「己との戦い」をテーマにした渾身の新作を集結。Haroshi 個展「I versus I」
Haroshi
Mosh Pit
2021
Carved skateboard elements
H182 x W365 x D2 cm
©Haroshi Courtesy of NANZUKA
東京都在住のアーティストHaroshiによる個展「I versus I」が、渋谷神宮前の新ギャラリーNANZUKA UNDERGROUNDにて開催。2017年「GUZO」、昨年の夏に2Gと3110NZにて同時開催をした「FREE HYDRANT CO」、「1:1」に続く新作による個展となる。
Haroshi は、2003年より独学で習得した技法を駆使し、スケートボードデッキの廃材を使った彫刻作品、インスタレーションを制作している。ストリートブランドとのコラボレーションや、BATBのトロフィーなどを通じて、現代のストリートカルチャーの深層を体現する数少ないアーティストの一人として、絶大な支持を集めている。2018年には、Art Basel Miami BeachのNOVAセクションにおける個展、2019年から2020にかけてJeffrey DeitchのNYとLAを巡回した「Tokyo Pop Underground」にて、この展覧会を象徴する5m四方の大作のインスタレーションを発表し、大きな話題となった。
Haroshi
GUZO
2020
Carved skateboard elements
H50 x W18 x D12 cm
©Haroshi Photo by Shigeru Tanaka Courtesy of NANZUKA
Haroshi
GUZO
2020
Carved skateboard elements
H40 x W20 x D9 cm
©Haroshi Courtesy of NANZUKA
Haroshiの作品を理解する上で、「ストリートカルチャー」の起源と現在の複合的な「ストリート」 の語彙について語らないわけにはいかない。”Street Culture”とは、1970年代に、NYのブロンクスで、ラップ、ブレイクダンス、DJ、グラフィティといった遊びが発展して生まれた「ヒップホップ」と、LAのドックタウンを拠点とする Z-BOYSというチームによって、プールスケーティングやエアーランディングといった革命的なスタイルが齎された「スケートボード」シーンを同時に象徴する言葉とされている。ここで重要な事は、このカルチャーの担い手が、人種的・性的なマイノリティやドロップアウトしたキッズといった人々であり、上位社会における価値規範に対抗した、独自の価値観や行動様式、言語を育むという創造性に根ざしていたこと。やがて、この” Street”という言葉の意味は、“PUNK“のイデオロギーとも融合しながら熟成して成長し、「信念を 曲げずに生きるカッコ良さ(real)」、「バトルの精神(beef)」、「自分で生み出す(DIY)」、「仲間を大事にする(my men / homie)」といった哲学的な意味を含む言葉として定着するようになった。振り返って、Haroshi の作品を捉える時、そこに見えるのは、自らが育った、こうしたカルチャーへの実直なリスペクト(尊敬)であり、また揺るぎないスケードボードへのひたむきな愛情。Haroshiが、自ら使い古したスケートボードで作品を作ろうと決めた時、そこにまず最初にあったものはスタイルではなく、熱情であり、その事実が Haroshi の現在に至る全ての創作活動を支えている。
本展「I verus I」は、「己との戦い」をテーマにした渾身の新作を集めた個展。今回展示される作品は、大きく分けて3つのシリーズから構成される。使い終わったスケートデッキを刻んで平らに並べ直し、スケーター1人1人の個人史とスケートボードカルチャーの総体を絵画として構成したモザイク平面作品「Mosh Pit」、スケートボードとそのカルチャーを愛するものへの守り神としての彫像作品「GUZO」シリーズ、また古いプラスティックビニール製のアクションフィギアを修復改造し、新たな命を吹き込んで生まれ変わらせたモノへの愛情を象徴するソフビ作品のシリーズだ。パンデミックによって、さまざまな制限を強いられることになった私たちの生活や社会構造の変化を目の当たりにしながら、Haroshi はスタジオにこもり、まるで修行僧のように、ただ黙々とここに並ぶ作品たちを製作し続けてた。
Haroshi
I vs I
2021
Vintage action figure with carved skateboard elements
H30 x W16 x D12 cm
©Haroshi Photo by Shigeru Tanaka Courtesy of the artist and NANZUKA
Haroshi
G.W.R.D
2021
Vintage action figure with carved skateboard elements
H43 x W27 x D8 cm
©Haroshi Courtesy of NANZUKA
Haroshi は、本展に寄せて自らの作品について次のように解説している。
「Mosh Pit は、役目を終えたスケートボードの傷ついた美しい姿にフォーカスした作品です。ス ケートボードのグラフィックは、スケーターの繰り出すトリックによって各々の形に傷ついて(ペ インティングされて)、その美しさは完成形に向かい、と同時に、終局にも向かっていきます。まるで Mosh Pitのようにスケーターのぶつかり合うようなパッションを、その結晶でもあるスケートボードによってそのまま作品に閉じ込めたのです。GUZOはスケーターを支えてきたスケートボード自体の自己犠牲の精神を尊いものとし、それを神格化した神像です。スケートボードの傷ついていく様は、まるで “ the passion of the skateboard” といっても良いような、ドラマチックなもので、僕らの代わりに傷ついていくスケートボードを神様として復活させなくてはと思いました。ソフビのシリーズは、子供の頃に僕らの手によって砂場やお風呂場で繰り広げられた激しい死闘の末、傷だらけになり破損したソフビ人形達を、大人になった僕らが今、またコンクリート上で激しい死闘を繰り広げ、深手を負わせたスケートボードによって修復し、傷ついた両者がお互いの足りない部分を補いながら、新たな形に進化していく物語です。」
本展に際し、Haroshiの2003年から現在に至る作品をアーカイブした、全520ページに及ぶカタログを NANZUKA の自費出版にてリリース。
Haroshi
「I versus I」
2021年7月10日(土)~8月8日(日)
NANZUKA UNDERGROUND
東京都渋谷区神宮前3-30-10
火曜日 – 日曜日 11:00-19:00
*月曜日休業
[email protected]
nanzuka.com
Haroshi IG: @haroshi
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ウェブサイト: http://www.neol.jp/
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