若手選手を起用し収入を確保…若手起用を促すブンデスリーガの仕組み

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若手選手を起用し収入を確保…若手起用を促すブンデスリーガの仕組み

ブンデスリーガには若手選手の出場時間に応じて育成費を分配する制度がある。規模の小さいクラブはこのシステムによって人件費を賄うことができ、U-21ドイツ代表の主力は成人カテゴリーで100試合前後の出場歴を獲得している。若手の起用を促すシステムとして一考の価値がある。

 「特定の年代の若手選手にとっては、出場時間が本当の“通貨”なんだ。ユーロ(金額)じゃない。出場時間だ」と話すのは、U-21ドイツ代表監督のシュテファン・クンツだ。若手としてブンデスリーガのトップクラブに所属し、高給を手にしても、出場できなければ意味がない。

 2016年からU-21代表監督を務めているクンツは、明確な考えを持っている。3月24日の『シュポルトビルト』のインタビューでは、「18歳でトップクラブに行っても、ベンチに座っているだけなのは明らかだ。この判断は間違っている。起用されるように希望を持っているだけでは足りないんだ。出場できるかどうか、現実的な判断ができなければならない。若手選手には、出場時間が最も重要なのだから」と話している。

若手の出場時間に応じて資金を分配

 ドイツ・ブンデスリーガには、若手選手の出場時間に応じて育成費を分配する制度がある。毎年テレビ放映権を分配する際に、リーグ機構は「育成」のカテゴリーにおよそ2%にあたる2500万ユーロ(約32億円)の予算を取っている。リーグが規定する「若手選手」のカテゴリーに該当する各選手の出場時間の総和に応じて、この2500万ユーロを各クラブに分配するという仕組みだ。

 ここで規定されている「若手選手」は次の通りである。

1. 23歳未満である。ロスタイムや入れ替え戦の時間は含まれない。
2. 外国人の育成年代の選手は、最低でも3年間ドイツ国内のクラブでプレーしなければならない。
  その3年間は移籍などをせず、1つのクラブに留まること。
3. 18歳の誕生日の前までに、ドイツサッカー連盟所属のクラブに登録を済ませていること。

ランキングトップは選手給与の4分の1を賄う

 このランキングのトップに立つのは2部のグロイター・フュルト。かつて井手口陽介が所属したクラブだ。およそ191万ユーロ(約2億5000万円)が分配され、800万ユーロ(約10億4000万円)の選手人件費のおよそ4分の1を賄っている。

 来季からは放映権料の3%、2023-24シーズンからは4%とこれまでの倍の分配額に引き上げられることから、この戦略が成功し続ければ、3年後には5億円近くを手にすることになる。

 チームの平均年齢は、2部で最も若い24.4歳。ドイツ国内育ちの23歳未満の選手数は、24人中10人という割合だ。今季は昇格争いにも絡んでおり、若手主体ながら堂々たるプレーを見せている。

 マネージャーのラシード・アソウジはクラブの戦略について説明する。「我われは、もちろん意識的に若手選手たちと仕事を進めている。それも、かなり持続的にね。その最良の証拠として、2部で平均年齢が最も若いチームながら、上位で昇格争いを繰り広げている」

 2位も、同じく2部のニュルンベルクで約173万ユーロ(約2億2500万円)。清武弘嗣や金崎夢生、長谷部誠、久保裕也らが所属し、1部を戦った古豪だが、今季はRBライプツィヒで長らくアシスタントコーチを務めたロベルト・クラウスを青年監督として招聘。監督からマネージャーに転身したディーター・ヘッキングの下、大きく方針を変更している。3位は2部パーダーボルン、4位に1部のケルンが続き、それぞれおよそ2億円近い資金を確保している。

 5位に入ったビュルツブルクは、3部から上がったばかりのクラブだ。監督やその他のスタッフ陣も含めて、人件費の総額がおよそ482万ユーロ(約6億2660万円)。リーグ機構から120万ユーロ(1億5600万円)を分配されており、クラブの人件費総額の4分の1を補うことができている。

 小規模クラブとはいえ、先のフュルトのように2部に定着したクラブは、この2倍から3倍の人件費を予算として割くことができている。ここから見ると、リーグ機構が管轄する1部および2部に所属することが、経営的にどれほど大きな影響を受けるかが分かる。

100試合超えがそろうU-21代表

 冒頭のクンツ監督の話に戻ろう。3月のU-21欧州選手権グループリーグで主力として出場している選手たちは、主に4部のセカンドチームでの出場も含めれば、成人カテゴリーで100試合を超える選手たちが占めている。

 例えば、フュルトから選出された22歳の左SB、ダビッド・ラウムを見てみよう。フュルトの生え抜きで、U-19の2年目からはセカンドチームとトップチームにも数試合ずつ帯同し、成人カテゴリーでプレーする準備を進めた。

 トップチームに昇格すると、1年目からトップチームで20試合、セカンドチームで5試合に出場。2年目、3年目もほぼ同じペースで出場すると、4年目の今季は不動のレギュラーに定着した。フュルトの計画的な起用も実を結び、プロ4年目にしてトップチームで公式戦に92試合、セカンドチームで20試合の合計112試合に出場している。来季はホッフェンハイムに加入することがすでに決まっている。

 もう一方の例としては、ベルギーのヘントに所属する二クラス・ドルシュだ。U-17でニュルンベルクからバイエルンの下部組織に移籍。U-19の1年目からセカンドチームのメンバーに入ると、U-19の2年目には、18歳ながら4部のセカンドチームの主力として定着した。

 プロ1年目もセカンドチームの主力としてプレーし、トップチームでも1試合に出場した。プロ2年目で2部のハイデンハイムに移籍すると、すぐさま主力として活躍。プロ3年目にはクラブの入れ替え戦出場に貢献した。

 大迫勇也のブレーメンに敗れたものの、評価を確立したドルシュは、プロ4年目の今季からヘントでプレー。ベルギーでも主力となり、UEFAチャンピオンズリーグ予選とUEFAヨーロッパリーグでプレーし、着々とキャリアを積み上げている。

 成人カテゴリーではすでに169試合に出場しており、3月のU-21欧州選手権でも経験豊富な守備的MFとして安定したゲームメイクや試合を読む危機察知能力で存在感を放った。

 他にも、ザルツブルクのメルギム・ベリシャ、ボルフスブルクのリードレ・バク、マンチェスター・シティに所属しながら毎年レンタル移籍で出場時間を確保しているルーカス・ヌメチャなど、18歳から22歳にかけて成人カテゴリーでコンスタントにプレーした選手たちが顔を並べる。

 クンツ監督の言うように、この18歳から22歳にかけて最も大事なものは、適切なレベルでの出場時間だ。セカンドチームや下部リーグを含めて、そのための環境を選び取る「現実的な判断」ができるかどうかが、プロサッカー選手としてのキャリアを左右することが見て取れる。

 その一方で、ブンデスリーガのクラブにも、若手選手を起用するインセンティブを提供する仕組みを構築している。突出した才能が生まれなくとも、最低限のクオリティを確保するためのシステムとして一考の価値があるだろう。

Photos: Getty Images


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