テーマで歩く山の旅 #16 梅雨の晴れ間に北八ヶ岳の樹林と水辺を狙う

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テーマで歩く山の旅 #16 梅雨の晴れ間に北八ヶ岳の樹林と水辺を狙う

週末はどの山に行こうかな――。 高嶺の頂や秘境の道で非日常を味わう登山も好きですが、山里の歴史文化を探究するフィールドワーク的な山旅はもっと好きです。登山と“テーマ”を掛け合わせて、超個人的な視点と偏愛で楽しんだ山旅の思い出を、ちょっとずつ綴っていきます。

梅雨の季節は準備を怠らず、じっと晴れ間を待つ

梅雨の間も、意外と“山”のことばかりやっている気がします。道具の手入れをしたり、装備の組み合わせ方や軽量化を模索したり、地図を眺めて夏山の計画をしたり、デスクに積みあがった山の書物を読み耽ったりして。そんな時、傍らにはもちろんビールがあります。登山の楽しさは山にいる時だけじゃないんだよなぁと、ほろ酔い気分で山道具を眺めたり触れたりしている時間が好きなんですよね。

みなさんは、どんな風に梅雨を過ごしているでしょうか。いまはYOUTUBEがふつうになってきているし、撮りためた動画を編集して公開しようと準備している人も多いのでしょうね。ぼくは写真はやりますが、動画はいまひとつモノにできていません(GoProは持ってますが)

外から届く雨音に耳を傾けながら、天気のメカニズムや観天望気(自然現象、生き物の行動、言い伝え、ことわざなどから天気の変化を予測すること)について学ぶのも◎です。実際に天気図を眺めながら天候を予想するのが楽しくて、そうやって少しずつ自分なりの“天気読み”のセンスを磨いていくことは、後々役に立つと思うわけです。

どれどれ来週はどうかなと最新の天気図と予報に目を通し、高気圧が張り出してきそうなタイミングをつかむことができたら……。さあ、手入れしておいた道具の出番ですよ。

夏でも薄暗い樹林帯。北八ヶ岳で苔と水辺を楽しむ

梅雨の晴れ間は気温が上昇して湿度が高く、もはや真夏となんら変わりがありません。ぼくのメインフィールドたる低山は過酷な暑さとなり、熱中症のリスクがかなり高め。とまらない汗に、まるで修行のようだと後悔することもしばしば……。まあ、その分、下山後の温泉とビールは格別。それを期待して、あえて“魔夏”の低山を歩くことは稀にあります。ごく稀にですが……。

とはいえ、やはり夏場は高い山域や高原・湿原が気分でしょう。たとえば、強烈な陽射しもなんのその、鬱蒼として薄暗い樹林の広がる北八ヶ岳は、ひと足早い夏山の雰囲気を味わうのに最適なエリア。梅雨の雨で美しさの際立った苔も魅力です。

特に白駒池とその周辺は、苔生す樹林、夏空を真っ青に映し出す水辺、そして見晴らしのよい岩場と、夏山の魅力が三拍子が揃っている北八ヶ岳の入門的コース。茅野と佐久からバスが出ているし、駐車場もある。アクセスの良さもまた魅力なのです。

シラビソやコメツガが密集する森には苔がびっしり。その中を、よく整備された木道とよく踏まれた登山道が続いています。駐車場から白駒池までは10分程度と近く、湖の散策だけなら軽装の観光客でも問題なく歩ける素晴らしい環境。とはいえ、そこは梅雨の合間のこと。雨上がりは滑りやすいのでご注意を。

白駒池は標高2000m以上にある天然湖として日本最大。色付いた紅葉が湖面に映える秋と全面凍結する真冬にもハイカーが絶えませんが、夏もまたいいんですよね。周辺にはニュウや高見石といった岩の展望地があり、それぞれ原生林の中にぽっかりと穴を開けた白駒池を眼下に見下ろすことができます。森林と湖畔の散策に加えて、ちょっとした登山も楽しめる。ファンが多いことも頷けます。

ニュウ、にゅう、乳、ニュー、にう。呼び方も表記も由来も諸説あり

ところで、山のあちこちで見かける“ニュウ”がいろいろあって面白いんです。

白駒池を起点にニュウ~中山~高見石と時計回りに周回して白駒池へと戻る4時間ほどのコースには、実にさまざまな「ニュウ」を見つけることができます。このような同音同義の言語が複数表記されることを「表記ゆれ」といいます。国土地理院地図の中ではカタカナ表記で統一していますね。

ぼくは米どころ東北の出身なので、収穫で刈り取られた稲の束が田んぼに積み上げられている秋の風景には馴染みがあります。そうやって乾燥させているわけですね。これを稲積と書いて「にお」とか「いなにお」などといいますが、転訛して「にう」「にゅう」と呼ぶ地域もあるとか。この山は、つまり稲積の形に似ていることから名づけられたという説があります。形でいえば乳にも似ているそうで、山頂には「乳」も発見しました。ニュー中山とはいったい……いや、これはニューと中山ってことですか。面白いですねぇ。

ツバメが低く飛べば雨。よく知られた観天望気のひとつです。駅舎や商店街でツバメの巣を見かけることが多いですが、駅から登山口に向かう途中で目線の低さを飛ぶツバメを見かけたら注意しておきましょう。そういうことを観察しておくと、山で急な天候判断をするときに意外と役に立つかもしれませんよ。

こちらは高見石小屋によく現れるホシガラス。ちょっと調べてみましたが、天気との特別な関わりがあるかどうかは、残念ながらわかりませんでした。

文と写真:大内 征(低山トラベラー/山旅文筆家)

大内 征さんの記事

過去の「テーマで歩く山の旅」、大内征さんの書籍「低山手帖」を以下で紹介しています。気になる方は是非チェックしてみてください。


山旅旅
低山トラベラー 大内征『テーマで歩く山の旅』
https://yamatabitabi.com/archives/tag/low_mountains/
日本トレッキング協会 理事、低山トラベラー/山旅文筆家の大内征のコラム。土地の歴史や物語を辿って各地の低山を歩き、自然の営み・人の営みに触れながら日本のローカルの面白さを探究。山旅旅ではテーマで歩く山の旅と題して、登山と“テーマ”を掛け合わせて、大内征的な視点と偏愛で楽しんだ山旅の思い出を、ちょっとずつ綴っています。

山歩きをこれから楽しもうと思っている人、秋冬に登山回数が減ってしまう人に是非ともおすすめしたい書籍、『低山手帖』。山登りのイメージが覆ること間違いなしです。『低山手帖』の著者 大内征さん低山トラベラー・山旅文筆家の大内征(おおうち・せい)さんを知ったのは読売新聞に掲載されていた『低山手帖』という書籍に関する大内征さんへのインタビュー記事だった。そこには低山里山で発見することのできる、歴史小説や神話・民話の舞台となった山のこと。更には人の営みに密接に関わる日常的な側面がふんだんに低山にはあり、そ…
【レビュー】低山手帖-低山歩きは知的な大冒険 – 山旅旅

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