スーパーリーグ構想とは何だったのか…ドイツのUEFA運営委員が語る背景

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スーパーリーグ構想とは何だったのか…ドイツのUEFA運営委員が語る背景

大々的にぶち上げられ、各方面からの猛批判を浴びて、構想発表からわずか48時間で計画がしぼみつつあるヨーロッパ・スーパーリーグ構想。ビッグクラブは以前から過密日程や金銭面の配分を巡ってUEFAやFIFAと対立しており、今回もその一環と見る向きもある。同じような騒動は、今後も繰り返されるかもしれない。

 4月19日、欧州トップ12クラブが連名で「ヨーロッパ・スーパーリーグ構想」を発表すると、欧州サッカー界は大きな話題となった。イタリア、スペイン、そしてイングランドの3カ国のトップクラブが、2024年から始まるUEFAチャンピオンズリーグの新フォーマット発表に合わせて動いたものだ。ユベントスのアンドレア・アニェッリ会長、レアル・マドリーのフロレンティーノ・ペレス会長らの顔がメディアに頻繁に取り上げられた。

 欧州サッカー各クラブのファンや関係者の猛反発を受け、わずか48時間のうちに下火になってしまったが、ここまで計画が具体化したのは初めてだった。レバークーゼンCEOで、UEFAの欧州クラブ競技委員会を務めるフェルナンド・カロは、この動きを予想していた。4月7日の『シュポルトビルト』の中で話をしている。

1990年代後半から続く対立

 もともと、この「スーパーリーグ構想」は15年も前からあったものだ。当時「G14」と呼ばれる欧州14クラブが連携した組織が企画したものの、今回と同じように猛烈な反発に遭って計画は立ち消えになっていた。この組織に参加していたクラブは次の通り。

イタリア:ミラン、ユベントス、インテル
スペイン:レアル・マドリー、バルセロナ、バレンシア
イングランド:リバプール、マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル
ドイツ:バイエルン、ドルトムント、レバークーゼン
オランダ:アヤックス、PSV
フランス:マルセイユ、パリ・サンジェルマン、リヨン
ポルトガル:ポルト

 この「G14」は、グローバル化やビジネスの拡大などに伴い、1990年代後半から本格的になり始めた過密日程や代表戦で負傷した選手の補償などの調整を目指し、UEFAやFIFAと交渉するために欧州のビッグクラブが連帯したのが始まりだ。2008年からは、欧州全土のクラブを代表してUEFAと交渉を行う「欧州クラブ機構(ECA)」として、バイエルンのカール・ハインツ・ルンメニゲCEOを会長とした公的機関となった。

焦点となったのはCLの支配権

 『シュポルトビルト』によれば、今回のスーパーリーグ構想の中心として動いていたのは、ミラン、マンチェスター・ユナイテッド、そしてRマドリーの3クラブ。スーパーリーグ構想を実行に移すかどうかはともかく、これらのクラブが欲していたのは、ECAがCLのマーケティングを独自に進める権利だ。CLのマーケティングを独自に進める機構を作り、スポンサー料やテレビ放映権、投資家の参入といった資金の流入から分配までの裁量権を確保することが狙いだった。

 レバークーゼンのCEOでもあるカロは、その狙いには理解を示している。

 「UEFAが運営組織だが、経済的なリスクやコストを引き受けるのはクラブだ。それはコロナ禍でも変わらない。その点で、クラブやオーナーがUEFAとの交渉権を望むのは理解できるし、その権利もある。収益や損失の管理の最適化について話し合うことも含めてね」

 同時に、ECAが計画していたアメリカの投資銀行『JPモルガン』によるスーパーリーグへの毎年50億ユーロ(約6500億円)の出資には難色を示している。

 「1つの投資機関を参入させる必要性は感じない。UEFAにしろクラブにしろ、欧州の大会のマーケティングを進められる状態にあるからだ。“投資家”というのは、ともに儲けたい人間を指すものだ。投資家の取り分はクラブには回らず、各クラブにとっては損失となる。50億ユーロが毎年入ってくるのは基本的には反対しない。だが、各国リーグの出場権獲得の競争を行わず、閉ざされたリーグを行うことは絶対に認められない」

 2006年の時は、補償もなく過密日程を推し進めるFIFAやUEFAに対抗する“大義名分”もあったが、今回は米国の巨額投資家の参入などが全面に押し出され、共感を呼べる論点が1つもない。ドイツ勢が早々と距離を取ったのも、得るものよりも失うもののほうが大きいと判断したからだ。

南欧勢とイングランド勢の温度差

 また、今回の「スーパーリーグ構想」では、2024年から始まる欧州CLの新しいフォーマットに異を唱えるという点以外で、まとまる要素がまったく見られなかった。イングランドがUEFAに反対していたのは、欧州CLの新しいフォーマット自体がスケジュール的に不可能だからだ。現時点ですでに他国より厳しい日程が組まれている上に、さらに国際試合が増加するとなると、もはや人間的なスケジュールとは言えなくなる。

 今回のCLの新案では「1次リーグに10試合」と発表されたが、試合数はまだ流動的だ。他国よりも比較的試合数が少ないドイツ勢は8試合を提案しているが、南欧勢は12試合を提案しているという。

 カロは「1次リーグの試合数に関して、恐らくCLは10試合で落ち着くだろう。UEFAヨーロッパリーグは8試合、新設されるカンファレンスリーグは6試合で議論されている。だが、まだ何も決まっていはいない」

 カロが何より懸念しているのは、フォーマットよりも資金の問題が決まっていないことだ。

 「分配金に関しては、まだ議論の中心となっていない。個人的には、フォーマットより先に分配金の問題を解決すべきだと考えている。さもなければ争いの芽になるだろう。現時点では、2021年から2024年までの3シーズンの分配金すら決まっていない状態だ」

 スペインやイタリアのように国内経済でも苦しむ南欧勢が、このタイミングで強硬に打って出たのも、今後3年間のサイクルで少しでも優位な条件を引き出すため、ということが推測できる。

同じような騒ぎは繰り返される?

 スーパーリーグ構想は頓挫したものの、CLの賞金として分配される資金はこれまでよりも大きくなる見込みだ。ELやカンファレンスリーグに分配される賞金の割合は少なくなる見込みで、国内ビッククラブとそれ以外のクラブとの資金力の差はますます大きくなると懸念される。リーグ戦で出場権を逃したビッククラブのためのワイルドカード2枠の導入など、公平性の差に疑問符も付けられている。

 それでも、ドイツ勢を代表するカロは、UEFAと各クラブ間の主張の妥協点として、新フォーマットである程度満足できる落とし所を見つけたと見ている。国内リーグの成績による出場権の獲得というチャンスの平等を確保できたこと、出場チーム数と試合数の増加、プレーオフの導入などがその理由だ。

 大会の新しいフォーマットも発表されたが、導入まではまだ3年も時間が残されている。カロも慎重な姿勢を崩さない。

 「2024年まではまだ時間がある。理論的には、それまでに変更を加えることもできる」

 これまでは「スーパーリーグ構想」をチラつかせ、UEFAやFIFAとの交渉の切り札として使ってきたものの、今回の件でこのカードは使えなくなってしまった。勝負を急いて悪手を打ったビッククラブは、忘れた頃に次の手を打ってくるだろう。

 とはいえ、懐疑的な目を持ってしまったクラブのファンや世界中のサッカー好きがそれに賛同するのかどうかは、また別の話だ。

Photos: Getty Images


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