に卵を4つ落とす。しかし初料理なのか、完成する前の目玉焼きの黄身はすでに割れてしまっている。2021年4月期のドラマとして火曜日22時から放送されていた『着飾る恋には理由があって』で彼が演じたキッチンカー・ボーイ役を知る私たちには、17歳の彼の意外なほど手際の悪い姿に驚きつつも、それがまた愛おしくも思えてくる。それでも彼は何とかハムエッグを皿に盛りつけ、パンに挟んで無心で頬張る。
朝食後に向かうのは、精神修行のための道場である。小学1年生ではじめ、中学3年生の時には軽量級の世界大会で優勝した経歴を持つ筋金入りの空手家である横浜。純白の道着に黒帯を誇らしく締め、外国人の師匠相手に組み手に勤しむ。彼が繰り出す手さばきと真剣な眼差しからは、これまで鍛錬し養ってきた精神性が確かに感じられる。空手修行で汗を流した後には、農場体験があり、休む間もなくすぐに筋トレで肉体を鍛える。極限まで絞られた肉体を露に、暗がりのジムで黙々とトレーニングに励む。身体全体から汗が吹き上げ、右ストレートの瞬間にしたたる汗の雫が美しく一瞬の輝きを放つ。その一発ごとに発せられるシュッシュという息の音。上半身裸に黒パンツの熱気を帯びた戦士の姿には、彼が尊敬してやまないというクンフー・マスターであるブルース・リーの勇姿が自然と重なるようだ。あくまでもストイックなこの17歳。輝かしい未来への栄光はこうした日々の努力と鍛錬の賜物であったことがこの記録映像によって明らかとなる。それでも夕食のバーベキューでは、テンションが上がり肉と野菜を焼く網の上でハイキックを披露するなど、少年らしいお茶目な一面を見せることを忘れない。まったく、どこまでも愛らしい人だ。

■波打ち際の「神話」

【流星群を求めて1】『横浜流星 1st DVD R』17歳最後の夏の輝きが告げる“流星神話”

(C)2014 TOEI VIDEO

武術の世界では、精神と肉体の両立が望まれる。横浜の内ではそれが見事に合一されているかに見える。そこから彼は改めて17歳の自分についての考えを巡らせようとする。最終日には、「サンゴの畑」を訪れ、その保護活動の一端を知ることで自然と生命の密接な関係性への理解を深める。生命の源である海が人の心を捉えて離さないのは、それを目の前に臨んだ人が何か原初的な郷愁に駆られるからではないだろうか。気づけば、横浜は再び自転車を走らせ、海を目指していた。その雄々しい足が砂浜を踏み、押し寄せる波に浸される。
「沈みゆく太陽が水面を照らす。すべてが黄金色に染まり、あらゆる境目が曖昧になってゆく。僕はただこの身を投げ出して世界とひとつになる」、波打ち際の彼はそう言う。それは、海と陸、過去と現在、期待と不安のあらゆるものの「境目」に位置する。そこで彼が今、無防備な身体をさらけ出す時、雄大な思考の軌跡が神々しく美しい弧を描きはじめる。そうした彼の姿勢は、古代の英雄や哲人たちの薫陶を受けながら、自分という存在の謎と神秘へ向けての飛躍となる。
「夏の終わりがもたらす光、におい、手触り、温度、そして思い出それらが耳の奥で入り交じって、細胞が新しく生まれ変わってゆくのを感じる。寄せては返す波が教えてくれる。あらゆる命は繋がっていて、気の遠くなるような時間の果てに僕は生まれ、17年という月日を生きてきた。過ぎ去った時は二度と戻らないと言うけれど、いつか今日という日のかけらをふと思い出す時があるのかな」と、詩的な感慨を口にする横浜の“流星神話”は、過去と現在の記憶が織りなす先にある未来まで語り継がれてゆくのだろう。


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