最新作『私をくいとめて』の大九明子監督インタビュー!「のんさんは職人気質の女優です」

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最新作『私をくいとめて』の大九明子監督インタビュー!「のんさんは職人気質の女優です」

綿矢りさの原作小説を映画化した話題作『私をくいとめて』。30代のおひとりさま女子の崖っぷちロマンスをコミカルかつ赤裸々に描いた本作の大九明子監督に、キャスティングのこと、コロナ禍での撮影のことなど映画の裏側についてインタビューしてきました。

作品概要

最新作『私をくいとめて』の大九明子監督インタビュー!「のんさんは職人気質の女優です」

『私をくいとめて』

©2020「私をくいとめて」製作委員会

大九明子監督が、松岡茉優主演作『勝手にふるえてろ』(2017)以来、再び綿矢りさの原作小説を映画化したのが『私をくいとめて』。のんを主役に迎えて、30代のおひとりさま女子が久々の恋愛に七転八倒する姿を描いています。
ヒロインのみつ子を演じるのんは大九監督とは初タッグ。『星屑の街』に続き、2020年2本目の映画出演作になります。みつ子が久しぶりに恋に落ちる相手・多田くんを演じているのは林遣都。みつ子と仲のいい先輩・ノゾミさんに臼田あさ美。そしてみつ子の親友・皐月を演じるのは橋本愛。のんとはNHK連続テレビ小説以来の共演です。大九監督が、のんの女優として魅力を最大限に引き出した!と言っても過言ではない作品です。

あらすじ

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『私をくいとめて』

(C)2020「私をくいとめて」製作委員会

31歳のOLみつ子(のん)は、おひとりさま生活を満喫中。彼女の脳内には、困ったときに現れてドンピシャな助言をくれる頼れるAがいるので寂しくありません。しかし、ある日、みつ子は恋に落ちました。相手は会社にときどきやってくる年下の営業マン・多田くん(林遣都)。家が近所だったので、みつ子はときどき多田くんに手料理のおすそ分けをしています。でもそれ以上の進展はない。真面目な多田くんは部屋にあがろうともせず、みつ子としては「これ以上、どうしたらいいの?」とAに相談するのですが……。

『私をくいとめて』大九明子監督インタビュー

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『私をくいとめて』

Photo/kaori saito(c)eiga board

―『私をくいとめて』とても楽しかったです。大九監督にとっては綿矢りささんの原作小説の映画化は2回目ですが、映画化することに対して、綿矢さんからお願いされたことやリクエストなどはありましたか?
大九明子監督(以下、大九)
まったくなかったです。『勝手にふるえてろ』のときも「お願いごと」は、なかったです。綿矢さんと初めて会ったのは『勝手にふるえてろ』の撮影現場で、それ以来、ちょこちょこメールで連絡を取り合うようになりましたが、本作でも会えたのは一緒に取材を受けるときくらいです。でも脚本や試写を観た感想はメールで送ってくださいます。なかなかの長文なんですよ。この間は、「映画のロケ地へ行って来ました」というメールが河童の置物とのツーショット写真と共に来ていました(笑)。いつもたくさんの素敵な言葉で励ましてくれる方で、本当に感謝しています。
―原作者と監督でいい関係性を築いていらっしゃるんですね。大九監督は、綿矢さんの小説に限らず、原作がある場合の脚色について、気を付けていることはありますか?
大九
原作の再現フィルムにならないように気を付けています。私が原作を読んだときにおもしろいと思ったこと、感銘を受けたこと、自分が原作から受けた感動を大切に、その気持ちに対して忠実に脚色しています。原作をそのまま脚色するのではなく、いったん自分に落とし込んで、自分から発信される言葉として書くようにしています。

のんは、職人気質の女優

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『私をくいとめて』

©2020「私をくいとめて」製作委員会

―のんさんのキャスティングはプロデューサーのアイデアとのことですが、実際にお仕事をした感想、女優のんの魅力について教えてください。
大九
いっぱいありますね。まず作品本位で演技を作り上げてくれること。とても職人気質の人だと思いました。のんさんは「この役はこうではないか」と役について考え、自分の中で役の人物像を構築して撮影に臨んでいる印象がありました。決して感覚で演じるのではなく、さまざまな情報や自身の考えを積み重ねて演じるタイプではないでしょうか。
そうそう、のんさんが「脚本を読み解くための攻略本として原作を読みました!」とおっしゃっていたことがあって。そんなに研究してくださったんだとうれしかったです。
―そうなんですね。完成した映画の彼女を観て、監督はどういう感想を持たれましたか?
大九
編集作業で彼女の演技を見ているときも素敵な女優だなと思いました。現場でセリフを噛んでいて「もう1回行きましょう」ということがあったのですが、編集しているとき、NGも味があってよくて、そちらを使ったということもありました。彼女は常に表現している人で、あまりオンオフのスイッチを切り替えるタイプじゃないかもしれません。

橋本愛、林遣都、臼田あさ美、キャスティングの裏側

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『私をくいとめて』

©2020「私をくいとめて」製作委員会

―みつ子の親友役が橋本愛さん。朝ドラ以来の2ショットは衝撃的でした。ただ、のんさんと橋本愛さんが共演すると、どうしてもあのドラマが蘇ってしまうという人が多いかもしれません。そのあたりも含めて、二人のキャスティングについて教えてください。
大九
実は、私、二人が共演していた朝ドラをちゃんと観ていないんです。もちろん国民的ムーブメントを起こし、東日本大震災で傷ついた日本を癒したドラマであることは知っていますが、皐月役に橋本愛さんをキャスティングしたのは、私自身が彼女と仕事したかったからです。
プロデューサーから「皐月役は橋本愛さんはどうだろう」と言われたとき、この機会にぜひご一緒したい!と思ったんです。で、あとから「そういえば、のんさんとドラマで共演していたな」と思ったくらいで……。今回初めてお仕事しましたが、若いけどさまざまな作品に出演していますし、体中で脚本や自分の役をきちんと理解して、皐月としてその場にいてくれたので、やはりいい俳優だなと思いました。

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『私をくいとめて』

©2020「私をくいとめて」製作委員会

―お二人のシーン、本当に良かったです。再共演をこんな素敵な映画で観られるなんて……とても幸せな時間でした! あとみつ子と仲のいい先輩ノゾミさんを演じた臼田あさ美さんですが、大九監督の『美人が婚活してみたら』にも重要な役で出演していますよね。
大九
私は臼田あさ美さんの大ファンなんです(笑)。だから臼田さんに出演してほしくて、メインキャストが決まる前から「この映画で臼田さんに出ていただける役はないか」と考えていたくらいです。年齢的にもノゾミ先輩がベストだと思ってお願いしました。ノゾミ先輩はイケメン好きで、原作では「イケメン祭り」に行ったりしているんですよ(笑)。私の理解を超えているけど、彼女がイケメンだと思う男に一生懸命に尽くすことは認めたいと思いながら演出していました。

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『私をくいとめて』

©2020「私をくいとめて」製作委員会

―また林遣都さんも素晴らしかったです。最近、さまざまな映画やドラマに出演していますが、大九監督も林遣都さんとお仕事したくてキャスティングしたそうですね。
大九
林さんのいろいろな作品を観て、観客として林遣都さんは面白い!と思ったんです。だからいつか絶対にお仕事したいと思っていた俳優で、やっと実現しました。彼はとにかくどんな色にでも染まれる俳優で、とても柔軟です。また組みたい俳優さんですが、たぶん日本中の監督が彼と仕事したいと思うので、難しいかも。でもチャンスがあれば、またお仕事したいですね。

ヒロインの脳内にいる相談役・Aの声の秘密

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『私をくいとめて』大九明子監督

photo/kaori saito(c)eiga board

―そして名前を明らかにしていませんがAの声。どうやって決めたのですか?
大九
Aの声については悩みました。声優さんにお願いしようかなとも考えていたのですが、みつ子にとっては存在する人物なので、それも違う。そしたらプロデューサーがある俳優の名前を出してくれて、そのとき「Aがいた!」と。ドラマや映画で仕事をしたことがある方でしたし、ポテンシャルの高さは知っていたので、決定しました(笑)。引き受けてくれてありがたかったです。
―Aも含めて、大九監督の作品は、いつも主演だけでなく助演の方も輝いていて、そこがまた魅力なのですが、そういうことも考えて演出されているのですか?
大九
もちろんすべてのキャストを輝かせることを考えています。登場人物全員が、血と肉を持って生きているという存在感を持たせないといけないと思っています。

コロナ禍で撮影中断、脚本を変更!

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『私をくいとめて』

©2020「私をくいとめて」製作委員会

―『私をくいとめて』の撮影は途中、新型コロナ感染症拡大のため中断し、イタリアロケも中止になり、リモート撮影を行ったそうですね。でも映画ではリモート撮影には見えず、全然気づきませんでした。
大九
そうなんです。中断することになったとき、イタリアのシーンがまったく撮影できていなかったんです。撮影が再開するとき、やはり以前のようにはいかないので、いろいろ戦略を練り、俳優とスタッフは日本で撮影をし、現地スタッフにリモートでイタリアの映像をお願いし……という形になりました。
また「コロナを無視した映画にはできないな」と感じたので、イタリアパートは脚本も変え、コロナの足音が聞こえ始めているという設定に変更しました。妊婦の皐月は特にこういうことに敏感であろうと思い、コロナで世界が不安に陥っている空気を表現する役割を担ってもらいました。だから、彼女は出歩くことが怖くなっているのです。
この映画は、みつ子を通して、おひとりさまの半径の広げていく物語なので、皐月にそういう感情を抱かせたことは、今の二人の関係性を描くのにもよかったと思います。

みつ子の先輩・澤田の旅話は大九監督の体験談

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『私をくいとめて』

©2020「私をくいとめて」製作委員会

―この映画は、30代のおひとりさまが久々の恋に葛藤する姿を描いていますが、大九監督が、みつ子くらいの年齢だった頃はどうだったのでしょうか?
大九
私は29歳から30歳になるときは、すごく怖かったんです。このまま何も成し遂げることなく朽ち果ててしまうのではないかと思っていました。当時はアルバイトをしていて、貯金もあったのですが、その貯まっていくお金がなんだか嫌で仕方がなくて。それを使い切ってしまおうと、ちょうど誕生日をまたいでヨーロッパ方面へ旅に行ったんです。
この映画で片桐はいりさんが演じている、みつ子の上司・澤田がみつ子に話した旅の話、「ヒースロー空港から南下して、お金がつきて帰国した」というエピソードは、私の旅の経験談です。
澤田は原作にはない映画だけのキャラクターで、みつ子を温かい眼差しで見つめている人生の先輩です。いろんな世代の女性が、いろんな人生を歩んでいることを描きたかったんです。
―大九監督の映画は、不安や孤独や不幸なことも、どこかユーモアを持って描いている印象があります。そんな大九監督が、好きな映画、好きな監督を教えてください。
大九
もちろん好きな監督はたくさんいますが、今の気分だと、マレーシアのヤスミン・アフマド監督ですね。今年の東京国際映画祭で『ムクシン』が、4Kデジタル修復版で上映されたので観たのですが、やはり良かったです。
素晴らしい女性の先達であり、彼女の作品がいまの世界に必要だと思いました。アフマド監督の映画はユーモアがあり、大変な状況の中でも、ちょっとふざけるんです。そういうところに勝手にシンパシーを感じています。一見するとどうでもいいことを丁寧に広げて描いていく感じが大好きで、私にとってはとても愛しい大事な監督です。

「この映画はまぶしすぎる!」と思っている人に観てほしい!

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『私をくいとめて』

©2020「私をくいとめて」製作委員会

―では最後にこの映画を楽しみにしているファンにメッセージを。
大九
「この映画は自分にはまぶしすぎるんじゃないか」、そう思っている人がいたら、そういうあなたにこそ観てほしい。私の映画は5年くらい同じスタッフで制作しているのですが、私とスタッフとキャストが映画の中で、皆さんに見ていただけることを願って待っています。くれぐれも感染対策を万全にして気を付けて映画館へいらしてください。

 

大九明子プロフィール

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『私をくいとめて』

(C)2020「私をくいとめて」製作委員会

横浜市出身。映画美学校の第一期生となり、映画『意外と死なない』で映画監督デビュー。2017年に監督と脚本を担当した綿矢りさ原作、松岡茉優主演作『勝手にふるえてろ』が、第30回東京国際映画祭コンペティション部門・観客賞を受賞。ほかの作品に『恋するマドリ』(2007)『東京無印女子物語』(2012)『でーれーガールズ』(2015)『美人が婚活してみたら』(2019)『甘いお酒でうがい』(2020)など。『私をくいとめて』は、第33回東京国際映画祭の観客賞を受賞。大九監督にとっては2度目の観客賞受賞となった。

『私をくいとめて』DATA

2020年12月18日より、全国ロードショー
原作:綿矢りさ「私をくいとめて」(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
監督・脚本:大九明子
劇中歌 大滝詠一「君は天然色」(THE NIAGARA ENTERPRISES.)
出演:のん、林遣都、臼田あさ美、若林拓也、前野朋哉、山田真歩、片桐はいり/橋本愛
製作幹事・配給:日活 制作プロダクション:RIKIプロジェクト 企画協力:猿と蛇 
©2020「私をくいとめて」製作委員会

『私をくいとめて』公式サイト


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