「相槌を打つ」が広まったのは、ある名刀にまつわる伝説から?!

「相槌を打つ」が広まったのは、ある名刀にまつわる伝説から?!

相手の会話に合わせて「うん」や「そう」といった言葉を挟むことを指す「相槌を打つ」。
この「相槌を打つ」という言葉の誕生の裏には、ある名刀にまつわる伝説が関係しているそうです。

そこでここでは、「相槌を打つ」について解説します。
また、よく混合されがちな「合の手を入れる」という言葉についても触れていきますよ。
 

「相槌を打つ」とは

まずは「相槌を打つ」がどういう意味なのかを解説します。

「相槌を打つ」の意味

「相槌を打つ」とは、相手の話に調子を合わせて受け答えすることを言います。
特に調子よく受け答えすることをあらわします。
また、話を聞き流しながら適当に「はいはい」「そうですね」と反応だけしている様子にも用いられます。

相手の話に合わせるということが前提となっているため、会話のキャッチボールをしっかり行い受け答えしている場面ではあまり使われません。

「相槌を打つ」の由来

この「相槌」という言葉は、刀鍛冶などの鍛冶職が鉄を打つ様子から来ています。
鍛冶職は鉄を打つのを一人では行っていませんでした。
打つ槌に合わせて弟子などが槌を打つことで鉄を鍛え、刀などを打っていたのです。

これを「向かい合い槌」と呼びます。
そこから相手の調子に合わせる様子などを「相槌を打つ」という言葉で表現するようになったのだとか。

「相槌を打つ」が広まることになったとされる名刀にまつわる伝説

刀匠などの鍛冶職と弟子が行う「相槌」の様子は元々それほど知られていない姿だったともいわれます。
しかし、「相槌を打つ」は現代でも通用する言葉です。
この言葉が広まった背景には、ある名刀にまつわる伝説が関わっているとされます。

名刀「小狐丸」の伝説

「相槌を打つ」が現代まで残っているのには、「小狐丸」という名刀の伝説が関係しているともいわれています。

小狐丸は、平安時代に作られたとされている日本刀のことです。

同名の刀は歴史上に何振か出てくるのですが、小狐丸というとその中でも「三条宗近」という刀工が作ったものを指すことが多いとされます。
この宗近が鍛えた小狐丸には、ある伝説が語り継がれています。

平安時代中期の頃、橘道成は一条天皇に守り刀を作るよう命ぜられました。
そこで彼は名工として知られる三条宗近に刀を打ってくれるように依頼しました。

大役を任じられた三条宗近は作刀に取り掛かりました。
しかし、何度刀を打っても、満足のいくものにならず途方に暮れていました。

こうなったら神頼みするほかないと、三条宗近が氏神の稲荷明神に、良い刀が作れるよう祈願しようとしていた道中、ある童子と出会います。
この時、三条宗近の様子を見た童子は「私が相槌を打つので安心してください」と言うと姿を消してしまいました。

不思議な出来事に戸惑いつつも、再び刀を打つ準備を始めました。
するとそこに、童子に化けていた稲荷明神が現れ、先ほどの言葉通り相槌を務め、一緒に刀を打ってくれました。
稲荷明神と共に打った刀は非常に素晴らしく、天皇の守り刀として献上するにふさわしい出来栄えでした。
そして、その刀には稲荷明神と、化けていた童子の姿を掛け合わせて「小狐丸」と名付けたのだとか。

能の演目になったことで普及した?

この小狐丸の伝説は能の演目になったことで普及したとされています。
能には「小鍛冶」という演目があり、小狐丸の伝説について語られています。

これが小狐丸伝説を広める要因となり、そして「相槌」という言葉が一般にも広まったことで「相槌を打つ」という言葉が生まれたともいわれています。

「相槌を入れる」は間違い!

「相槌を打つ」ではなく、「相槌を入れる」と言ってしまったりすることがあると思います。
ところが、この言葉は間違いなので注意が必要です。

「合の手を入れる」と混合?

「相槌を打つ」と同じ意味で「相槌を入れる」と表現してしまう事見聞きしたり使うこともあると思いますが、正確にはこの言葉はありません。
おそらく「合の手を入れる」と混合してしまっています。

「合の手を入れる」の用いられ方

「合の手を入れる」は、歌や踊りの間に掛け声を入れたり、歌や踊りにあわせて手拍子を入れることを指します。
また、日常会話においては、相手の話を促したり、うまく話題を振ったりする際に言葉を挟むことを表現して使われます。

歌や踊りだけではなく、会話のリズムを良くするために言葉を挟むのも「合の手を入れる」と表現するという事ですね。
この用い方が「相槌を打つ」との混合に繋がったのかもしれません。

まとめ

「相槌を打つ」は、相手の調子に合わせて「うん」といった返事をすることを言います。
もともとは鉄を打つ際に、師匠の調子を見て弟子も打っていたことから、この言葉が生まれたとされています。

似たような言葉として「合の手を入れる」がありますが、これが混合され「相槌を入れる」という表現されることもあります。
しかし、「相槌を打つ」と「合の手を入れる」は別々な語で、「相槌を入れる」という言葉はありませんので注意が必要です。

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