玄関までドローンが配送? エアロネクストの描く空の物流の未来

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空には、まだまだ未来がある——。

ドローンによる物流配送を実現するべく、自社の技術を活かして事業に取り組むスタートアップ企業、株式会社エアロネクスト。今回は同社代表取締役CEOの田路圭輔氏に「空の物流の可能性」について話を伺いました。

なぜいま「空の物流市場」なのか

ーー御社が取り組んでいるのは空の交通・物流を円滑にするような事業とのことですが、なぜこれが必要なのでしょうか?

田路:コロナの影響もあり、EC化は進む一方です。人は動かずモノが動く時代。となると、必然的にモノの流通量が増えてきます。

そんな中、日本の過疎化が進むエリアでは「物流難民」と呼ばれる人が出始めてきています。全国的な配送ドライバー不足はもちろんですが、山間部など陸路での輸送が難しいエリアがあるというのもその原因となっています。

こうした状況で、私たちは「空」と「無人化」に可能性を見出しました。つまりドローンです。

技術的にも非常に難しいですし、法整備などもまったく整っていない分野なので難易度は高いのですが、チャレンジしてみたいな、と。

ーーなるほど。

田路:ちなみに、これまでドローンは「目の代わり」として活用されてきました。カメラを搭載して高い場所を飛んだり、危険な場所へアクセスしたりする用途です。

ですから、空中で「ホバリング」して同じ場所にとどまり続けることが技術的に必要とされてきましたが、物流のためのドローンは移動することがメインなので、イメージとしては航空機に近いんです。

無人飛行の小型航空機とも呼べますので、そうした機体には一方向に高速で飛ぶことが求められます。今まで中国などで作られてきたモノとは機体の構造が異なるんですよ。

そこに私たちの持つ技術がハマりました。

ーーどのような技術でしょうか?

田路:モーターの回転数を一定に保つ技術です。これによって空を長距離移動することができるようになります。

自動車でもそうですが、街中を走るよりも高速道路のほうが燃費が良いですよね。走る速度が一定だからです。これは航空機でも一緒で、モーターの回転数を一定に保てば長い距離を飛行することができるんです。

JAXAなども注目してくれて、昨年2020年の8月には株式会社ACSL(自律制御システム研究所)さんとライセンス提携も締結しました。僕らの技術を搭載した物流専用機を、ACSLさんが開発・製造してくれるようになります。

ーー「自分たちの持つ技術」こそが何よりも大切ということですね。

田路:そうですね。「誰かのこういう課題を解決してあげたい」というニーズから逆算して会社や事業を立ち上げているというより、「自分たちにはこういう優れた技術がある」「この技術は世の中に必要で、どこにも負けない」という部分からビジネスを構想していく考え方で事業を進めてきました。結果として社会課題の解決に貢献できそうです。

空の物流の課題とは?

ーードローンを飛ばすにあたり、実際に難しいところはありますか?

田路:まず課題なのが法整備ですね。空の物流を社会に実装しようにも、ルールの整備がまだ追い付いていないんですよ。1度飛行するための申請にもかなりの時間がかかりますし、現段階では無人地帯でしか飛ばせないことが多いんです。

こういう状況の中、昨年山梨県の小菅村と連携協定を締結しました。ここに物流ドローンの研究開発拠点兼試験飛行場を設置して、新しい物流の実証を実施する予定です。

ーーなるほど。では技術面での課題はいかがでしょうか。

田路:一番大きいのは、運べる距離と荷物の重さについてです。現時点では、往復20km、重要5kgが限界。

そのため、ドローンだけで物流を完結するというのはかなり難しいんですよね。生産者の倉庫から消費者の玄関までを一貫して空で繋ぐ社会はまだまだ先の未来になりそうです。

この技術的な課題の原因として一番大きいのはバッテリーです。バッテリーは重いうえに、ガソリンと違って使っても重量が減らないんですよ。なので、丁度良い大きさのバッテリーを積んで飛行距離を伸ばす、というチャレンジになってきます。

ーー片道10kmと聞くとかなり短いように感じてしまいますが……。

田路:この距離を伸ばせるように努力しているというのはもちろんなんですが、実は片道10kmしか飛べなくても十分に配送ビジネスとして成立すると考えています。

これは、配送形式が「ルート」ではなく「ピストン」だからです。

トラック配送の場合、いくつかの配送場所に対して「ルート」を決めて配送していきますが、ドローン配送では1つの荷物を1つの配送場所に直線的に配送していく形を想定しています。

この配送形式は今後ますます求められるようになると思いますし、そうなったときにドローン配送は十分太刀打ちできるなと考えています。

物流の未来は「オンデマンド」だ

ーー無人のドローン配送が実装されると、社会はどのように変化するのでしょうか?

田路:配送がもっと「オンデマンド」になっていくのではないかなと思います。

ユーザーが「いま欲しい」と感じたものを、その瞬間に届ける。たとえば出前などのフードデリバリーも10件20件の大量ルート配送はしていないですよね。温かい食べ物を届けないといけませんから。

これが医療品など緊急性を要する荷物なら尚更です。「あっちこっち回っているので順番待ちです」では困ると思うんですよ。

なので今後配送というのは、直接届けるという意味での「オンデマンド」式に進んでいくのではないかなと考えています。

ーーでは実際に私たちがこのドローン物流の恩恵にあずかるのはいつ頃になりそうでしょうか?

田路:正直なところ、まだまだかなと。ちゃんと計算していませんが、とにかくコストがかかってしまうので、今の段階では消費者が負担できる額ではないでしょう。

いまの環境でのドローンの配送料は、概算でもかなり高コストです。自転車やトラックではなく、ドローンになったからといって消費者は余分にお金を払ってくれるわけではありませんから、今すぐは厳しいかなと。

ーーなるほど、たしかにそうかもしれません。

田路:しかし着実に実現に向かっているなという認識はあります。

今後の3年間で、まずは日本の過疎地にドローン配送をインストールしようと思っています。その次に無人地帯を超えて有人地帯へ。地方都市や郊外にも飛ばせるよう法律が整備されていくはずです。

有人地帯でのドローン物流が可能になれば、需要が一気に高まるので、今度は「プラットフォーム」としてのベースが形成できるはずです。つまりオンデマンドで荷物を消費者へ配送する仕組みの土台をつくれるはずだと考えています。

技術には自信があるので、あとはこれを製品化・サービス化したうえで、最後に一気に乗算的に広まる「プラットフォーム」を確立したいです。

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