食文化の違いがうなぎの蒲焼きにも!関東と関西の違い5つ
うなぎの蒲焼きの関東と関西の違いとして、関東は蒸すのに対し、関西は蒸さないということを知っている人も多いかもしれません。でも、うなぎの蒲焼きの違いは、それだけではありませんでした。食に対する好みの違いといえばそれまでですが、実は関東は効率も考慮されていたようです。
うなぎの蒲焼き関東と関西の違い5つ
関東と関西のうなぎの蒲焼きの違いを5つ紹介します。現在流通しているうなぎは、ほぼ養殖うなぎですから、素材自体の違いは無いと考えても良いでしょう。
関東風は背開きに対し、関西風は腹開き
関東は蒸すのに対し、関西は蒸さない
関東のうなぎは小さめのが好まれ、関西は大きめが主流
関東は白焼きで皮をよく焼くのに対し、関西は身をよく焼く
関東は短い串を使い、関西は長い串を使う
うなぎの蒲焼きの違い「関東背開き関西腹開き」
武士の文化の関東は、切腹を想像させる腹開きを嫌ったという話を耳にしたこと、ありませんか?それが本当に理由の1つだったのかは不明ですが、実際は関東と関西の焼き方の違いや、効率の問題などがあったようです。
この後紹介する、蒸す、蒸さないや、串の長さといった5つの違い全ては、関東と関西のうなぎの焼き方に起因しています。
関西の焼き方は、頭をつけたまま腹開きにしたうなぎに、長い串を挿して焼くというものです。この時、腹開きだと身が崩れやすいというのが1つの理由です。
もう1つは、腹開きの方が技術的に難しいためです。うなぎは生きたままを捌くものですが、背開きであれば、少し慣れた程度の人でも捌くことができるそうです。
少ない人手で、できるだけ沢山のうなぎを捌くために、商売という観点から背開きが一般的になったのが関東だということです。
うなぎの蒲焼きの違い「蒸す関東蒸さない関西」
関西は蒸さないから脂がギトギトしているとか、関東は蒸すから身が柔らかすぎてとか、様々な言い分はあるかと思います。
でもこれは好みの問題ですし、関西のうなぎの蒲焼きも、技術がしっかり伝わっている店舗では、脂を適度に落としています。養殖うなぎが多くなった最近では、関西でも柔らかいうなぎの蒲焼きが多くなったようです。
関西の長い串や身をしっかり焼くに通じる部分ですが、蒸す蒸さないという違いも、それぞれの焼き方に起因します。
白焼きの段階で身側をよく焼く関西では、その時に、余分な脂を落としています。ですから、関西のうなぎの蒲焼きは、関東に比べてやや固めに仕上がります。
うなぎの蒲焼きの違い「関東は小さいうなぎ関西は大きなうなぎ」
関西では1匹のうなぎを捌いて、そのまま焼き、最後に器に合わせてカットするという流れで供されるため、大きなうなぎのほうが効率が良かったというのが、大きな理由です。
関東は、いかだという焼き方をするので、焼台に何匹も乗せられますが、長焼の関西では血さなうなぎでは、何匹も乗せて焼くことができなかったためです。
関西で大きなうなぎが好まれるもう一つの理由として、うなぎの売価的な理由もあります。小さなうなぎだと、時間も手間もかかってしまい、その分が単価に影響してしまいます。
1匹の大きなうなぎを焼いて2人前の蒲焼きができるのと、3匹のうなぎを焼いて2人前の蒲焼きしかできないのを考えると、おのずと想像ができると思います。
それに対し関東は、うなぎを同じ長さに切ってから蒸すという方法なので、逆にやすい小さなうなぎを買い上げることで、売価を抑えていたのかもしれません。
うなぎの蒲焼きの違い「関東の白焼きは背関西の白焼きは身」
うなぎは生きたまま捌かないと、美味しいうなぎの蒲焼きにはなりません。昔は天然ものしかなかったのですから、それをどう美味しく食べてもらうかということに、職人さんたちの苦心があったのでしょう。
関西は、蒸さない代わりに、白焼きで脂を落とします。皮を軽く炙った後に、身は狐色になるまでしっかり焼きます。この白焼きの間に、縫い串という技術を駆使して、うなぎの身を柔らかくするのです。
天然もののうなぎしかなかった昔は、うなぎの質や季節によりバラツキがあり、焼いた直後は柔らかかったうなぎが、冷めると固くなってしまうことがありました。そこで誕生したのが、ご飯の熱で蒸すというまむしという食べ方がです。これが転じてひつまぶしが出来ました。
関東は、季節やうなぎの質に関わらず、柔らかいうなぎをできるだけ早く提供したいという思いから、蒸すという工程が入りました。しかし、最初は蒸す代わりに、白焼きが終わったうなぎを積み重ね、蒸らすという作業をしていたようです。
蒸らすためにうなぎを重ねておくと、下になったうなぎが潰れてしまって商品にならないことから、蒸すという形になりました。
蒸すことで、ぶよぶよした食感になるうなぎの皮に香ばしさを加えるため、皮側をよく焼くのが関東風の白焼きです。
うなぎの蒲焼きの違い「関東は短い串関西は長い串」
これまでにも何度か書いてきましたが、関西では1匹のうなぎを、頭からしっぽまでついた状態で焼きますから、長い金串が使用されます。
一方、筏のような形にしたうなぎを焼くにも蒸すにも、長い串が邪魔になるのが関東風の調理法です。特に蒸して身が柔らかくなった関東のうなぎの場合、金串が抜けてしまったり身崩れが起こってしまったりします。そのため、短い竹串が重宝されています。
金串は熱伝導率が高いため、熱くなって使いづらい一方、竹串は捌いたうなぎに思い通りにさせるようになるまでに長い時間がかかるといった、一長一短があるようです。
おわりに
うなぎの蒲焼き、関東と関西の違いは、探せばもっとあるのかもしれませんね。関東、関西に関わらず、天然うなぎを使用していた時代の、職人さんたちの創意工夫には頭が下がります。今年も、美味しいうなぎの蒲焼きをいただきましょう。
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