【レビュー】長い時を経ても失われない敬意と、長い時を遡る想像力―『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』

【レビュー】長い時を経ても失われない敬意と、長い時を遡る想像力―『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』

30年もの長い時を経て熟成された感動的な実話が映画化された。

ベトナム戦争で自らの命を投げ打って多くの負傷兵を救った空軍落下傘救助隊のピッツェンバーガー。

彼に命を救われた兵士による名誉勲章授与の申請は何故かその後30年にわたり却下され続ける。

経緯の調査を担当する空軍省の主人公は、元兵士たちへの聴取を行う過程で様々な事実や想いに触れることになる。

物語は何故30年もの長きにわたり勲章が授与されなかったかの謎に迫っていく。

それ以上に、何故30年もの長きにわたり勲章授与申請が繰り返し行われ続けたのか、その理由に主人公と観客の想像力が追いついた時、大きな感動が不意に押し寄せてくる。

故ピーター・フォンダ、クリストファー・プラマー、ウィリアム・ハート、エド・ハリス。

重い過去を今なお引きずる元兵士たちを演じた名優たちの演技が素晴らしい。

【レビュー】長い時を経ても失われない敬意と、長い時を遡る想像力―『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』

一方で戦争を経験していない若い主人公の成長譚でもある。勲章という最高の栄誉を意味する印。

スタンディングオベーションという最大の賛辞の表現方式。

この映画はこれらの形式に対応する、まさに中身を描くことに成功している。

そこに込められた、人が人に対して心から抱く敬意や失われることのない熱い想いに丁寧に踏み込んでいく。

【レビュー】長い時を経ても失われない敬意と、長い時を遡る想像力―『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』

全ての悲劇や後悔について他人が何かできることがあるすれば、想像力こそが最も大事なのかもしれない。

共感力の源こそ想像力だ。

映画では直接的に語らることはないが、戦争を知らない世代が真に反戦を実現し得るかはまさにこの想像力にかかっているという思いを新たに強くした。

 

『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』

1966年4月、ベトナム戦争で多くの兵士たちの命を救うために命を捧げた空軍兵がいた。彼の名は、ウィリアム・H・ピッツェンバーガー。英雄として讃えられるはずの彼の名誉勲章授与は30年以上も却下され続けた。なぜ、名誉勲章は30年も却下され続けたのか。今、一人の青年が衝撃の真実を暴く。

■監督・脚本:トッド・ロビンソン
■出演:セバスチャン・スタン、クリストファー・プラマー、ウィリアム・ハート、エド・ハリス 他

© 2019 LFM DISTRIBUTION, LLC

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