「鶏鳴狗盗」とはどういう意味?ニワトリがどう関係あるの?
鶏が鳴いて犬が盗むと表記する四字熟語の「鶏鳴狗盗」。
この言葉は、くだらない特技を持つ人を指す言葉です。
鶏が鳴いて犬が盗むという行為と、くだらない特技を持つ人の間にはどんな関係があるのでしょうか?
そこでここでは、そんな不思議な四字熟語「鶏鳴狗盗」について解説します。
その意味についてはもちろん、なぜ鶏や犬などの動物が含まれる言葉なのかもご紹介します。
「鶏鳴狗盗」とは
まずは鶏鳴狗盗の意味について見ていきましょう。
ここでは鶏鳴と狗盗の2つの言葉について詳しくまとめます。
「鶏鳴狗盗」の意味
鶏鳴狗盗は、鶏の鳴きまねをして人を欺き、こそこそと犬のように盗みを働くという言葉です。
くだらない特技を持つ人をあらわす言葉でもあります。
特につまらないことしかできない人の例えとして使用されます。
その一方、つまらないことでも何かの役に立つことがあるという例えとしても使用される言葉です。
「鶏鳴」とは何のこと?
「鶏鳴」は夜明けに鳴く鶏のことを指します。
鶏鳴狗盗においては、鶏が鳴くことではなく、鶏の鳴きまねをする人物の事をあらわしています。
「狗盗」とはなに?
「狗盗」は、犬のようにこそこそと盗みを働くことを意味します。
「狗」単体だと家畜として飼い親しまれるイヌ科の獣を指します。
転じて、スパイや回し者をあらわす言葉でもあるそうです。
特に卑しいことをして人を欺く人の例えとしても使用されます。
「鶏鳴狗盗」の由来
では、鶏鳴狗盗という言葉には、どのような由来があるのかを見ていきましょう。
この成り立ちを知ると鶏と狗がこの言葉の意味にどのような関係があるかが分かりますよ。
「史記」に書かれた故事から生まれた
その昔、中国の戦国時代と呼ばれた時代の斉の国出身の「孟嘗君(もうしょうくん)」という人物が、秦に幽閉されていました。
なんとか秦から脱出したい孟嘗君は、秦の王の寵姫に命乞いをします。
すると、かつて孟嘗君が宝としており、秦に来た際に王に献上した白狐の毛皮を渡すように言われました。
もう手元にないものをどう渡したらいいのか悩んでいると、孟嘗君の食客のひとりで盗みが得意な者が王の手元にあった白狐の皮を盗んで来ました。
そして、それを寵姫に贈ることで釈放されるように手配してもらったのです。
しかし、孟嘗君の危機はここで脱したわけではありません。
秦から脱する関所を抜けないといけなくなったのですが、門は開いていません。
その関所は夜が明けないと門は開けないというしきたりがありました。
しかし、その時はまだ夜明け前。
門があくまでまだ時間がかかります。
ところが、孟嘗君はのんびり時間を待っている暇はありませんでした。
実は、一度は釈放を許した秦の王ですが、再び孟嘗君を追っていたのです。
その時、供にいたひとりが機転を利かせ鶏の鳴きまねをすると、その鳴きまねがうまかったのか、本物の鶏たちが鳴きだしました。
これによって関所の紋を開かせたことで、無事に秦から脱出したのです。
この孟嘗君の危機を救った、盗みの技術と鳴きまねから、「鶏鳴狗盗」という四字熟語が生まれました。
由来に関わる「孟嘗君」とはどんな人物?
孟嘗君は中国戦国時代の政治家です。
孟嘗君というのは通称で、姓は媯、氏は田、諱は文といいます。
斉の公族で威王の孫にあたる人物ともされています。
彼は、秦を苦しめた4人の他国の武将や政治家、「戦国四君」の1人として数えられており、非常に優秀な人物とされます。
実は、鶏鳴狗盗の由来となった秦での拘束劇。
もともとは、秦から宰相になることを請われたので赴いていたのです。
宰相というのは、王を補佐する政治家としての最高職にあたります。
このことからも孟嘗君がいかに優れた人物かが分かります。
秦の王へ讒言した人物がいたため、残念な結果になってしまいましたが・・・。
人を使う事にも長けており、秦を脱出するのを手助けした人物も含め食客は3000人ともいわれる人物を招いていたのだとか。
斉に戻った後は斉で宰相を務め、秦からの侵攻を防ぎながらも、斉の発展にも力を入れたとされます。
後に魏に行きその地でも宰相を務めています。
類義語は「竹頭木屑」
鶏鳴狗盗の類義語には「竹頭木屑」という四字熟語があります。
「竹頭木屑」の意味
竹頭木屑は、役に立たないものや細かなものの例えです。
「竹頭」は竹の切れ端を、「木屑」は木の屑をあらわしています。
転じて、つまらないものでも役に立つことの表現としても使われるようになったのだとか。
特に「つまらないものでも疎かにしてはいけない」という戒めでも用いられます。
また、捨ててしまうようなものを利用することをあらわす際にも使用します。
この言葉は、船を作る際に、竹や木の切れ端や屑を取っておいて、後日それらを役立てたという故事から来ています。
まとめ
鶏鳴狗盗は、鶏が鳴き犬が盗むという言葉です。
その意味は、直接動物の行動をあらわしているわけではありません。
かつて、中国の孟嘗君を助けた人物たちの特技から来ています。
その故事から、くだらない特技やどんな特技も人の役に立つことがあるという意味で用いられます。
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